妊娠中にはフェリチンが低下します。それは胎児に鉄を供給するから減少すると説明されていますが、本当なんでしょうか?恐らく確かめられていないでしょう。体重50kgの母親の非妊娠時の循環血液量は3.5~4リットルです。それが妊娠時には1.4倍になるので、4.9~5.6リットルまで増加します。それに対して新生児では血液量は体重の9~10%であり、3000gの赤ちゃんでは0.27~0.3リットルしかありません。しかも妊娠中の胎児ではもっと血液は少ないでしょうから、フェリチンが妊娠前の半分以下に減るのは全部胎児に持っていかれてしまうというのは無理があると思います。また、母親の血液量が非常の増加しているので、単に希釈されて減っているのかもしれません。さらに、妊娠中はごく軽度の炎症状態とも考えられるので、逆にフェリチンは実際よりも高く出てもおかしくないでしょう。

もしかしたら、何らかの理由(自然なメカニズム)で鉄の吸収も大きく低下しているのかもしれません。

以前の記事「妊娠中の鉄サプリの使用は慎重に その1」では、有害な妊娠転帰の可能性について書きました。今回は妊娠糖尿病についてです。

以前の記事「妊娠糖尿病と鉄の関連 フェリチン低値で鉄を補充する危険性」で書いたように、妊娠中に鉄サプリを一生懸命に飲んで鉄を増加させようとすると、妊娠糖尿病のリスクを上げるかもしれません。その記事の研究だけでなく、他にも同様の結果の研究があります。

例えば妊娠 16 週前後のフェリチンと鉄サプリと妊娠糖尿病の関連を分析した中国の研究では、フェリチンの値によって4つのグループに分けたとき、最もフェリチンが低いグループは29.5ng/mL(中央値19.6)、次が29.6–52.0(中央値40.7)、次が52.1–89.9(中央値66.7)、最も高いグループが90以上(中央値133)でした。妊娠糖尿病のリスクは最もフェリチンが低いグループと比較して、2番目が2.14倍、3番目が2.03倍、最も高いグループは2.72倍でした。さらに妊娠中期の鉄サプリ60 mg/日以上使用では、サプリなしと比較して妊娠糖尿病のリスクが1,37倍増加していました。さらに下の図はフェリチン値と鉄サプリの量によるリスクを示しています。最も低フェリチンのグループでは鉄サプリの影響はないか有益でしたが、中間の2つのグループでは鉄サプリの使用は有害のように見え、60mg以上だと妊娠糖尿病リスクは1.62倍でした。さらに最も高いフェリチングループでは鉄サプリの有無とは関係なくリスクが高くなっていました。(図はこの論文より)

この研究でもフェリチンの安全圏は低めであることがわかります。

別のデンマークの研究では、妊娠初期のフェリチン値で妊娠糖尿病の可能性がどれほど高くなるかを分析しています。フェリチン値によって5つのグループに分けています。(表はこの論文より改変)

フェリチン中央値(μg/L)
 1 (25.0)1.0
 2 (45.0)1.17 (0.65、2.11)
 3 (66.0)1.84 (1.03、3.28)
 4 (87.0)0.77 (0.43、1.40)
 5 (141.0)2.22 (1.23、4.01)

線形ではありませんが、最も高いグループでは最も低いグループと比較して2.22倍でした。ヨーロッパのこの研究のフェリチンも安全圏は低めですね。

恐らく女性でフェリチンが100前後というのは、代謝や何らかの異常が起きているのではないかと思います。それにより、妊娠前から糖尿病のリスクが高かったのでしょう。フェリチンは自然に分泌されるのではなく、細胞障害によって漏れ出てくるものですから。

4,690 人の妊婦を対象とした10の研究のメタアナリシスの結果(この論文参照)では、妊娠糖尿病のリスクはフェリチンが最も高い人ではフェリチンが最も低い人の1.87倍でした。そして、10 μg/L のフェリチンの増加が妊娠糖尿病 のリスクを 8% 増加させることを示しました。

妊娠中の鉄欠乏の許容範囲はわかりません。妊娠中の鉄をフェリチンの値によって決めて良いのかどうかもわかりません。

もちろん、妊娠糖尿病も糖質過剰症候群であり、糖質制限をすればそのリスクは非常に大きく低下すると思います。糖質過剰摂取のままであれば、やはり妊娠中の鉄のサプリは十分に考えた方が良いでしょう。そして鉄欠乏にならないように妊娠前からの食事が重要でしょう。

さらに妊娠中の鉄は他にも影響している可能性があります。それまた次回以降に。

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