みなさんも多くの人は尿検査をしたことがあると思います。尿検査でタンパク尿を指摘されたこともあるかもしれません。でも、アルブミン尿までは測定したことがある方は少ないでしょう。保険適応としては、「糖尿病又は糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期又は第2期のものに限る。)」となっていますので、糖尿病の人以外では通常測定しません。
一応、アルブミン尿を測定して、糖尿病性腎症を早期発見、早期治療で透析するような末期腎不全患者を減らそうということだと思います。
まずは日本人のアルブミン尿の有病率です。アルブミン尿は正常<30、微量アルブミン尿30~299、顕性アルブミン尿≧300mg/日です。尿中アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)を一般的には用います。(この論文参照)
上の図は日本人2,321人(平均年齢64歳、男性1,034人、女性1,287人)のアルブミン尿のデータです。黒い部分が顕性アルブミン尿、グレーが微量アルブミン尿です。左のaが男性、右のbが女性です。どちらも年齢と共にアルブミン尿の有病率が高くなっています。40~50代でも10%前後の有病率がありますね。全体では微量アルブミン尿13.7%、顕性アルブミン尿1.7%を認めました。意外と多いのかな?アメリカのデータでは20代や30代でも5%前後の有病率です。
尿中のアルブミンが多いと様々な疾患でどれほどリスクが上がるのでしょうか?このPDFがまとまってわかりやすいので、その図を使わせていただきます。
上の図は尿中アルブミン/クレアチニン比と心血管疾患による死亡の関係です。正常範囲ではありますがアルブミン尿が5mg/gCrを基準とすると10mg/gCrでもすでにリスクは高くなり、正常範囲の上限30だとリスクが2倍近い状態です。300を超えると2倍以上になっています。アルブミン尿は少ないほどリスクが低下します。
上の図は一般の人と慢性腎臓病(CKD)のリスクの高い人での尿中アルブミン/クレアチニン比と末期の腎不全の関係です。どちらも同じようにアルブミン尿がどうかすると、リスクが増加します。10mg/gCrを超えると急激にリスクが増加しています。このように見ると、正常範囲が30未満というのは明らかにおかしいですね。せいぜい10未満とすべきでしょう。
上の図は尿中アルブミン/クレアチニン比減少率と末期の腎不全の関係です。当然、減少すればするほどリスクは低下し、増加するほどリスクは増加します。
ではやはり、アルブミン尿を減少させる必要があります。というよりも、どうしてアルブミン尿が増加するのかを考えなければなりません。
さあ、私が言いたいのはもちろん、糖質過剰摂取が一番の原因です。
糖尿病性腎症は、高血糖がなければ、遺伝的素因があっても発症しないと考えられています。高血糖は、直接または血行動態の変化を通じて腎障害を引き起こします。プロテインキナーゼ C の活性化、高度なAGEs(終末糖化産物)の生成の増加になどにより、腎臓の構造変化を起こします。
では糖質制限でアルブミン尿が減るのでしょうか?それについては次回以降で。
「Pathogenetic mechanisms of diabetic nephropathy」
「糖尿病性腎症の発症メカニズム」(原文はここ)