ヨーロッパ42か国の大規模なデータは脂肪と心血管疾患の関連を明確に否定している

以前の記事「簡単に言えば、脂肪は「善」、糖質(炭水化物)は「悪」」で書いたPURE試験は2017年に最もインパクトのあった論文です。この1年間で約220万の研究が発表されたようですが、その中で最もよく議論されたトップ100が選ばれ、その中でPURE試験の論文が堂々のナンバー1に選ばれました。

もうこの研究抜きでは栄養と心血管疾患のリスクは議論できないでしょう。

PURE試験の結果と同じですが、2016年の論文ですが、ヨーロッパ42か国の大規模なデータでは、非常に面白い関連性が認められます。(図は全て原文より)

 

まずは、男性での動物性脂肪と動物性タンパク質を合わせた消費とコレステロール上昇が起きている割合です。非常にきれいなグラフです。動物性脂肪および動物性タンパク質の消費はコレステロール上昇と非常に強く関連しています。知識がアップデートされていない人はこれを見ると、「やっぱり動物性脂肪や動物性タンパク質はコレステロールを上昇させるから、健康に悪いんじゃないか!」と思うでしょう。

次は、男性のポテトと穀類の炭水化物のエネルギーの割合とコレステロール上昇が起きている割合の関連です。

これもまた、ポテトと穀類の割合が高いほど、コレステロールが高くなる割合が低くなります。知識がアップデートされていない人はこれを見ると、「やっぱり糖質が少ないとコレステロールを上昇させるから、健康に悪いんじゃないか!」と思うでしょう。

次は女性での血圧上昇の割合とコレステロール上昇の割合の関連です。

コレステロールが高い割合が高いほどほど血圧上昇の割合が低いという関連がわかります。つまり、コレステロールは高いほど血圧が低いと考えられます。これは古い知識とは反対ですね。

次は、女性の実際の心血管疾患の死亡率とコレステロール上昇の割合の関連です。

コレステロール上昇の割合が高いほど、心血管疾患の死亡率は低くなります。これも、古い知識とは反対です。コレステロールの上昇は心血管疾患の死亡リスクを低下させると考えられます。

次は、女性の全脂肪と動物性タンパク質の摂取量と血圧上昇の割合との関連です。

脂肪とタンパク質の量が多いほど、血圧上昇の割合が低いです。脂肪も動物性タンパク質も血圧上昇を抑えると考えられます。

次は、女性の全脂肪と動物性タンパク質の摂取量と血糖値の上昇の割合との関連です。

これも先ほどと同じように、脂肪とタンパク質の量が多いほど、血糖値上昇の割合が低いです。脂肪も動物性タンパク質も血糖値上昇を抑えると考えられます。当たり前ですね。糖質が少ない方が血糖値は低くなります。

次は、女性の全脂肪と動物性タンパク質の摂取量と実際の心血管疾患の死亡率との関連です。

これもまた、脂肪とタンパク質の量が多いほど、心血管疾患での死亡率が低いです。脂肪も動物性タンパク質も心血管疾患の死亡リスクを抑えると考えられます。もうここまでくると、古い考え方はどっかに行ってしまった感じです。脂肪摂取量も動物性タンパク質も心血管系には有益としか考えられません。

次は、女性の炭水化物とアルコールのエネルギーの割合と血圧上昇の罹患率との関連です。

糖質(炭水化物)とアルコールを合わせたエネルギーの割合が高いほど血圧上昇が多くなります。

次は、女性の炭水化物とアルコールのエネルギーの割合と血糖値上昇の罹患率との関連です。

これはもう説明不要ですね。糖質が多いので血糖値は上昇するのが当たり前です。

次は、女性の炭水化物とアルコールのエネルギーの割合と実際の心血管疾患の死亡率との関連です。

もう疑いようがありません。糖質とアルコールが多くなれば、心血管疾患の死亡リスクは高くなります。

次は、男性での喫煙率と実際の心血管疾患の死亡率との関連です。

確かに、喫煙率が上がると心血管疾患での死亡率は上がりますが、栄養との関連よりは関連性が弱くなっています。

次は、女性での喫煙率と実際の心血管疾患の死亡率との関連です。

これは意外にも、弱いですが男性と逆の関連性です。女性はタバコに対して強いのでしょうか?理由はよくわかりません。

次は、男性の実際の心血管疾患の死亡率とBMIの関連です。

これも意外や意外、BMIが高いほど死亡率が低くなります。ただ、全体の平均でのデータなので、個人のBMIと心血管疾患の死亡率の関連を見た場合、BMIが30以上の肥満では違う関連性、つまりBMIが高いほど心血管疾患の死亡率は高くなるのではと考えられます。BMIは体重と身長だけで求めるので、筋肉質の男性では高めに出てしまいます。恐らく個人のデータではBMIとの関連はU字型の曲線を描くのだと思います。

