セカンドミール効果をやたら強調する専門家がいます。朝食を食べないと昼食時の血糖値の上昇が大きい、だから朝食は重要だと。その際朝食時の血糖値の変化は示されません。午後のおやつ、間食でももちろんセカンドミール効果があります。間食にどんなものを食べたら夕食時の血糖値が抑えられるか?ということを調べようとする意味がよくわかりません。なぜならその間食で血糖値が上昇してしまっているのですから、夕食時に血糖値の上昇が抑えられても、それが利益になるとは思えないからです。
今回の研究では、4種類の間食を食べて夕食時のセカンドミール効果で血糖値がどうなるかを調べています。提供はおやつで有名な「カルビー」です。論文の著者もカルビーの職員です。きっとカルビーのおやつは素晴らしい効果があるのでしょうね?
昼食を12時、夕食は19時に摂取し、その間に15時または17時に200kcalの4種類の間食を摂取しました。対象は男性8人、女性9人の健康な成人で、平均年齢は37.9歳 (範囲22~64歳)、BMIは21.4 (範囲 17.0~25.9) でした。
4種類のおやつは、揚げ黒豆(これかな?3月下旬で終売)、ポテトチップス(カルビーと言えばこれですね)、フルーツグラノーラ(これでしょうか?)、そして焼きいも(これかな?銘柄まではわかりませんが、サツマイモ専門の子会社かな)です。その栄養成分は下の表のようです。(図は原文より、表は原文より改変)
BB | PC | FG | SP | |
---|---|---|---|---|
おやつ | 揚げ黒豆 | ポテトチップス | フルーツグラノーラ | 焼き芋 |
重量(g) | 38.5 | 35.7 | 45.2 | 122.7 |
エネルギー (kcal) | 200 | 200 | 200 | 200 |
タンパク質(g) | 12.3 | 1.8 | 3.7 | 1.7 |
脂質(g) | 13.3 | 12.9 | 7.1 | 0.2 |
総炭水化物量(g) | 10.8 | 19.4 | 32.7 | 47.9 |
糖質(g) | 4.5 | 17.9 | 28.3 | 43.6 |
食物繊維(g) | 6.3 | 1.5 | 4.4 | 4.3 |
水溶性食物繊維(g) | 0.5 | 0.4 | 2.8 | 1.8 |
PFCバランス | ||||
タンパク質 (% エネルギー) | 25.0 | 3.7 | 7.1 | 3.4 |
脂質 (% エネルギー) | 58.7 | 57.0 | 31.4 | 0.9 |
炭水化物 (% エネルギー) | 15.1 | 37.8 | 61.6 | 92.6 |
上の表のようにおやつは200kcalで統一されています。なぜカロリーを統一したのかはよくわかりません。食後の血糖値を調べるのであれば、糖質を統一した方が良いと思いますが…
ちなみに昼食と夕食の栄養素は次の表のようです。
Lunch Contents | Hashed beef | Butter chicken curry | Beef curry | Cream stew |
Bread 6 slices Hashed beef Minestrone | Bread 6 slices Butter Chicken Curry Corn Soup | Bread 6 slices Beef curry Minestrone | Bread 6 slices Cream stew corn soup | |
Energy (kJ) | 2015/2723 | 2153/2861 | 2057/2765 | 2090/2798 |
Protein (g) | 17.2/23.1 | 15.2/21.1 | 16.6/22.5 | 20.9/26.8 |
Fat (g) | 17.1/19.7 | 23.2/25.8 | 19.1/21.7 | 21.1/23.7 |
Sugars (g) | 64.8/95.4 | 60.1/90.7 | 63.4/94.0 | 55.5/86.1 |
Dinner Contents | Hamburger steak | Cheese-in-hamburger steak | Fried chicken |
Rice, hamburger steak with demi-glace sauce, sauteed onions, omelet with tomato sauce, mashed potatoes, sauteed spinach and corn, broccoli, miso soup. | Rice, Cheese-in-hamburger steak, broccoli, sauteed spinach and bacon, potato salad, edamame and egg salad, vegetables in tomato sauce, corn soup | Rice, fried chicken, broccoli, sauteed konnyaku and carrot, okra and corn salad, fried Chinese cabbage and shiitake mushroom with starchy sauce, boiled spinach, cooked vegetables, miso soup | |
Energy (kJ) | 2622 | 2673 | 2673 |
Protein (g) | 21.9 | 20.8 | 21.1 |
Fat (g) | 15.9 | 18.2 | 19 |
Total Carbohydrates (g) | 94.1 | 93.0 | 90.6 |
– Sugars (g) | 87.5 | 82.6 | 83.6 |
– Dietary fiber (g) | 3.4 | 4.6 | 3.4 |
