ケトン食対地中海食

米国糖尿病協会 (ADA) はすでに糖質制限を認めています。栄養のガイドラインでは唯一の食事法を推奨しているわけではなく、地中海食、低炭水化物および超低炭水化物食を含むいくつかを推奨しました。では、ケトン食と地中海食を比較したらどうでしょうか?

今回の研究では、前糖尿病または2型糖尿病の33人(61% が前糖尿病、39% が 2 型糖尿病、年齢中央値は 60.5 歳(41 歳~77 歳)、 BMI は 22.7 ~39.7)を対象として、12週間ずつ2種類の食事法を摂ってもらいました。一つは地中海プラス食で、地中海食+追加の砂糖と精製された炭水化物を避けた食事をします。野菜(でんぷん質の野菜を含む)を含む主に植物ベースの食事で、豆類、果物、精製されていない穀物、ナッツ、主な動物性タンパク質は魚、主な脂質ははオリーブオイルです。

もう一つはケトン食で、炭水化物を 20~50 g/日に制限し、タンパク質を 1.5 g/kg 理想体重/日に保ち、残りの エネルギーを脂質から摂取することによって、栄養的なケトーシスを維持するように助言されました。豆類やほとんどの果物、全ての穀物、もちろん全ての砂糖を除外し、非でんぷん質の野菜を 1 日 3 食分以上摂取します。

2つの食事法の大きな違いは、豆類と果物と精製されていない穀物を摂るかどうかです。(図は原文より)

上の図はケトン食(WFKD)と地中海食(Med-Plus)によって様々なパラメータがどれくらい変化したかを示しています。HbA1c レベルは両方の食事で減少しましたが、食事の間に有意差はありませんでした 。平均変化率はケトン食 -9%、地中海食-7%でした。食事間での差は、ケトン食でLDLコレステロールが大きく増加し、中性脂肪値が大きく低下しました。ケトン食を最初にするか後にするかで違いがあるようでした(体重とHDLコレステロール)。ベースラインから有意に変化したのは、ケトン食ではHbA1c、空腹時血糖値、インスリン値、HDLコレステロール中性脂肪、ALT、体重で、地中海食はHbA1c、空腹時血糖、体重でした。

上の図は体重変化ですが、どちらの食事を先にしたかで分けています。赤い線がケトン食最初で次に地中海食、緑の線が地中海食が最初で次にケトン食です。最終的には体重変化に差がありませんが、ケトン食の方が大きく体重が低下しているのがわかります。

フリースタイルリブレのようなグルコース値を持続的に測定していましたが、平均グルコース値の減少は、地中海食と比較してケトン食で有意に低くなりました。また、どちらの食事もグルコース値が基準値に入っている時間は増加し、ケトン食の方がよりその割合が高くなりました。血糖変動も同様にケトン食の方が少なくなりました。

ただ食事の内容は自己申告の食事アンケートなのでウソを言っている可能性もあります。それを承知の上で、ケトン食群の糖質摂取量はフードデリバリーで平均22.1g、自炊で37.8gでした。地中海食はフードデリバリーで平均108.4g、自炊で103.7gでした。つまり、地中海食もいわゆるロカボ程度の糖質量だったと考えられます。

通常の糖質過剰摂取食と比較すれば、100g程度の糖質量は非常に少ないので、当然様々なパラメータは改善するでしょう。しかし、中途半端な糖質制限では中途半端な結果しか出ないことが多いので、もっと長期に続ければケトン食と地中海食の差はどんどん開いていくのではないかと推測します。

糖尿病は糖質過剰症候群ですから、糖質を制限した方が良いのは当然でしょう。しかし、欧米はなぜか地中海食推しですね。糖質制限をした方が効果は高いのに、様々な理由を付けて地中海食を推奨してきます。まあ、どちらを選ぶか、または他の食事を選ぶかはそれぞれ自分で決めれば良いでしょう。

もちろん私は糖質制限です。

「Effect of a Ketogenic Diet versus Mediterranean Diet on HbA1c in Individuals with Prediabetes and Type 2 Diabetes Mellitus: the Interventional Keto-Med Randomized Crossover Trial」

「前糖尿病および2型糖尿病患者における糖化ヘモグロビンに対するケトン食と地中海食の効果:介入的Keto-Medランダム化クロスオーバー試験 」(原文はここ

4 thoughts on “ケトン食対地中海食

  1. 先生こんばんは。
    毎回興味深い記事をありがとうございます。
    食事法にも様々なものがありますね。私は糖質制限一択ですが、同じ家族でも考え方は様々で、子供(といっても成人した子ですが)がグルテンフリーに興味を持ったのか、麺類は一切食べない、白米は毎回大盛り。
    その他は、何で見たのかSNSか何かで良いと言っているのを見たのでしょうか?脂肪ゼロのヨーグルトに蜂蜜をかけて毎日食べる…キウイフルーツ(ゴールデン)を毎日食べる…
    まるで何かに洗脳されてしまったかのように何故かブロッコリーとキャベツばかり食べる…
    肉はほぼ鶏肉で、脂のある牛、豚は一切食べない…
    まあ、糖質制限も人から見れば何かに洗脳されてるんじゃない?
    なんて思われてしまいそうですが!
    食事を支度する側とすれば、面倒で仕方ないです(笑)
    IgA腎症(経過観察のみ)なのですが、グルテンフリーは良いにしても、糖質過剰摂取って、どうなのでしょうね?

    1. みみさん、コメントありがとうございます。

      本当の意味でグルテンフリーが必要な人は少ないと思います。ただどちらにしても糖質なので糖質制限はグルテンフリーになるでしょう。
      白米大盛りの後、血糖値はどうなっているのでしょう?
      鶏肉ばかりでは鉄はどこから摂っているのでしょうか?脂質制限でしょうか?
      IgA腎症でインスリンをたくさん出すことは良くないと思いますが。私は拙著で書いたようにIgA腎症も糖質過剰症候群だと考えています。

      私の考えでは、固定の食材があっても良いと思いますが、多種類の食材を食べた方が良いと思っています。
      それは食材によって栄養素の含有量が違うからで、食材を固定してしまうと、一部の栄養素の不足が懸念されます。

  2. 「2つの食事法の大きな違いは、豆類と果物と精製されていない穀物を摂るかどうかです。」
    スーパー糖質制限続けて体調ベストですが、ケトン食も非常に惹かれます。
    ケトン食では豆類も不可なのですね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      食事法の定義は様々です。今回の研究での話です。
      実際にはケトン食で豆類が完全に不可ではないでしょう。
      糖質制限でも白米を小さな一口であれば食べても糖質制限は可能です。量の問題でしょう。

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