糖質制限と骨粗しょう症

以前の記事「ケトン食は骨の健康に悪影響を与えるか?」ではケトン食と骨の健康について書きました。今回は他の糖質制限と骨粗しょう症の研究を見てみましょう。

腹部肥満の人65人(平均年齢51.3歳、BMI33.4)をエネルギー制限の超低炭水化物食(20g未満)と低脂肪食(脂質30%)に無作為に割り付け、12か月後の骨の健康を比較した研究があります。(ここ参照)

12か月後低炭水化物群で-14.5kg、低脂肪群で-11.7kg体重が減少しました。骨ミネラル量はどちらも変化しませんでした。両方の群で骨密度がわずかですが有意に減少しました。

骨血清クロスラップはどちらも増加しました。クロスラップは破骨細胞の活性を示すマーカーです。

低炭水化物と低脂肪食で骨の健康マーカーに差はありません。骨密度減少とクロスラップの増加は低炭水化物の影響とは言えません。もしかしたらエネルギー制限によるものかもしれません。

別の研究も見てみましょう。(この論文参照)2型糖尿病で、糖質制限をしている262人と標準治療87人の2年間の比較です。様々な耐糖能のデータは糖質制限で改善し、体重も減少しましたが、脊椎の骨密度は全く変化しませんでした。

他の研究です。低炭水化物食と低脂肪食を2年間摂取した比較です。この研究は低炭水化物食ではエネルギー制限をしていません。ただ、最初は20gまでの糖質制限でしたが、徐々に増やしていく食事介入なので、6か月よりも後では低炭水化物食と低脂肪食で尿中ケトン体の検査結果が陽性の割合は差がなくなり、低炭水化物食でも徐々に体重が戻ってしまっています。(図はここより)

上の図のhip bone mineral densityは股関節の骨密度、spine bone mineral densityは脊椎の骨密度です。どちらも2年間で大きな変化はありません。

もう一つ見てみましょう。20g/日の低炭水化物食と低脂肪食の比較です。ただし、この研究は14歳前後の肥満の子供対象です。(ここ参照)

上の図のbone mineral density(骨密度)を見ると、どちらのグループも13週目の数値はベースラインと変化していません。

さらにもう一つ、今度はトレーニングしている女性の研究を見てみましょう。

2年以上の継続的な筋トレ経験を持つ21⼈の⼥性(平均年齢27.6歳、BMI23.7)が、30〜40g/日の炭⽔化物摂取のケトン食群と非ケトン食群に分けられました。8週間で下の図のようになりました。(図はここより)

上の図のCは骨密度、Dは骨ミネラル量です。青が非ケトン食、オレンジがケトン食です。ケトン食群では非常にわずかですが有意に骨密度が増加しましたが、骨ミネラル量は減少傾向でした。非ケトン食では変化なしでした。

様々な研究が示しているのは、糖質制限で骨の健康に影響はなく、骨粗しょう症にはなりません。安心して糖質制限を行いましょう。

2 thoughts on “糖質制限と骨粗しょう症

  1. 「糖質制限で、筋肉が減る」
    など、有害性が様々流布されがち
    です。
    今回のようなご報告は心強いです。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限が有益なものだと困る人や企業も多いでしょうからね

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