糖尿病の人は一般の人より 2~4倍も死亡リスクが高くなっています。HbA1c、LDLコレステロール、アルブミン尿、喫煙、血圧などの要因をどの程度制御すれば、糖尿病に関連した過剰な死亡リスクを排除できるのでしょうか?
今回の研究では18,535人の糖尿病患者と、ベースラインでがんや心血管疾患を持たない糖尿病ではない91,745人の人を対象とし、2006年から2021年まで追跡調査した。HbA1c7.1%(53mmol/mol)未満、収縮期血圧140mmHg未満および拡張期血圧90 mmHg未満、アルブミン尿なし、非喫煙、LDLコレステロール97mg/dL(2.5mmol/L)未満をコントロール良好として、危険因子制御の程度と全原因死亡率、がん死亡率、心血管疾患死亡率およびその他の死亡率との関連を調査しました。タバコ以外、LDLコレステロールはどっちとも言えませんが、他の3つは糖質過剰摂取と結びついています。
18,535人の糖尿病患者のうち、コントロールできている危険因子が1個以下、2、3、4、5個であったのはそれぞれ6.2%、21.1%、36.9%、28.0%、7.8%でした。下の表はコントロールできている危険因子の数によるそれぞれの死亡率の比です。危険因子が0または1個の人を基準にして、5つ危険因子がコントロールできていると全原因死亡率は半分になります。(図は原文より、表は原文より改変)
結果 | 危険因子が 1 つ以下 | 2 つの危険因子 | 3つの危険因子 | 4つの危険因子 | 5つの危険因子 | 1 つあたりのリスク要因コントロール |
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全原因死亡率 | ||||||
多変数モデル | 1.00 | 0.70 (0.60–0.82) | 0.59 (0.51 ~ 0.69) | 0.51 (0.43 ~ 0.59) | 0.50 (0.41 ~ 0.62) | 0.84 (0.80–0.87) |
がんによる死亡率 | ||||||
多変数モデル | 1.00 | 0.96 (0.73–1.28) | 0.82 (0.62–1.07) | 0.70 (0.53 ~ 0.94) | 0.77 (0.53–1.10) | 0.90 (0.84 ~ 0.96) |
心血管疾患による死亡率 | ||||||
多変数モデル | 1.00 | 0.55 (0.42 ~ 0.73) | 0.46 (0.35 ~ 0.60) | 0.46 (0.35 ~ 0.61) | 0.26 (0.16 ~ 0.43) | 0.79 (0.73–0.86) |
その他の死亡率 | ||||||
多変数モデル | 1.00 | 0.74 (0.58 ~ 0.95) | 0.66 (0.52~0.84) | 0.50 (0.39 ~ 0.65) | 0.62 (0.44 ~ 0.87) | 0.85 (0.80–0.91) |
下の図はそれぞれの死亡の累積の死亡率です。
もちろんコントロールできている因子が少ない方が死亡率は高くなっていきます。
上の図は非糖尿病との比較です。コントロール因子が1以下の場合、全原因死亡率は2.32倍、がん死亡率は1.4倍、心血管疾患死亡率は3.95倍、その他の死亡率は2.5倍です。逆に多くの因子が制御されていると死亡率は非糖尿病の人とほとんど変わらなくなります。
上の図は糖尿病患者の死亡リスクに関する危険因子の相対的な重要性を示しています。全原因死亡との最も強い関連性を示す3つの危険因子は、アルブミン尿、喫煙、降圧薬の使用でした。アルブミン尿は、全原因死亡率、心血管疾患死亡率およびその他の死亡率のリスクと最も強い関連性を示しました。喫煙は、全原因死亡率の2番目に強力な因子、がん死亡率については最も強力な因子、心血管死亡率については3番目に強力な因子、その他の死亡率については10番目に強力な因子です。
降圧薬の使用が危険因子であるというのは非常に興味深いですね。他の研究で糖尿病の収縮期血圧が140mmHg未満の場合、降圧薬によるさらなる治療は心血管死のリスク増加と関連しています。(ここ参照)その他にも糖尿病薬に使用も全原因死亡の4番目、心血管疾患死亡およびその他の死亡の5番目に強力な因子です。もちろん、薬を使用しなければならないほど重症なのかもしれませんが、薬を使用していれば死亡率を低下させられるというのも疑問があるかもしれません。
もっと興味深いのは、LDLコレステロールの重要性の低さです。5つの危険因子の中にLDLコレステロールが含まれているにも関わらず、全原因死亡では最下位の17番目、ぞの他の死亡では16番目とほとんどゼロに等しいです。またがん死亡の8番目ですが、最も関係が深くないと困る心血管疾患死亡では、なんと14番目です。つまり、LDLコレステロールなんて重要性がかなり低く、気にしても仕方がないのです。
アルブミン尿の重要性の高さが非常に高いですが、恐らくアルブミン尿が制御できなければ、様々な全身の有害性が起きるほど重症だと考えられます。つまり、アルブミン尿は死亡リスクのマーカーにもなり得るものでしょう。
アルブミン尿は糖質過剰摂取で増加すると考えています。(「アルブミン尿は糖質過剰摂取で増加する その1」「その2」「その3」「その4」「その5」参照)
糖尿病の人に最も重要なことは糖質を制限することです。糖質制限で死亡リスクの危険因子を低下させましょう。
「Degree of joint risk factor control and hazard of mortality in diabetes patients: a matched cohort study in UK Biobank」
「糖尿病患者における関連する危険因子制御の程度と死亡の危険性:英国バイオバンクのマッチドコホート研究」(原文はここ)
いつも、貴重なご報告、
とても面白く、健康の維持に
(もちろん自己責任で)
活用しております。
ランナーズに、キプチョゲ選手と
弓削真理子さんの対談掲載あり、
キプチョゲ選手は
「炭水化物はエネルギー」
と、その有用性を強調してました。
やはり、健康的な生活と、
トップアスリートの生活習慣では、
矛盾が出てくるのでしょうか。