低炭水化物食とインターミッテントファスティングの効果

糖質制限とインターミッテントファスティングというタイトルにしたかったのですが、今回の研究は我々のレベルの糖質制限ではありません。中途半端な糖質制限で、いわゆるロカボレベルです。低炭水化物食とインターミッテントファスティングのそれぞれ、または両方を行った時に体重や内臓脂肪はどうなるのでしょうか?

169人の参加者が、低炭水化物食、8時間の食事時間制限、またはそれらの組み合わせによる介入を受けるように無作為に割り付けられました。すべての参加者が登録時に3つ以上のメタボリックシンドローム基準を満たしており、62人は投薬を受けていました。3か月の試験の終了時に、完全に終了できたのは低炭水化物食47人、8時間の食事時間制限44人、それらの組み合わせ44人でした。すべての参加者は、毎日の食事記録を書き、アプリを使用して食事をした時間を記録するように勧められましたが、これは必須ではありませんでした。医師は参加者の毎日の食事記録を毎日チェックし、アプリを通じて参加者の食事介入に基づいて食事指導を提供しました。食事介入の順守は、すべての参加者に対して隔週で食事アンケートを実施しました。食事アンケートのデータなので質は低いですね。

下の図のようにベースラインで、平均年齢は40歳前後、BMIはおよそ29でした。(図は原文より、表は原文より改変)

結果の簡単は要約は次の図です。

図のサムネイル fx1

体重減少および皮下脂肪量の減少は低炭水化物食では少なく、8時間時間制限食はそれよりも減少が大きく、組み合わせでは相乗効果が認められました。低炭水化物郡では内臓脂肪は低下せず、血糖のコントロールや中性脂肪、尿酸の変化もわずかでした。両方の組み合わせが最も効果がありました。

上の図は個々のデータです。当然個人差があります。低炭水化物群では平均して体重が2.7%減、時間制限群で4%減、組み合わせで5.8%減でした。組み合わせのみ3か月後でも体重が減少し続けています。

