日本の鶏肉のエストロゲン濃度はアメリカ牛肉よりも高い?

昨日の記事「日本という国はつくづく国民を大事にしていないんだな…」では、輸入牛肉の残留ホルモンなどについて書きました。その記事の中でもアメリカの牛肉のエストロゲンは「自然状態の600倍の数値」が検出されたと書かれています。

その論文をまずはご紹介します。ただし、この論文は2009年のものであり、現在の牛肉がどのようになっているかは不明です。(この図は原文より)

上の図は無作為に札幌市内で購入した牛肉の残留ホルモン濃度を検査したものです。Aは牛肉の脂肪、Bは牛肉の赤身肉です。左側がエストロゲンの中のE2(エストラジオール)、右がE1(エストロン)です。

アメリカ産牛肉には、日本産牛肉よりもはるかに高いレベルのエストロゲン、特にE2が含まれていました。E2と E1の濃度の中央値 (pg/g) は、アメリカ牛の脂肪 (14.0、7.7) で、日本の牛の脂肪 (0.1、0.7) よりもそれぞれ 140 倍と 11 倍高く、赤身肉では、アメリカ牛のE2およびE1レベル (3.8、1.0) は、それぞれ日本の牛の赤身肉 (0.0、0.1) よりも約 600 倍および 10 倍高いことが確認されました。

確かに、日本の牛肉のエストロゲンがあまりにも低値であるので、140倍とか600倍というものすごい数値がインパクトを与えます。

しかし、同じ北大のグループが科学研究費助事業で行った研究にはその続きがあります。(ここ参照)

上の図は先ほどの牛肉の脂肪のデータにフィリピン産の牛肉が加わっています。フィリピン産は日本よりはエストロゲンが高いですが、アメリカ産よりはかなり少ないですね。

次は、鶏肉の脂肪です。

驚くことに、鶏肉の脂肪のエストロゲンは日本産でも国産牛肉の脂肪のE1よりも148倍、E2で92倍です。アメリカ産ほどではないですが、フィリピン産よりはかなりエストロゲンが多く含まれていることがわかります。日本産の鶏肉はアメリカ産の牛肉と比較してもE2は低いですが、E1で13.5倍です。

E1やE2は熱に強いので調理してもそれほど変化はないでしょう。代謝活性化されカテコールエストロゲンの方が乳がんなどに問題となると考えられていますが、その値は今回はわかりません。カテコールエストロゲンは比較的熱に弱いですが、抗酸化剤が添加されていると熱に強くなるようです。(ここ参照)そうなると加工された肉、例えばコンビニなどのサラダチキンなどはあまり良くないかもしれません。

上の図は閉経後の女性の皮下脂肪のエストロゲン濃度を示しています。フィリピン人よりは日本人の方が少ないように見えます。その値を見るとアメリカ産牛肉よりは遥かに高値です。鶏肉よりも高値です。

ちなみに、E2(エストラジオール)の血中濃度は下の表のようです。(ここ参照)

(単位:pg/mL)
非妊婦女性卵胞期28.8 〜 196.8
排卵期36.4 〜 525.9
黄体期44.1 〜 491.9
閉経後47.0以下
男性14.6 〜 48.8
妊婦妊娠初期208.5 〜 4289
妊娠中期2808 〜 28700
妊娠後期9875〜 31800

つまり、血中濃度で考えても、人間の脂肪に含まれるエストロゲンを考えても、肉、特に牛肉に含まれているエストロゲンはそこまで高くないようです。逆に鶏肉の方が数値だけを考えると危険であるのかもしれません。

もちろん日本の鶏に肥育ホルモンは投与されていませんが、エサに添加されています。

乳がんなどホルモンとの関連があるがんのリスクを考えると、このようなデータがどのような意味を持つのか、非常に気になりますが、あまり関係ないのか、それとも輸入牛肉よりも日本の鶏肉の方が危ないのかわかりません。

アメリカ産をはじめ輸入肉は昨日の記事にあったように、エストロゲンだけの問題ではなく、他の成長促進剤(ラクトパミン)なども含まれており、やはり気を付けた方が良いでしょう。

豚肉はデータがありませんのでわかりません。このようなことは本来は農水省がしっかりと測定して、国民に示すべきだとは思いますが。農水省は国民のためではなく農家のために働いています。農家にとって不利なことはやらないでしょう。

自分でデータを測定するとしたら、どこに依頼し、どれほどのお金がかかるのか?興味はありますが、難しいですね。

どなたか、各種肉の残留ホルモンのデータを持っていたり、詳しく知っている人がいましたら、是非教えて下さい。

ただ、いたずらにホルモンを怖がる必要はないのかもしれません。以前の記事「モンゴル人において乳がんの発生率が非常に低いのはなぜなんだろう?」に書いたように、モンゴル人はイギリス人よりも多くの肉や乳製品を摂っているのに、乳がん発生率は10分の1程度です。アジア人がアメリカに移住すると乳がんの発生率が高くなります。私はやはり糖質過剰摂取+ホルモンだと思います。がんは糖質過剰症候群ですから。

「Estrogen concentrations in beef and human hormone-dependent cancers」

「牛肉のエストロゲン濃度とヒトホルモン依存性がん」(原文はここ

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