脳細胞の代謝の調節不全は、肥満および2型糖尿病とアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患と関連があると考えられています。そして、脳はどの臓器よりもブドウ糖(グルコース)を消費します。
通常であれば、血中のグルコース、つまり血糖値が上がれば、脳のグルコースも上昇します。
今回の研究では血漿グルコースを220mg/dlになるように調節して、その時に脳のグルコースがどのようになるかを2時間調査しました。肥満の人は平均のBMIが38.9です。2型糖尿病の人はコントロールが不良で、平均のHbA1cは9.5でした。結果は下の図です。(図は原文より改変)
(A)平均血漿グルコースレベル
(B)血漿グルコースの平均変化(時間60~120分の間)
(C)時間の経過に伴う脳内グルコース濃度の平均変化
(D)脳内グルコース濃度の平均変化(60〜120分の間)
血漿のグルコースはどの群でも同じですが、肥満の群は脳のグルコースの変化が減少しています。さらに2型糖尿病群ではその減少の程度が大きくなっています。
恐らく、グルコースは脳においてはGLUT1というものを介して脳に取り込まれるのですが、高血糖に頻繁にさらされていることにより、そのGLUT1がダウンレギュレーション(数が少なくなって機能が低下する)して、脳に取り込まれるグルコースが減ってしまったと考えられます。また、肥満によっても脳のグルコースが低下しているのは、やはりインスリン抵抗性でしょう。
また、今回の研究では、脳のグルコース値と満腹感が関連していることが認められました。逆に言えば、脳のグルコース値が上がらないことにより、肥満や糖尿病の人は食後の満腹感が得られずに、過食してしまうという悪循環になる可能性があります。
さらに、脳が利用できるグルコースの低下により、アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患になってしまうリスクが上がることが考えられます。認知症のなると非常に甘いものを欲しがる傾向があるように感じます。脳はグルコースを求めているのに、脳の中にグルコースが入ってこない、またはうまくグルコースを利用できないから、どんどん甘いものを食べようとすると考えられます。
ケトン体が脳で利用できれば、このグルコースに変わって脳のエネルギーとなるので、糖質制限やケトン食などは神経変性疾患の予防や改善に非常に有効だと考えられます。
アルツハイマー型認知症は症状が現れるまでに20年くらいかかると言われています。つまり、40代ぐらいからもう始まっています。40歳を過ぎたら「スーパー糖質制限食」を皆さんが実行すれば恐らく認知症は8割減少するでしょう。
「Blunted rise in brain glucose levels during hyperglycemia in adults with obesity and T2DM」
「肥満とT2DMを有する成人の高血糖時の脳内グルコースレベルの鈍化」(原文はここ)