動かないことは、動物の世界では「死」を意味するでしょう。しかし、人類は動かなくても誰かが動いて、その人の世話をしてくれることも多いでしょう。老化で徐々に活動量が低下することは普通のことであり、そして徐々に死に近づいていくわけです。
現代の生活では、若い人でもそれほど動かず生活している人もいるでしょう。スマホがあれば調理された食事を誰かが届けてくれます。しかしそれは決して健康的な生活ではありません。動かさない筋肉は減少し、その代わり無駄に摂っている糖質などによって脂肪に置き換わります。あまりにも筋肉と脂肪の比率がおかしくなっている人がいます。
何らかの疾患の急性期であれば、安静は必要かもしれません。しかし、何もないのに動かないと体に悪影響をもたらします。
今回の研究では10人の健康な若い男性(平均年齢23.8歳、BMI22.1)を対象に、2週間毎日の活動レベルを歩数として1日平均10,501歩から1,344歩に減少させました。その時の変化を分析しています。インスリン感受性は高インスリン正常血糖クランプ法で測定しています。
その結果、当然1日のエネルギー消費量が低下しました。また、最大酸素消費量 (VO2 max)(ml/min)も平均7.2%低下しました。体重は1.2㎏減少し、下肢の筋肉が0.5㎏有意に減少しました。(図は原文より)
上の図のAはグルコース注入速度(GIR)です。240分のクランプ中のGIRは、2週間で17%大幅に減少しました。
Bのように、高インスリン正常血糖クランプ法の間、血糖値は一定に保たれていました。Cはインスリン刺激によるグルコース消失率(Rd)(末梢インスリン感受性の低下の指標)と内因性肝臓グルコース産生率(Ra)です。Raは変化なく、Rdは低下していました。つまり、末梢インスリン感受性が低下したことになります。
血糖値、インスリン値、中性脂肪値、TNF、IL-6、IL-15、レプチン、アディポネクチンなどは2週間で変化していませんでした。
若い健康な男性でさえ、2週間の活動性の低下は、末梢インスリン感受性、下肢の筋肉、心肺機能(Vo2max)が低下します。それが高齢者であればなおさらです。人間の初期設定は動くように設定されています。動かないことは想定されていません。
ときどき過度の安静を指示する医師がいます。もちろん病状によって安静も必要な場合もありますが、そこまでではない場合に、安静にすれば数日で改善するものであれば良いのですが、慢性的な症状では安静は逆に作用することも多いでしょう。ちょっと腰が痛いからといって何日も1日中横になっていては足腰の筋肉も低下し、余計に腰痛の原因になるかもしれません。そして、粗食、野菜が健康的だという間違った低タンパク質な食事では、さらに筋肉が低下してしまうでしょう。
動けなくなってからどうにかしようとしても非常に難しいです。いまだに、新型コロナの感染を恐れてあまり外に出ない人もいるかもしれません。動かないことは死を早めてしまうかもしれません。もうそろそろ間違った恐怖から抜け出なければなりません。恐れている間に筋肉が減少し、歩けなくなってしまう可能性があります。それは健康には非常に悪影響です。健康のためには運動が必要です。年を重ねるごとに自ら意識しなければ、老化は加速するかもしれません。
もうすぐ冬です。さらに活動量が低下する季節です。足に重力をかけて下肢の筋肉を刺激しましょう。意識して動きましょう。
「A 2-wk reduction of ambulatory activity attenuates peripheral insulin sensitivity」
「歩行活動の2週間の減少は、末梢インスリン感受性を弱める」(原文はここ)
常に安楽を求める人間の性と健康は、相反するものなのですね。
運動したくない理由は山ほど思いつきます。
よほど自覚する必要がありますね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
老化スピードが速くても良く、病気になっても構わないのであれば、運動は必要ないかもしれません。
加齢に少しでも抗いたいのであれば運動は必須でしょう。
もちろん、故障する手前でストップしなければなりませんが。
健康のためには、動くこと、活動すること、これに尽きますね。
私は糖質制限はしておらず、パンやパスタが大好きで、毎日糖質250gは摂ってますが、
シュッとした体型で生活習慣病もありません。
動かない人は糖質制限が必要でしょうね。
私は食べて動く派です。
煙は薄し桜島山さん、コメントありがとうございます。
糖質制限の人も動く必要があります。
逆に運動すれば糖質制限は必要ないか?そうだといいですね。
でも私はそう思っておりません。どちらも必要だと思います。