「その1」「その2」「その3」「その4」の続きです。今回もちょっとエビデンス的には非常に弱いです。しかし、実験上で示されているメカニズムから考えて、十分に考えられる根拠だと思っています。
糖質の中でも最も猛毒は果糖です。その果糖の摂取量とアルブミン尿の関連を見てみましょう。
ただし、いつも指摘しているように、食事アンケートのデータなので、質は非常に低いです。
対象は平均年齢59歳の2型糖尿病136人です。糖尿病歴の中央値は16年で、過去3か月間のアルブミン尿測定値が0~6,000 mg/日でした。果糖の摂取量が少ないグループ(25g/日未満)と果糖摂取量が多いグループ (5g/日)以上に分けられました。果糖摂取量の中央値は、低果糖摂取量群で14.3g/日、高果糖摂取量群で36.4g/日でした。
変数 | 全て | 低果糖摂取量群 | 高果糖摂取量群 |
---|---|---|---|
年齢、年数 | 59±8.79 | 59±9.46 | 59±7.41 |
2型糖尿病の家族歴 | 119、87.5% | 79、87.8% | 40、87% |
糖尿病の罹患期間、年数 | 16.5±7.8 | 16±8 | 17±7 |
現在の喫煙 | 25、18.4% | 16、17.8% | 9、19.6% |
平均血圧、mmHg | 90.9±12.6 | 90±13.26 | 92±11.4 |
BMI | 29.6±4.2 | 29.8±4.2 | 29.3±4.2 |
腹囲、cm | 100.8±11.3 | 100.4±10.8 | 101.6±12.4 |
体脂肪、 % | 32.7±8.2 | 33.8±7.6 | 30.4±9 |
血糖値、mg/dL | 154.8±64.0 | 151.9±61.34 | 160.4±69.45 |
HbA1c、% | 8.9±1.8 | 8.6±1.61 | 9.6±2.1 |
クレアチニン、mg/dL | 0.95[0.74-1.2] | 1.08±0.93 | 1.25±0.74 |
BUN、mg/dL | 17.0[14-23.8] | 19.6[13.6-21.3] | 24.6[15.5-27.6] |
尿酸、mg/dL | 6.6±1.8 | 6.27±1.8 | 7.2±1.5 |
総コレステロール、mg/dL | 173±38.4 | 167.2±33.3 | 186.5±44.4 |
中性脂肪、mg/dL | 142.5[104.2~189.7] | 162.3[101.2-195.5] | 166.6[112.5-180.7] |
LDLコレステロール、mg/dL | 96.7±32.0 | 91.5±28.7 | 106.6±35.9 |
HDLコレステロール、mg/dL | 45.9±11.4 | 45.1±10.6 | 47.5±12.7 |
クレアチニンクリアランス、mL/分 | 88.3±35.8 | 94.9±36.8 | 76.5±30.9 |
アルブミン尿、mg/日 | 87.3 [16.4-385.5] | 60.8 [12.8-228.5] | 232.2 [27.2 1273.0] |
インスリンの使用 | 106、77.9% | 64、71.1% | 42、91.3% |
インスリン投与量、U/kg | 40 [24-53.2] | 43.6[24.2-56.7] | 40.1[22.7-51.7] |
高果糖群の方が血糖値がやや高く、HbA1cが高く、腎機能のクレアチニンやBUN、尿酸がやや高く、クレアチニンクリアランスは低く、アルブミン尿が多くなりました。
下の図は横軸が果糖摂取量、縦軸が尿アルブミン量です。
果糖摂取量が多いほど尿のアルブミンが多い傾向はあります。
上の図はアルブミン尿が30~3500mg/日の人だけの関連を示しています。全体の人よりも関連が少し強まりました。
尿アルブミン量が30~3500mg/日の人におけるアルブミン尿に関連する変数の重回帰分析を行うと、果糖摂取量とアルブミン尿の間に有意かつ独立した関連性があることがわかりました。
糖尿病は糖質過剰摂取で解糖系が亢進しているので、ポリオール経路が活性化しています。腎臓の近位尿細管では、ポリオール経路でブドウ糖から代謝されたソルビトールは果糖に変換され、その後フルクトキナーゼによって主に代謝され、ATPの枯渇、炎症誘発性サイトカインの発現、酸化ストレスを引き起こします。ネズミさんの実験ではありますが、糖尿病のマウスで内因性果糖生成により、タンパク尿、糸球体ろ過量の低下、糸球体および近位尿細管損傷を発症しました。さらに、マクロファージ浸潤に伴う炎症性サイトカインの腎臓での発現が顕著でした。対照的に、糖尿病のフルクトキナーゼ欠損マウス、つまり内因性果糖を作れないマウスでは、タンパク尿、腎機能障害、腎損傷、炎症が大幅に減少しました。(ここ参照)
果糖が腎毒性を示し、アルブミン尿を増加させることは十分に考えられます。
さて、もう一つ、塩分について見てみましょう。270人の血圧の薬を飲んでいない糖尿病の人を1日の塩分摂取量で4つのグループに分けました。それぞれの塩分摂取量は8g未満、8~10g、10~12g、12g超です。塩分摂取量は尿中のナトリウム排泄量から推定されています。
上の図は1⽇の塩分摂取量の4つのグループと尿アルブミン(の対数)との関係です。塩分摂取量が少ない2つのグループの方が1日あたり塩分摂取量10〜12gグループよりもアルブミン尿が多くなり、アルブミン尿の可能性は3~4倍でした。
過度の塩分制限は、主にレニン活性の増加を介して、アンジオテンシンやアルドステロンのレベルの増加につながります。 さらに交感神経系の亢進やインスリン抵抗性も増加させます。それらがアルブミン尿を促進している可能性があります。
3食しっかりとバランスの良い食事による糖質過剰摂取、特に果糖の過剰摂取、塩分控えめなどの食事がアルブミン尿を増加せている可能性があります。そうだとしたら、我々は何をさせられているのでしょうか?
アルブミン尿を低下させる食事、それは糖質制限でしょう。
「A Higher Fructose Intake Is Associated with Greater Albuminuria in Subjects with Type 2 Diabetes Mellitus」
「2型糖尿病患者における果糖摂取量の増加はアルブミン尿の増加と関連している」(原文はここ)
「Low daily salt intake is correlated with albuminuria in patients with type 2 diabetes」
「1日の塩分摂取量が少ないと、2型糖尿病患者のアルブミン尿と相関がある」(原文はここ)