いまだに「痩せるために運動をしなさい」というアドバイスをする医師がいます。もちろん、ほんのわずかに体重が減少する可能性はありますが、恐らくそのようなアドバイスをされる患者は少し体重減少があったぐらいでは大きく足りない可能性が高いと思います。そして、そのようなアドバイスを受けて継続して運動できるの患者も少ないでしょう。

運動は痩せるためではありません。健康のためです。運動の能力は健康にとって非常に重要です。

今回の研究では、トレッドミルの運動試験を利用して、その運動能力と死亡リスクについて分析しています。

対象は6,213人の男性で、3,679人は運動試験で異常な結果があったか、心血管疾患の病歴があるか、その両方の人(平均年齢61歳)、2,534人は運動試験で正常で、心血管疾患の病歴のない人(平均年齢55歳)です。平均追跡期間は6.2年でその間に1,256人が死亡しました。平均年間死亡率は2.6%でした。運動能力(MET)は、トレッドミルの速度とグレードに基づいて推定されました。一般的には1METは、静かに座っているときに消費されるエネルギーとして定義されます。(図は原文より)

上の図はそれぞれのグループの特徴です。正常グループも心血管疾患グループも死亡した人たちは、生きている人と比較して、年齢が高く、BMIが低く、最大の心拍数および収縮期血圧が低く、運動能力が低くなっていました。なんとなく感覚とは逆に、心血管疾患グループでは死亡した人たちは、生きている人と比較して、体重が少なく、安静時の血圧も低くなっていました。

上の図は臨床および運動テスト変数による、年齢調整された死亡リスクです。年齢を調整した後、正常な人の死亡リスクの増加を最もよく予測するのは、運動能力のピークであり、その後に喫煙(1日のタバコのパック×年)が続きました。心血管疾患のある人で、全原因死亡リスクの増加の最大の予測因子は、運動能力のピークであり、その後、うっ血性心不全の病歴、心筋梗塞の病歴、喫煙、安静時心電図検査での左室肥大、肺疾患、運動誘発性のST低下が続きました。運動能力が1MET増加するごとに、生存率が12%向上しました。

上の図は運動能力別、危険因子と死亡リスクです。グラフの最も濃いバーは運動能力が8METを超える人で、真ん中が5~8MET、最も薄い色が5MET未満です。8METを超える人と比較して、5 MET未満または5〜8METの運動能力の人は、様々な危険因子を持つ人の死亡のリスクを増加させました。例えば8METを超える人と比較して、5 MET未満の糖尿病やBMI30以上の人では死亡リスクは2倍以上です。

上の図は正常な人(黒いバー)と心血管疾患の人(白いバー)の運動能力を5つに分けたときの、年齢調整された全原因死亡のリスクです。どちらのグループも最も運動能力が高い人を1とすると最も低い人は、死亡リスクが4倍以上でした。

上の図は正常な人のピーク運動能力(A)および年齢予測運動能力のパーセンテージ(B)に従って分けられた生存曲線、心血管疾患の人のピーク運動能力(C)および年齢予測運動能力のパーセンテージ(D)に従って分けられた生存曲線です。どちらのグループも運動能力が高い方が生存率が上がり、年齢予測値のパーセンテージが低い方が生存率が下がっています。運動能力は、心血管疾患の他の一般的に確立された危険因子よりも男性の死亡率のより強力な予測因子です。

運動は病気になったり、肥満になってからするものではありません。急に始めてもあまり動けません。日常の活動性、運動習慣は健康にとって必要であり、動かないことは動けないことにつながり、心血管疾患だけでなくすべての原因の死亡率増加につながるでしょう。という私も40代で糖質制限を始めるまでは、運動の習慣はありませんでした。しかし、糖質制限を始めて体重が減ったことを機にランニングをはじめ、現在ではフルマラソン、ウルトラマラソンを完走するほどになっています。

患者さんの中で運動について聞くと、ストレッチをしています、という方がいます。ストレッチそのものを否定するつもりはありませんが、ストレッチは運動ではありません。心拍数を上げるような動きが必要です。

もちろん年齢とともに加齢性の変化はどうしても起きてきます。しかし、その変化のスピードは食事や運動などにより大きく異なるでしょう。糖質制限をして、運動をして、死ぬまで健康を目指したいですね。

 

「Exercise capacity and mortality among men referred for exercise testing」

「運動テストで測定された男性の運動能力と死亡率」(原文はここ

2 thoughts on “運動は健康のため”
  1. 清水先生、いつもありがとうございます。
    9年前(62歳)、心筋梗塞、糖尿病(HbA1c 10.6)で3週間入院。入院中に江部先生のブログに出会い、退院後、直ぐにスーパー糖質制限を開始しました。

    幸運だったのはもちろん命が助かった事ですが、循環器、糖尿病の先生が精神的にも弱っている時に(心臓が1/4壊死)、糖質制限に何もおっしゃらないで、検査の結果だけで対応してくださった事だと思っています。

    入院中、病院の廊下をゆっくり50Mも歩くと心拍数が120以上になっていたのですが、半年後のカテーテル検査入院時は、8.1METに回復していましたし、その他の検査も良好で、「太田さんの回復度はダントツです」とおっしゃってました。

    糖尿病薬(インスリン、経口薬)も離脱で、直ぐにHbA1cも5.8%以下になり、現在まで一度もそれ以上に上がった事はありません。最初の糖尿病の先生は、糖質制限は難行苦行と思ってらっしゃったのか、「太田さん、たまには季節、季節の美味しい物を食べてくださいね。」とおっしゃっていました。

    先月の1年に1度受ける、エコー、トレッドミル等の諸々の検査も異常はありませんし、(BNP 11.6) (GLU 91) (HbA1c 5.4)、(HDL 93)、(TG 39)ですが、(LDL 85)でも、現在の先生は70以下の指示で、相変わらずスタチンの話しになりますので、ウンザリです。

    運動は自転車(ギア付きママチャリ)ですが、毎日15~20㎞位乗っていますので、1日100㎞超、12時間位乗っても翌日、筋肉痛もなく、生活に何の支障もありません。
    糖質制限をすると筋肉が落ちるなどの話しは、私に限っては笑止千万です。

    私にとって糖質制限は手軽で、面倒くさくなくて、しかも快適に過ごせていますので、ただただ継続して行くだけです。

    1. 太田さん、コメントありがとうございます。

      貴重な体験談、情報ありがとうございます。
      糖質制限のパワーが顕著に示されたのではないかと思います。

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