PET検査では、ブドウ糖と性質が似た18F-FDGという薬剤を使用します。がんはブドウ糖をエサにするので、がん細胞が18F-FDGを取り込み、それをスキャンするのです。脳もブドウ糖をエネルギーとするので、脳の代謝を見るPETでも18F-FDGを使用します。
では、ケトン食を行っているとどうなるでしょうか?今回の研究では、心臓サルコイドーシスの可能性または心臓内感染の疑いの52人が対象で、男性は32~86歳 (平均年齢56.7歳)、女性は 36~77 歳 (平均年齢59.2歳) の範囲でした。13人 (25%) は糖尿病で、そのうち12人が2型糖尿病、1人が1型糖尿病 でした。1型糖尿病1人を含む5人 は、通常インスリンを使用していました。
処方されたケトン食を48時間行い、検査の前に18時間絶食を求められました。糖尿病患者は、18時間の絶食期間中、経口血糖降下薬とインスリンを差し控えるよう求められました。血中のβヒドロキシ酪酸が0.5mmol/L(日本の単位で500μmol/L)以上はケトーシスであると見なされ、0.5mmol/L未満はケトーシスではないと見なされました。
実際の絶食時間は7~25.5時間 (平均19.5時間) でした。ほとんどの人は15時間以上の絶食時間を報告しました。血糖値は2.4~11.7mmol/L (平均5.7mmol/L) で日本の単位では43.2~211mg/dL(平均103)でした。ケトン体値は 0.2~5.4mmol/L (平均1mmol/L) でした。1 人だけ血糖値が11.7mmol/Lを超えましたが、そのケトン体値は0.3 mmol/L でした。処方された食事の順守を確認し、この患者の高血糖は2型糖尿病に起因すると考えられました。
また、5人 (10%) は、処方された食事を厳密に守らなかったと述べ、1人は食事の遵守が不明でしたが、これらの6人全員がケトーシスであることがわかりました。12人 (23%) はケトーシス状態ではありませんでしたが 、これらの患者全員が食事を厳密に遵守していると報告し、分析に含めました。(図は原文より)
上の図は脳のFDGに対する血糖値の効果を示しています。赤いほど取り込みが多く、青いほど取り込みが少ないことを示しています。3人の患者のサンプル画像は、同じケトン体値ですが、血糖値が違うと、FDGの取込みはかなり違います。4.1mmol/L(74mg/dL)と5.9mmol/L(106mg/dL)でも違いがあります。血糖値が11.7mmol/L(211mg/dL)では FDGの取込みは劇的な減少を示しています。
上の図は脳のFDGに対するケトン体値の影響です。同じ血糖値4.8mmol/L(86mg/dL)の2人の患者のサンプル画像ですが、ケトン体値が0.3mmol/Lよりも、より高いケトン体値1.7mmol/Lでは脳のFDG取込みは減少を示しています。
つまり、血糖値が高くてもFDG取込みは減少し、ケトン体値が高くてもFDG取込みは減少します。しかし、これは全く意味が違うでしょう。血糖値が高いときの取込み減少は、実際のエネルギー不足であり、ケトン体値が高いときの取込み減少は脳のエネルギー源としてケトン体が使用されていることによるものだと考えられます。
また、血糖値およびケトン体値が高くなったときの取込み減少は脳全体の中で、特に楔前部という領域で大きく減少しました。アルツハイマー病で最初に代謝や血流が低下する部位は後部帯状回から楔前部であるとされています。糖質過剰摂取により高血糖が認知症を起こすのも理解できます。
ただ、糖質制限、特にケトン食に近いほど、脳のPET検査の結果には注意が必要です。ケトン体値が非常に高い場合もPETの検査結果は取込みの減少を示すのですから。
いずれにしても、認知症や脳の疾患を予防するためには、まずは糖質制限でしょう。高血糖になると大幅に脳のエネルギー不足を起こす可能性が高いです。
「Regional differences in the reduction in cerebral FDG uptake induced by the ketogenic diet」
「ケトン食によって誘発される脳のFDG取り込みの減少における領域差」(原文はここ)
こう言ってはなんですが、
糖質制限始めてから、
加齢にも関わらず、
賢くなったよう(な感覚)です。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
私もちょっとだけ賢くなった気がしています。