日によってメニューが違いますが、糖質は昼食で60g前後、夕食で85g前後です。
まずは下の図のように15時におやつを食べたときの血糖値変化です。血糖値の測定はフリースタイルリブレProなので、実際には血糖値ではなく、間質液のグルコース値です。
上の図は15時に間食を摂った場合です。NOは間食なしです。当然NO群はおやつの時間の血糖値上昇はありませんが、BB(黒豆)群も変化なしです。BBは糖質が最も少ない4.5gですから、これくらいでは反応しないようですね。次に糖質の少ないPC(ポテチ)群は少し血糖値上昇があります。
しかし、FG(フルーツグラノーラ)群とSP(焼きいも)群はおやつで血糖値の急上昇を起こしています。しかも、最も血糖値上昇が大きいSP群ではその後、血糖値が急降下してベースラインを下回ってしまっています。これは機能性低血糖を起こしそうです。
おやつの4時間後の夕食では、おやつでの血糖値変化が大きい方が血糖値上昇が少なくなっています。恐らくおやつですでにインスリンが大量に分泌されていて、それがベースラインに戻りきっていない状態なので、その分血糖値の上昇が抑えられたのでしょう。
図のCはおやつ後の2時間の曲線下面積で、Eは夕食後の5時間の曲線下面積です。おやつで曲線下面積が増加すれば、夕食でその分減るだけですね。
では、次に17時におやつを食べた場合を見てみましょう。そもそも夕食2時間前に焼いも食べるか?まあいいでしょう。
同じおやつなのに、17時に食べた方が血糖値の変化が大きくなっています。SP群なんておやつでかなり血糖値スパイクを起こしています。43.6gも糖質を含んでいるので当然ですね。絶食時間が長くなればなるほどこのように、糖質に対する血糖値変化は大きくなります。昼食後たった2時間の違いで、これほど大きく違います。NO群はおやつなしなので、絶食が7時間にもなりますので、当然、夕食後の血糖値が最も上がりやすくなっています。
そして、夕食はおやつの2時間後なので、大きく血糖値が上昇し、インスリン大量分泌が起きたであろうSP群は、夕食後の血糖値変化が非常に小さくなっています。
ちなみにおやつの代わりにブドウ糖59.1 gを摂取した場合は下の図のように、もっと血糖値スパイクが大きくなります。
上の図は間食後と夕食後の曲線下面積の合計を示しています。この研究をプラスに捉えるとすると、上の図は意味があるでしょう。おやつでFG群では28.2g、SP群では43.6gもの糖質を摂取したにもかかわらず、どのグループも合計は違いが無かったのです。つまり、おやつで血糖値が上がればその分夕食で血糖値の上がりが少なくなります。そして、それは合計の糖質量とはあまり関連していません。
恐らく絶食時間に応じて、インスリン抵抗性(インスリン感受性)が刻々と変化しているのでしょう。
セカンドミール効果を得るために、その前の食事やおやつであるファーストミールで血糖値を上げてしまう必要があるのでしょうか?結局は糖質を摂るたびに何度も何度も血糖値が上昇します。そして、恐らく昼食から間食、そして夕食後数時間の間、ずっとインスリンが分泌され続けてしまいます。
食事の回数を増やすと、このようなインスリンの持続的な分泌を起こすので、脂肪がエネルギー源になりにくくなってしまいます。
上の図は血糖値の変動幅と、どの範囲に血糖値があるかの時間分布です。15時おやつではFGとSPの血糖値変動幅が有意に小さく、17時おやつではPCとFG群が変動幅が小さくなっています。また、血糖値が140を超える時間も15時おやつではSP群で最も短く、17時おやつではPC群が最も短くなっています。
これらの結果より、おやつは血糖値の変化を抑制して、健康効果をもたらすと思いますか?カルビーはそう考えたいのでしょうね。
上の図は間食の栄養素と夕食の曲線下面積との相関を示しています。 15時のおやつでは、タンパク質と脂質は正の相関を示し、炭水化物は負の相関を示しました。炭水化物を分析するために、糖質と食物繊維の相関関係も調べました。糖質は負の相関を示しました。つまり、間食で糖質をたくさん摂るほど夕食後の血糖値の曲線下面積が低下します。間食によるインスリン分泌が影響するのでしょう。食物繊維は相関を示さなかったのですが、食物繊維の中でも、水溶性食物繊維は負の相関を示しました。
上の図は17時のおやつについてです。15時のおやつと同様です。タンパク質と脂質は正の相関を示し、炭水化物は負の相関を示し。糖質は負の相関を示しました。 食物繊維は正の相関を示し、水溶性食物繊維は負の相関傾向を示しました。
カルビーは水溶性食物繊維を推したいのでしょうか?
インスリン抵抗性が高くなった人では、上のような結果にはならない可能性があります。また、糖尿病だともっと悲惨な結果になってしまうでしょう。
水溶性食物繊維を摂るために糖質を含んだ食材、おやつは必要ありません。納豆でもゴマでも海藻でも良いはずです。糖質制限を反対する人は糖質制限をすると食物繊維が少なくなると言いますが、全く別の食材から摂れば良いので問題ありません。
セカンドミール効果を強調する人は、糖質摂取が重要だという考えから抜け出せていません。そして意図的にファーストミールの効果を無視することにより、セカンドミールの有益性を唱えるのです。糖質制限をすれば、ファーストミールもセカンドミールもどちらも血糖値スパイクは起きません。
「Effects of intake of four types of snack with different timings on postprandial glucose levels after dinner」
「4種類のおやつ摂取の異なるタイミングが夕食後血糖値に与える影響」(原文はここ)
話題のギャンブル依存症も、
何かと自己正当化して、
ギャンブルがやめられない
のと同様、
セカンドミール云々も、
糖質依存症の方の
自己正当化なのでしょうか?