多くの人がただ単にLDLコレステロールが高いという理由でスタチンという薬を飲まされています。このスタチンは筋肉障害が高率に起きます。
今回の研究では、アトルバスタチンを80mg/日という高用量で使用した場合の、筋肉のミトコンドリア呼吸能力を分析しています。日本では通常アトルバスタチンは、高コレステロールでは最大20mg、家族性高コレステロール血症でも最大40mgまでなので、今回の研究の量はかなり多い量ではあります。(図は原文より)
上の図のように対象は平均年齢36.2歳、平均体重97.5kg、平均BMI31.9、平均LDLコレステロール120mg/dLの非活動的な女性4名、男性4名です。56日間スタチンを使用し、LDLコレステロールは64.4まで低下しました。
筋肉損傷のマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK)は88から149.5まで増加しています。
上の図のAに示すように、トレッドミルテスト中の全身の最大有酸素能力(VO2max)は、8週間のアトルバスタチンによって平均すると有意な影響を受けませんでしたが、Bに示すように個人の反応にはばらつきがあり、8人中3人は変化がないかわずかな増加(+1.1%)を示し、8人中5人はVO2maxが–4.3~–16.5%の低下を示しました。
Cはインスリン感受性ですが、8人中6人は、アトルバスタチンの56日間後にインスリン感受性の低下を示しましたが、女性2名は意図せず体重が減少し(3~5kg)、インスリン感受性がわずかから中程度増加しました。
図のDEFの詳細は省略しますが、筋肉の酸化能力の低下を示しています。
骨格筋ミトコンドリアの酸化的リン酸化能力が30%~38%減少しました。
上の図は参加者の骨格筋を筋生検して得られた骨格筋を使った実験です。BDFHに示すように、ミトコンドリア複合体のうち、複合体I およびIIは活性が変化しませんでしたが、複合体IIIおよびIV はアトルバスタチンにより用量依存的に阻害されました。しかも、アトルバスタチンが0.1mM(100μM)へのin vitroでの曝露は複合体IIIを25%未満阻害しましたが、もっと低い濃度0.01μM(10nM)で複合体IVを50%以上阻害するのに十分でした。
もちろん今回の研究は非常にサンプル数が少ないのは問題です。そして、日本では使用されていないアトルバスタチン量を使用しています。しかし、実験的には非常に低濃度のスタチンでもミトコンドリアの呼吸能力は大きく低下しています。恐らくスタチンは骨格筋ミトコンドリア機能の進行性かつ顕著な低下を誘発し、ミトコンドリア複合体IVの直接阻害が主な作用機序である可能性があると考えられます。骨格筋のミトコンドリア機能の低下は、全身の有酸素能力の低下をもたらす可能性があります。
スタチンはミトコンドリア毒性のある薬です。ミトコンドリアはエネルギー工場なので非常に重要です。
コレステロールの数値ばかりに囚われても健康にはなれません。ミトコンドリアの健康なしに人間の健康はあり得ないでしょう。
「High-dose atorvastatin therapy progressively decreases skeletal muscle mitochondrial respiratory capacity in humans」
「高用量のアトルバスタチン療法はヒトの骨格筋ミトコンドリア呼吸能力を徐々に低下させる」(原文はここ)