糖質制限で多嚢胞性卵巣症候群の体外受精の成功率が圧倒的に上がる

不妊で困っている人は大勢いると思います。妊娠、出産というのは子孫を残すためにあらゆる生物が行ってきているものです。その根本的なメカニズムが何らかの影響で狂ってしまっているのだと思います。その原因の一つは食事でしょう。

今回の研究では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者が体外受精治療を行うときに糖質制限を併用するとどうなるか、というのを調べています。その結果は圧倒的です。

以前に体外受精サイクルに失敗し、インスリン抵抗性陽性(HOMA-IR>1.96)を有する12人のPCOS患者が対象です。糖質制限食(論文ではケトン食)(1日あたり1800~2000カロリー)に従うよう指示され、1日に体重1kg当たり総炭水化物量が50g以下(約15%)、タンパク質1.5g(25%) 、残りは脂質(≥60%)で構成されています。食事の遵守を記録するために、すべての食事摂取量(栄養介入前および栄養介入中)を自動登録し、それを栄養士に報告しました。次に、栄養士はアプリを使用して、毎日および毎週摂取した主要栄養素を確認し、必要に応じて食事の主要栄養素の配分を修正しました。(図は原文より、表は原文より改変)

パラメータ 最初 最後
腹囲(cm) 94.6 ± 3.6 86.3 ± 3.4
重量(kg) 74.6 ± 3.9 66.7 ± 3.5
BMI (kg/m 2 ) 30.8 ± 1.7 27.5 ± 1.4
 肥満 (%) 41.7 25.0
 太りすぎ (%) 58.3 41.7
 正常体重 (%) 0.0 33.3
中性脂肪 (mg/dl) 171.8 ± 22.6 128.1 ± 18.8
空腹時血糖値 (mg/dl) 95.6 ± 4.7 84.1 ± 3.2
HDLコレステロール (mg/dl) 46.4 ± 2.9 44.6 ± 2.8
空腹時インスリン (mUI/mL) 22.0 ± 4.6 10.4 ± 2.1
HOMA-IR 5.6 ± 1.6 2.3 ± 0.6
年齢(歳) 33.2 ± 1.6 (22–40)

上の表は最初と最後の様々なパラメータです。HDLを除き、どれも大きく改善しています。3分の1の人は正常範囲の体重になっていました。

下の図は個々のパラメータ変化です。

ほとんどの人はほとんどの項目で改善が認められています。空腹時インスリンが増加したのはたった一人ですね。

上の図は3大栄養素の量や割合です。図のAに示すようにほとんどの患者は以前には200g/日を超える高炭水化物食を摂取していました(199~289g/日)。それが1日あたり32~58gの範囲になり、カロリー摂取量の約18%でした。タンパク質の摂取割合が一番多く43%でした。図のCは栄養的ケトーシスに入る時期を示しています。83.3%が2週間以内にケトーシスになりました。

上の図は個別のHOMA-IRとメタボの因子の数です。91.6%が空腹時インスリン濃度の低下を示し、インスリン抵抗性のHOMA-IRは61.5%が正常範囲内(HOMA-IR<1.9)に改善しました。58.3%がメタボの少なくとも1つの基準で改善し、2人だけ基準の数を増加させました。

糖質制限前のサイクルと比較して、胞状卵胞数、採取された卵母細胞の数、および受精率などには改善はありませんでしたが、有意ではないものの子宮内膜の厚さは6.8から8.6mmに増加し、75%の症例で何らかの改善が見られました。さらに、下の表のように移植の83.3%が胚の着床(血清β-hCG陽性)をもたらし、66.7%が臨床妊娠(少なくとも1つの胎嚢からの胎児心拍動)に達し、そして58.3%が出産に至りました。

カテゴリー 前のサイクル 現在のサイクル
着床率(%) 8.3 (1/12) 83.3 (10/12)
臨床妊娠率 (%) 0.0 (0/12) 66.7 (8/12)
出産率 (%) 0.0 (0/12) 58.3 (7/12)
継続的な妊娠/出産率 (%) 0.0 (0/12) 66.7 (8/12)

以前の体外受精サイクルを考慮すると、栄養介入後、胚の着床、臨床妊娠、および継続的な妊娠率/出生率が大幅に改善されました。さらに下の表のように、すべての出産は出生時から健康であり、発達上の問題はありませんでした。

妊娠週数 出生体重(g) 身長(cm) 性別
P4 38 + 2 2054/2057 43 / 44 男女
P5 42 + 5 3039 50.3
P6 35 + 5 2100/1900 45 / 45 男女
P7 39 + 4 2950 50
P8 36 + 3
P9 41 + 1 3250 48
P10 37 2690 47

あまりにも大きな違いです。糖質制限で多嚢胞性卵巣症候群の体外受精の成功率が圧倒的に上がるのです。逆に言えば糖質過剰摂取、インスリン抵抗性がいかに妊娠に悪影響を及ぼすかがわかります。今回は多嚢胞性卵巣症候群の人を対象にしていましたが、根本的にはこの病名がつかなくてもインスリン抵抗性があれば同じでしょう。

不妊治療を行っている人は増えていると思います。その現場は私は知らないのですが、食事の改善については説明されるのでしょうか?妊娠を考えるのであればまずは食事からですね。

 

「Adding a ketogenic dietary intervention to IVF treatment in patients with polycystic ovary syndrome improves implantation and pregnancy」

「多嚢胞性卵巣症候群患者の体外受精治療にケトジェニック食事介入を追加すると、着床と妊娠が改善される」(原文はここ

2 thoughts on “糖質制限で多嚢胞性卵巣症候群の体外受精の成功率が圧倒的に上がる

  1. 食品会社、製薬会社、
    そして医療関連機関の「洗脳」
    から脱して
    健康を取り戻したいですね。

  2. 高齢出産に伴うリスクも、糖質過剰摂取の積み重ねが影響している部分も
    あるのかもしれませんね。

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