食事の飽和脂肪酸摂取は血中の飽和脂肪酸を増やすのか? その1

糖尿病や心臓の専門家などは食事の脂質の組成が疾患に影響を与えると考えています。そして、飽和脂肪酸の摂取量は糖尿病の発症リスクになり, 多価不飽和脂肪酸がこれを低減するという研究をガイドラインでも引用しています。まあ、もちろんウソですが、その論文の一つを見てみましょう。

血漿コレステロールエステル(CE)およびリン脂質(PL)脂肪酸組成と糖尿病の発生率との関係を調べています。45~64歳の 2,909人において、血漿脂肪酸組成を分析しました。9年間の追跡調査中に糖尿病の発症は252人でした。

糖尿病の発生率は、血漿CEおよびリン脂質中の総飽和脂肪酸の割合と有意かつ正の相関がありました。(図は原文より)

上の図は血漿コレステロールエステル(CE)の脂肪酸組成を5つの群に分けたときの糖尿病発症率比の関連です。上から飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸です。全体的に飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸が多くなるほど糖尿病発症が多くなっています。多価不飽和脂肪酸は逆に多くなるほど発症が少なくなっています。

特定の個々の脂肪酸も糖尿病と有意に関連していました。CEの個々の脂肪酸の中で飽和脂肪酸のパルミチン酸(16:0)では最も多い群で糖尿病発症が2.38倍でした。一価不飽和脂肪酸のパルミトレイン酸(16:1n−7)では1.72倍、多価不飽和脂肪酸のジホモ-ガンマ-リノレン酸(20:3n−6)の場合は 1.86倍でした。逆に、多価不飽和脂肪酸のリノール酸(18:2n-6)は最も多い群で0.46倍と逆相関でした。

リン脂質(PL)では、糖尿病の発症はパルミチン酸(16:0)とステアリン酸(18:0)の比率と正の相関がありました。

でも、食事の飽和脂肪酸が血症の飽和脂肪酸増加になることは、この研究では示していません。

何だかしっくりきません。通常の食事では脂肪酸の組成はどうなっているかは個人差があると思いますが、質の低い食事アンケートの研究によると、飽和脂肪酸36.5%、一価不飽和脂肪酸38.7%、多価不飽和脂肪酸15.1%となっていました。(ここ参照、図はこの論文より)

上の図のFFQという欄が食事アンケート結果です。次が血漿コレステロールエステル(CE)、その次がリン脂質(PL)です。飽和脂肪酸は食事で36.5%摂取しても、CEでは11.9%しか存在しませんし、逆にPLでは40.8%になっています。一価不飽和脂肪酸は食事で38.7%摂取しても、CEで18.8%、PLで9.9%しかありません。多価不飽和脂肪酸は15.1%しか食事で摂取していないのに、CEで65.2%、PLで42.7%にもなります。食事の摂取量や摂取割合が本当に血漿脂肪酸の割合に関連しているのでしょうか?

上の図は横軸が食事の飽和脂肪酸割合を5つの群に分けたもの、縦軸は血漿の飽和脂肪酸の割合です。例えば正常体重の男性では最も食事飽和脂肪酸が少ないで血漿飽和脂肪酸は11.3%くらいでしょうか?最も食事飽和脂肪酸が多い群では12.2%ぐらいかな?過体重の男性では最も食事で少ない群で11.8%くらい、最も食事で多い群でも12.3%くらいですね。つまり、食事による飽和脂肪酸の摂取割合の差によって、血漿の飽和脂肪酸割合は0.5~1%程度しか変化していません。しかもこのデータは質の非常に低い食事アンケートによるものであることを考慮すると、食事の飽和脂肪酸割合がそのまま血漿の飽和脂肪酸に関連しているとはどうしても思えません。

それになぜか、血中の脂肪酸の最も重要だと思われる中性脂肪の脂肪酸組成には全く触れていません。何か不都合があるのでしょうか?

では食事による脂肪酸の割合や量を変えたときの血漿の脂肪酸割合はどうなるでしょうか?それは次回以降で。

「Plasma fatty acid composition and incidence of diabetes in middle-aged adults: the Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study」

「中年成人における血漿脂肪酸組成と糖尿病の発生率:地域におけるアテローム性動脈硬化リスク(ARIC)研究」(原文はここ

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