人工甘味料は血糖値を上げないと考えられています。しかし、体に何も影響がないかどうかはわかりません。
今回の研究では、様々な人工甘味料を摂ってもらい、その影響を分析しました。使用した人工甘味料はサッカリン、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、そしてグルコース、何もないコントロール群の6つのグループに分けました。(図は原文より)
摂取する人工甘味料の量は上の図のようです。どれも1日の許容摂取量以下です。最も許容摂取量に近いステビアでも75%です。この量を6つの袋に分けて、1日3回2袋ずつ全体で2週間摂取するようです。その後人工甘味料の摂取をやめてフォローアップしています。
上の図は50gのブドウ糖負荷試験の結果ですが、フリースタイルリブレのような持続的に間質液のグルコース値を測定する機器で測定したデータで、グルコース曲線下の増分面積 (iAUC)を比較しています。1週目と2週目で、サッカリンおよびスクラロースで血糖値の上昇を認めました。
アスパルテーム、ステビアでは全体としては有意な差がなくても、個々のデータではレスポンダーがいるように見えます。
フォローアップでは有意な差がなく、人工甘味料の耐糖能の変化は可逆的なようです。
上の図はインスリン分泌です。ステビアで有意にインスリン分泌が増加しています。その他でも人工甘味料摂取中はインスリン分泌が増加しているようにも見えますが、コントロールでも同様に見えるので、解釈が難しいですね。
さらに、この研究で人工甘味料に非常に良く反応したトップレスポンダーの人の腸内細菌をマウスに移植したところ、そのマウスは非常に顕著に反映する血糖変化を発症し、対照的に反応が鈍かったボトムレスポンダーの腸内細菌は、マウスでもそのような血糖反応を誘発することがほとんどできませんでした。
また、興味深いことに、下の図のように腸内細菌の代謝産物はトップレスポンダーとボトムレスポンダーでは大きく異なっていました。
上の図の青い色は非常に少なく、赤い色は非常に多いことを示しています。一番から順に3つはケトン体のβヒドロキシ酪酸、システイン、セリンです。3つすべてが、ベースラインでトップのスクラロースレスポンダーで最も低く、人工甘味料摂取中に増加しました。逆にボトムレスポンダーではケトン体はベースラインで非常に高かったものが、人工甘味料摂取中には低下しました。つまり、ベースラインでの個々の腸内細菌によって人工甘味料による血糖の反応が異なる可能性があるのです。
ただ、この研究は通常の食事、つまり糖質過剰摂取をしている人の研究です。糖質+人工甘味料による影響です。糖質制限をしている人ではどのようになるのかはわかりません。しかし、糖質制限をしていても腸内細菌を変化させる可能性はあり、それがどのような影響があるのかはわかりません。
腸内細菌はまだまだ分からないことばかりです。
人工甘味料は人類の進化の中では存在しなかった、工業製品です。血糖値を直接変化させないかもしれませんが、代謝には何らかの影響があっても不思議ではありません。糖質よりは恐らく何倍も安全ではあると思っていますが、私はできる限り人工甘味料も避けた方が良いと思っています。
「Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance」
「人間の耐糖能に対する非栄養甘味料のパーソナライズされた腸内細菌による効果」(原文はここ)
「ベースラインでの個々の腸内細菌によって人工甘味料による血糖の反応が異なる可能性があるのです。」
生理的な機能維持に欠かせないと言われ、最近特に注目されている腸内細菌。
まだ未解明の部分が大きいとは思いますが、人工的(工業的)製品を体内に入れる事での影響は免れないとは思います。
ただ、ゼロコーラやカロリーゼロフルーツゼリーなどの愛用者としては(喫煙者の様々な言い訳のように)「でも、生理的に血糖値あげないし」とか考えてしまいます。
止められれば良いんですが。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
腸内細菌で何でも説明できるわけではありませんが、無視もできないでしょう。
ただ、仰るように未解明の部分が多すぎます。