糖尿病における断食と糖質制限食での血糖値やインスリンの変化

2型糖尿病の人では、エネルギー(カロリー)制限食や短期間の断食でも、当然糖質制限でも、そして食事法とは別に体重減少でも血糖値が急速に低下することが示されています。

この主な原因は摂取エネルギーが減少したからなのか、糖質摂取量の減少なのか、体重の減少によるものなのか?

今回の研究は、未治療の2型糖尿病の7人が3日間、断食するか、エネルギーが十分で炭水化物をほとんど含まない食事をするか、普通の食事をするかで比較しました。通常の食事は55%炭水化物、15%タンパク質、30%脂質の構成です。炭水化物なしの食事は、3%未満の炭水化物、15%タンパク質、82%脂質で、エネルギーの量は25〜30 kcal/kg体重でした。 水の摂取が推奨され、ブラックコーヒー、砂糖やクリームを含まないお茶、カロリーのない飲み物は、炭水化物なしの食事または断食中に許可されました。(図は原文より)

上の図は参加者の特徴です。1人を除いてすでに薬が処方されていますが、24日以上前に薬は中止されました。年齢は40代から70代、糖尿病歴はまちまち、BMIは全員が25以上です。ほとんどの人がスタチンも併用しています。空腹時血糖値の平均は184でした。

上の図は◯が通常の食事、▲が炭水化物なし、●が断食です。通常食前の平均血糖値は196±18mg/dlでした。当然ですが、通常の食事は見事に血糖値スパイクを示し、朝食後1.5時間、昼食後1時間、夕食後2時間で最大に達しました。 朝食開始後約10時間(夕食直前)で158±19mg/dlが最低値でした。 24時間後は188±15 mg/dlでした。恐ろしい食事ですね。

炭水化物なしの食事はどうでしょう。朝の空腹時血糖値は160±15 mg/dlでした。 通常の食事と比較して30以上も低下しました。食後の血糖値上昇は非常に少ないですね。最低値は、はやり朝食開始の10時間後(夕食直前)で118±9 mg/dlでした。72時間の終わりの最終的な平血糖値は149±15mg/dlでした。

断食の朝の空腹時血糖値は127±10mg/dlでした。通常の食事と比較して60以上、炭水化物なしの食事よりも30以上も低下しました。血糖値変動は当然ながらほとんど平坦であり、 72時間の断食の終わりの平均血糖値は114±11mg/dlでした。

24時間の血糖値の曲線下面積は通常食5248±601 mg h / dl、炭水化物なし3408±291、断食2661±221 mg h/dlであり、通常食と比較して断食で49%の減少、炭水化物なしで35%減少しました。 断食で観察された面積の減少のうち、71%は食事からの炭水化物の除去に起因する可能性があると考えられます。

上の図はインスリンの推移です。通常食の空腹時の平均は18±1.5μU/mlでした。当然、食事摂取後に大きな分泌のスパイクができています。昼食直前や夕食直前でもベースラインには戻りきらず、ベースラインに戻ったのは夜中の4時くらいでした。通常食の血糖値の推移を見ると、いわゆる「セカンドミール現象」と言われる、2回目の食事での血糖値上昇が少し低下するのが見て取れますが、インスリンの推移を見ると、逆に追加分泌のスパイクはセカンドミール(昼食)の方が大きくなっています。

炭水化物なしの食事では朝の空腹時インスリンは通常食と変わらず、食事による変動も非常に小さくなりました。変動は恐らくタンパク質摂取によるものでしょう。72時間の最終の値は21±4μU/mlでした。正味のインスリン分泌増加は通常食のわずか28%でした。

断食の最後の朝のインスリン値は14±3μU/ mlであり、その後の24時間の間はほとんど変化しませんでした。 72時間の断食の終わりのインスリン値は14±2μU/mlでした。

平均合計24時間インスリン曲線下面積は、通常食1005±133、炭水化物なし533±81、断食309±51μUh/mlでした。炭水化物なしでインスリン分泌は半減しているのです。

 

上の図はグルカゴンの推移です。朝の空腹時グルカゴン値と24時間の推移は食事によってあまり違いは認められませんでした。グルカゴンの影響は非常に小さいようです。

絶食すれば、血糖値は変動しませんし、空腹時血糖値も低下しまが、ずっと食べずにいることはできません。しかし、24時間の血糖の面積からわかるのは、1日の血糖値の低下の70%は糖質(炭水化物)制限によるものだということです。

たった3日間で代謝の適応が得られるとは思えません。しかし、たった3日で空腹時血糖は大きく変化しています。糖質過剰摂取で空腹時血糖値が低下しないということは、夜中の血糖値も高いことを意味し、1日中高血糖状態です。そして、インスリン分泌にもそれは影響し、食後しばらくしてもインスリン分泌はベースラインに戻りません。つまり1日のほとんどが高インスリン血症なのです。

ただ、空腹時血糖が上昇してきたら、インスリン抵抗性が大きく増加しているか、すい臓の状態はすでにかなり悪くなっていて、それを食事を変えずにただの薬での治療をして放置すれば、寛解が難しくなる可能性が高くなるでしょう。

糖尿病は糖質過剰症候群です。まず基本は糖質制限です。

 

「Comparison of a carbohydrate-free diet vs. fasting on plasma glucose, insulin and glucagon in type 2 diabetes」

「2型糖尿病における炭水化物を含まない食事と血糖、インスリン、グルカゴンの絶食の比較」(原文はここ

One thought on “糖尿病における断食と糖質制限食での血糖値やインスリンの変化

  1. いまだに管理栄養士の方々などの「糖質制限や断食のような、極端な食事制限は推奨できない」コメント見かけますが、
    健康効果実感している者としては、「1日3食バランス良く(糖質過剰摂取)」のほうがあきらかに「極端な食事」
    に思えます。

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