鉄は不足することは良くありませんが、漫然と補充すると様々な有害なことが起きる可能性があります。通常、糖質制限をして赤肉をちゃんと食べていれば、鉄サプリを飲む必要なんてないと思います。
今回は鉄の腎臓への悪影響についてです。
糸球体濾過率(eGFR)が60未満の経口鉄補充をしている17,413人と、鉄補充をしていない対照32,530人を対象に、末期腎不全(ESKD)および死亡率との関連を調べました。平均年齢は全体で74歳、97%が男性です。追跡期間中央値1.9年で1,616人(3.2%)の患者がESKDを経験し、28,711人(57%)の患者が死亡しました。死亡率が高すぎますが、まあ見ていきましょう。(図は原文より、表は原文より改変)
ESKD | 全原因死亡率 | |
---|---|---|
PS オーバーラップ加重モデル | PS オーバーラップ加重モデル | |
SHR (95% CI) | HR (95% CI) | |
経口鉄摂取あり ( N = 17 413) | 1.00 (0.84、1.19) | 1.06 (1.01、1.11) |
経口鉄摂取なし ( N = 32,530) | 1 | 1 |
上の表は経口鉄によるESKDと死亡のリスクです。ESKDは鉄によりリスクは変わりませんが、死亡リスクはわずかに増加していました。
上の図は、慢性腎臓病が経口鉄を使用すると、何がESKDや死亡率に関連するかを示しています。慢性心不全がない場合、フェリチン100以上、トランスフェリン飽和度(TSAT)20%以上、ヘモグロビン10以上で経口鉄を使用すると、死亡率が増加します。特にヘモグロビン10以上では1.3倍です。つまり慢性腎臓病では、ヘモグロビンもある程度あり、フェリチンも100以上で、TSATも20%以上あるような、貧血も示していない状態で鉄を使用すると死亡率が増加するようです。
では、腎機能が正常な人で、鉄による新たな慢性腎臓病発生率はどうなっているでしょうか?同じチームが調べた別の研究を見てみましょう。
経口鉄剤療法の開始時にeGFR60以上でアルブミン尿がなかった経口鉄剤療法の新規ユーザー、33,894人と、経口鉄を使っていない112,780人を比較しました。全体の平均年齢は64歳、94%が男性です。平均追跡期間3.8年で、合計18,547人(13%)の患者がeGFRが60未満になり、16,117人(11%)の患者がアルブミン尿、尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)30mg/g以上を新たに発症しました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図のように、経口鉄の使用はeGFR60未満のリスク1.3倍、30mg/g以上のアルブミン尿の発症リスクを1.14倍にしました。
上の図は、経口鉄使用者の何が腎臓を悪くすることに関連しているのかを示しています。腎機能低下とアルブミン尿発生は、ほとんどどんな人に鉄を使用しても同じようにリスクを上げています。先ほどと同様に、フェリチンが100以上、トランスフェリン飽和度20%以上、ヘモグロビン10以上の人の方がアルブミン尿の発生リスクが少し高くなるようです。
また、追跡期間中の薬剤所持率が50%を超える、つまり長期に鉄を飲んでいる人の方が腎機能低下およびアルブミン尿発症のリスクは高く、eGFR60未満は1.65倍、アルブミン尿は1.3倍になりました。
鉄は老化物質であり、酸化ストレスを増加させ、経口鉄は腸内細菌叢を悪化させます。
健康のためだと思って鉄を飲んでいる人は、本当に健康に有益でしょうか?少なくとも通常の食事を摂っている人が鉄サプリを長期に飲むことは腎臓に有害である可能性があります。
「Association of oral iron replacement therapy with kidney failure and mortality in CKD patients」
「経口鉄補充療法とCKD患者の腎不全および死亡との関連性」(原文はここ)
「Association of iron therapy with incidence of chronic kidney disease」
「鉄療法と慢性腎臓病の発症との関連」(原文はここ)
清水先生、こんばんは。
鉄は余程の欠乏でなければ食事からだけで十分ですね。
鉄は存在形態が2価と3価があったように思います。効果や安全性がどうなのかは把握していませんが、そういう意味でも安易にサプリで補給はしない方がいいのかもしれません。
小林製薬の鉄剤飲んでましたが、
色々考えて、止めることにしました。
(自己責任で)