日本人のインスリン分泌能は低いのか?

夏井先生のブログの今日(6月26日)の記事で、「「日本人」、じつはインスリンの分泌量が「白人の半分から4分の1」しかなかった…!・・・との記事(記事はここ)ですが。この元となる論文が見つかりません。」…どなたか御存知ですか?」とあったので、ちょっと急いで記事にしてみました。(図は原文より)

上の図は欧米人(コーカサス人)と日本人のOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)でのインスリン分泌の推移を示しています。正常耐糖能 (NGT)、耐糖能障害 (IGT) 、糖尿病(DM)とに分けています。横軸がブドウ糖負荷後の時間で縦軸がインスリン値です。欧米人のIGTのインスリン値はNGTと⽐較して上昇し、糖尿病患者では低下しています。しかし、⽇本⼈のIGTのインスリン値はNGTと⽐較して低下し、糖尿病患者でより強いインスリン値の低下が⾒られました。

インスリンの推移を見ても、欧米人のNGTおよびIGTでは、OGTTでブドウ糖負荷後120分値でも右肩上がりで増加しています。糖尿病では60分でピークとなりその後低下しています。しかし、日本人ではどのグループも60分から90分でピークとなりその後減少しますが、ピーク値が欧米人とは大きく違い、NGTでは欧米人の半分とは言えないまでもかなり低めです。そして120分の曲線下面積は計算されていませんが、どのグループでも欧米人よりも日本人の方がかなり少なくなっています。

欧米人ではIGTの段階、つまり明らかな糖尿病になる前の段階では、インスリン分泌の増加がインスリン抵抗性を補い、IGTから糖尿病への耐糖能障害の進⾏過程でインスリン分泌の減少が始まると考えられています。しかし⼀⽅、⽇本⼈のIGTではインスリン分泌の減少が既に認められ、IGTから糖尿病への進⾏にはより強いインスリン分泌の減少が関与していると考えられています。

上の図はNGTからIGTを経て糖尿病(DM)に⾄るHOMA-IRとインスリン分泌指数(ブドウ糖負荷後30分の血中インスリン増加量を血糖値の増加量で割った値で、インスリン追加分泌のうち初期分泌能の指標)の平均値の変化です。●が日本人で黒い菱形が欧米人です。

NGTからIGT、糖尿病になるにつれHOMA-IRは増加していますが、欧米人と比較して、日本人の方がなだらかですし、数値も低めです。インスリン分泌指数はもっと差があり、NGTの時点でもかなり日本人の方が低めです。

これらのことより、恐らく日本人はインスリンの分泌量が白人の半分から4分の1しかなかった、と言っているのではないでしょうか?

また、別の研究では次に図のようです。(図は原文より)

上の図はNGT、IGT、糖尿病のOGTTによる血糖値、インスリン値、C-ペプチドの推移です。先ほどの研究と同様に、確かにインスリン値およびC-ペプチドは欧米人よりも日本人の方が低くなっています。先ほどと違うのは、欧米人のIGTのインスリンのピークが90分で表れていることくらいでしょうか?

いずれにしても、日本人は一般的には欧米人よりはインスリン分泌が少ないように思えます。しかし、最近の日本人の肥満の増加を見ると、日本人でもかなりインスリン分泌が多い人も多くなってきたのではないかと思います。

 

「Insulin secretion capacity in the development from normal glucose tolerance to type 2 diabetes」

「正常耐糖能から2型糖尿病への発達におけるインスリン分泌能」(原文はここ

「Ethnic differences in insulin sensitivity, β-cell function, and hepatic extraction between Japanese and Caucasians: a minimal model analysis」

「日本人と白人のインスリン感受性、β細胞機能、肝臓抽出における民族的差異:最小モデル分析」(原文はここ

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