次は、女性の実際の心血管疾患の死亡率とBMIの関連です。

これは順当にBMIが高いほど心血管疾患の死亡率が高くなります。ただ、データはかなりばらけています。

次は、女性での植物油の摂取量と血圧上昇の罹患率との関連です。

植物油の摂取量が多いほど血圧は上がりにくいようです。血圧だけを見ると植物油の摂取は問題ないのでしょうか?この植物油のメインはヒマワリ油のようです。この理由ははっきりしません。

次は、女性の動物性脂肪摂取量と血圧上昇の罹患率の関連です。

もちろんこれは動物性脂肪をたっぷり摂った方が血圧上昇が抑えられます。

最後に女性の全脂肪摂取量と血圧上昇の罹患率の関連です。

当然、全脂肪は動物性脂肪と同じように血圧上昇を抑えます。

様々なデータを示しましたが、心血管疾患のリスクは糖質(炭水化物)、アルコールで上昇し、脂肪やタンパク質で低下することが明確にわかります。動物性脂肪および動物性タンパク質の摂取量が増加するとコレステロール上昇と関連するのですが、実際の心血管疾患のリスクは低下するのです。合わせて考えれば、コレステロールの上昇は心血管疾患のリスクを低下させると考えられます。

もう古典栄養学とはさようならをしましょう。これからはたっぷりの脂肪とタンパク質を摂り、糖質制限をしましょう。

 

「Food consumption and the actual statistics of cardiovascular diseases: an epidemiological comparison of 42 European countries」

「食物消費と心血管疾患の実際の統計:42のヨーロッパ諸国の疫学的比較」(原文はここ

要約

背景:この生態学的研究の目的は、国際統計の比較に基づいて、ヨーロッパにおける心血管疾患の罹患率に関連する主要な栄養因子を特定することであった。

デザイン:FAOSTATデータベース(1993~2008)からの62食品の平均消費量を、ヨーロッパ42カ国の5つの心血管疾患指標の実際の統計と比較した。他のいくつかの外因性要因(医療費、喫煙、BMI)および結果の歴史的安定性も検討した。

結果:検査された要因のいくつかの間に非常に強い関係が認められた。最も高いのは男性のコレステロール上昇と動物性脂肪および動物性タンパク質を合わせた消費の間の相関である。心血管疾患リスク低下の最も重要な食事との相関は、動物性脂肪および動物性タンパク質の総消費量が高いことであった。追加の統計分析では柑橘類、高脂肪乳製品(チーズ)およびナッツによりさらに強調された。他の非食事要因の中では、医療費は最も高い相関係数を示していた。心血管疾患の高リスクの主要な相関は、炭水化物とアルコール、またはジャガイモと穀類の炭水化物からのエネルギーの割合であった。同様のパターンは、1980~2000年の食物消費と心血管疾患の統計との間で観察され、これらの関係は時間の経過の間ずっと安定していることが示されている。しかし、1980年と1990年の男性の心血管疾患の統計的な矛盾を認めたが、その後の数十年間に公衆衛生政策に影響を与えた「飽和脂肪仮説」の起源を説明することができたことがわかった。

結論:我々の結果は、公式の食事ガイドラインに含まれている心血管疾患と飽和脂肪との関連を支持していない。代わりに、心血管疾患リスクと炭水化物ベースの食事の高グリセミックインデックスや高グリセミックロードとを結びつける最近の研究から蓄積されたデータに一致する。飽和脂肪を心血管疾患と結びつける科学的証拠がないので、今回の知見は、心血管疾患に関する現在推奨されている食事が真剣に再考されるべきであることを示している。

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