何となく糖質制限があまり効果的でないように見えます。糖質制限ではなく低炭水化物食ですが。細かいデータを見てみましょう。

下の表は 3か月間の介入後の体組成と代謝危険因子の変化です。
低炭水化物 時間制限 両方
順守日数(日) 55.5±3.5 65.9±3.0 57.7±3.1
食事の時間帯(時間) ファローアップ 10.0±0.3 6.5±0.3 6.8±0.3
−0.6±0.3 −3.9±0.4 −3.9±0.4
1日の炭水化物摂取量(g) ファローアップ 149±12 327±15 140±11
−175±22 −21±14 −221±20
体重(kg) 1M フォローアップ 83.0±2.2 82.6±2.1 82.1±1.8
1M△ −1.7±0.3 −2.4±0.4 −2.6±0.4
2M フォローアップ 82.2±2.2 81.4±2.0 80.5±1.8
2M△ −2.5±0.3 −3.7±0.4 −4.2±0.4
3Mフォローアップ 82.3±2.4 81.2±2.2 80.2±1.8
3M△ −2.2±0.3 −3.4±0.4 −5.0±0.4
BMI (kg/m2) ファローアップ 28.3±0.4 28.1±0.4 27.2±0.4
−0.9±0.2 −1.4±0.3 −1.8±0.2
胴囲(cm) ファローアップ 93.6±1.6 92.7±1.5 91.4±1.4
−2.4±1.1 −4.2±1.0 −3.3±1.2
ヒップ周り(cm) ファローアップ 102.3±0.9 103.0±0.9 100.9±1.0
−2.7±0.8 −1.5±0.7 −2.8±0.9
体脂肪量(kg) ファローアップ 31.9±0.9 31.9±0.9 29.8±0.9
−2.0±0.4 −1.3±0.6 −3.0±0.5
筋肉量 (kg) ファローアップ 31.3±1.0 31.1±0.9 31.5±0.8
0.1±0.2 −0.5±0.3 −0.5±0.2
皮下脂肪面積(SFA、cm2) ファローアップ 253±12 245±10 231±10
−23±5 −24±8 −24±8
内臓脂肪面積(VFA、cm2) ファローアップ 98±6 92±5 86±4
6±5 −13±5 −10±3
HbA1c(%) ファローアップ 5.7 (0.6) 5.6 (0.6) 5.6 (0.7)
0.0 (0.3) 0.0 (0.3) −0.1 (0.4)
空腹時血糖(mmol/L) ファローアップ 5.22 (1.11) 4.76 (1.01) 5.01 (1.23)
0.07 (0.81) −0.18 (0.65) −0.21 (0.96)
空腹時インスリン (mIU/L) ファローアップ 23.7 (19.4) 26.5 (20.3) 18.2 (20.8)
−3.1 (10.4) −3.3 (12.7) −5.5 (14.4)
C-ペプチド (pg/mL) ファローアップ 1,424.1±85.2 1,416.3±80.3 1,332.7±71.0
−184.6 ± 47.6 −243.9 ± 66.0 −319.1±67.8
HOMA-IR ファローアップ 4.64 (4.70) 5.73 (4.39) 4.17 (4.41)
−1.15 (2.99) −1.04 (4.53) −2.16 (4.82)
HOMA-IS ファローアップ 0.23 (0.29) 0.22 (0.42) 0.29 (0.21)
0.03 (0.12) 0.04 (0.25) 0.10 (0.20)
尿酸(μmol/L) ファローアップ 363±14 345±12 364±12
−17±11 −40±9 −51±13
総コレステロール (mmol/L) ファローアップ 4.91±0.15 4.79±0.14 4.87±0.15
0.19±0.12 0.03±0.17 0.14±0.13
LDLコレステロール (mmol/L) ファローアップ 3.27±0.14 3.14±0.14 3.33±0.15
0.28±0.13 0.13±0.14 0.30±0.13
中性脂肪 (mmol/L) ファローアップ 1.30 (0.94) 1.60 (1.64) 1.40 (1.59)
−0.15 (1.20) −0.30 (1.36) −0.51 (2.01)
HDLコレステロール (mmol/L) ファローアップ 1.16±0.03 1.13±0.03 1.13±0.03
0.03±0.03 0.02±0.03 0.09±0.02
中性脂肪/HDLコレステロール比 ファローアップ 1.20 (1.20) 1.49 (1.54) 1.30 (1.33)
−0.02 (1.20) −0.30 (1.59) −0.59 (2.13)
収縮期血圧 (mmHg) ファローアップ 130±3 137±2 131±2
1±2 1±2 1±2
拡張期血圧 (mmHg) ファローアップ 81±2 85±2 80±2
−1±1 −2±1 −5±2
まず、重要なのは食事をちゃんと順守したかどうかです。3か月の間で、低炭水化物食では55日しか順守していません。しかも炭水化物摂取量は約150gです。中途半端な糖質制限のロカボさえ超えた量です。まあ、これではあまり効果がないのも納得です。ちゃんと糖質制限をすれば内臓脂肪は大きく減少するはずです。逆に興味深いのはインターミッテントファスティング、8時間時間制限の効果が思ったよりも3か月で表れていることです。糖質を減らしていないにも関わらず、体重だけでなく、皮下脂肪や内臓脂肪もそれなりに減少しています。空腹時インスリンやインスリン抵抗性も少し減少し、尿酸も低下しています。もちろん、健康というレベルにまで改善しているわけではありませんが、インターミッテントファスティングだけでも変化があるということです。
今の人は頻繁に食事を摂り過ぎです。1日3回しっかり食べるなんて必要ありませんし、間食ももちろん必要ありません。水分補給に糖質の入った飲料も必要ありません。
病気ではなく、症状もないならば、このようなゆるゆる糖質制限+インターミッテントファスティングで始めるのもありかもしれませんね。
症状や病気があるならば時間制限だけでは無理です。糖質制限をして、食事の回数も減らせば、非常に早く、様々な症状、パラメーターが改善するでしょう。
「Time-restricted eating with or without low-carbohydrate diet reduces visceral fat and improves metabolic syndrome: A randomized trial」
「低炭水化物ダイエットの有無にかかわらず時間制限のある食事をすると、内臓脂肪が減少し、メタボリック シンドロームが改善される: 無作為化試験」(原文はここ

5 thoughts on “低炭水化物食とインターミッテントファスティングの効果

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      1日1食いいですね。私は食べるのがやっぱり好きで、どうしても2回になってしまいます。

  1. 世の中には少食を通り越して不食と言う世界があるようです。ほとんど食事を摂らず健康に暮らしている方々のことですが、日本人にも何人かおられます。
    なぜそのような生活が可能なのかはよくわかっていないようですが、NASAも認めているようです。どこまで本当なのか(多分本当です)分かりませんが、ひとつ共感できることがあります。それは、人は暇にしていると食べ物に手を出すと言うことです。忙しくしていれば食べないものでも暇だとついつい食べてしまう。要するに生命維持とか健康維持とは関係なく食べ物を口にしてしまうと言うことです。言われてみると大してお腹が空いてなくても時間になると食事をしたり、忙しい時は食事の時間も忘れていたり、自分にも思い当たる事が多いです。
    考えてみると食事というのはかなりの暇つぶしになります。食材を買いに行き、調理して食べ終わるまで多くの時間を消費します。食べる事をやめる事ができれば、かなりの時間が節約できそうです。暇を持て余すかもしれません。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      私は暇を持て余すことがほとんどないので、暇つぶしに何か食べるということはあまりありません。
      でも、暇つぶしにテレビや動画を見ているのに、何かを食べている人もいます。
      私は、糖質過剰摂取で血糖値の変動が大きく、それによって食べようとするのがあると思います。
      また、そこに食べ物があるから食べるのだと思います。狩猟採集生活では次にいつ食べられるかわかりませんでしたので、
      本能的な行動ではないかと思ったりもします。

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