糖尿病のSGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬は本当に使用が増加していますね。どんどん、これらの有益な効果の宣伝となるエビデンスが出てきています。気持ちが悪いくらいです。
昨年の講演でも話したように、実際にはこれまでの糖尿病薬のメトホルミンと比較しても大差がないにも関わらず、製薬会社は誇大広告を行っています。
今回の研究では、そのSGLT-2阻害薬とメトホルミン(ビグアナイド)を比較しています。人口統計学的、臨床的、臨床検査値、および生活習慣変数について1:1の傾向スコアマッチングを行った後、1,246人(各群623人)を中央値2.9年(最長7.2年)追跡調査しました。脳血管イベント、心臓イベント、または全死亡率からなる複合エンドポイントの最初のイベントまでの時間を比較しています。(図は原文より、表は原文より改変)
| 結果 | 暴露 | 3年後の累積発生率 |
|---|---|---|
| 複合イベント | ビグアナイド(n = 623) | 5.9 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 5.5 | |
| 心臓発作 | ビグアナイド(n = 623) | 3.1 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 2.6 | |
| 脳血管イベント | ビグアナイド(n = 623) | 1.4 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 1.9 | |
| 死亡 | ビグアナイド(n = 623) | 2.1 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 1.2 | |
| 糖尿病合併症 | ビグアナイド(n = 623) | 16.8 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 12.9 | |
| 糖尿病網膜症 | ビグアナイド(n = 623) | 13.2 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 10.6 | |
| 糖尿病性腎症 | ビグアナイド(n = 623) | 3.9 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 2.4 | |
| 糖尿病性神経障害 | ビグアナイド(n = 623) | 0.8 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 0.4 | |
| その他の条件* | ビグアナイド(n = 623) | 1.9 |
| SGLT2阻害薬(n = 623) | 1.0 |
上の表のように、ビグアナイドと比較するとSGLT-2阻害薬の方は発生率は低くなっているように見えますが、残念ながらどの結果も有意な差が認められませんでした。
下の図は、aは心臓または脳血管疾患または死亡率の複合アウトカムと、bは糖尿病性網膜症、腎症、神経障害、その他の病状を含む糖尿病合併症の累積発生率です。
どちらも有意な差が認められていません。ビグアナイドとSGLT-2阻害薬の使用を比較した場合、有意差はありませんが、あらゆる糖尿病合併症のリスクは0.88倍で、個々の合併症のリスクは、網膜症が0.93倍、腎症が0.97倍、神経障害が0.76倍、その他の疾患が1.04倍でした。
ただ、複合アウトカムについてはBMI25以上の人(0.38倍)と、HbA1c7%~8%未満の人(0.24倍)だけは有意にSGLT-2阻害薬のリスク低下がありました。
さらに別の14件の研究のメタアナリシスでは、心血管疾患を有する2型糖尿病患者におけるメトホルミンおよびSGLT-2阻害薬の比較を分析しました。(図は原文より)
上の図のように、SGLT-2阻害薬を使用した人は、メトホルミンと比較して全原因死亡率が1.308倍高く、メトホルミン投与群では、生存期間がSGLT-2阻害薬投与群の23.04ヶ月に対して、23.26ヶ月とわずかに延長すると推定されました。
さらに、上の図のように、SGLT-2阻害薬をメトホルミンと比較したところ、主要心脳血管イベント(MACE)のリスクは有意差はありませんが1.299倍でした。12か月時点で、MACEフリー生存率はSGLT2阻害薬で63.4%、メトホルミンで70.4%でした。
その他、SGLT-2阻害薬を投与された人は、メトホルミンを投与された人と比較して、どれも有意差はありませんが、心血管死1.248倍、心筋梗塞2.107倍、脳卒中1.722倍でした。対照的に、SGLT-2阻害薬を服用していた人は、メトホルミンと比較して、心不全による入院リスクが0.770倍と低くなりました。
さらに、メトホルミンだけではなく、プラセボにさえSGLT-2阻害薬は勝てなかったという黒歴史があります。SGLT-2阻害薬のエンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)の安全性を評価する試験の結果を見てみましょう。
薬物治療未経験(HbA 1c ≥ 7.0%、≤ 9.0%)または血糖降下療法を受けている(HbA 1c ≥ 7.0%、≤ 10.0%)心血管イベントの高リスク患者7020人を無作為化し、標準治療にエンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、またはプラセボを併用投与しました。主要評価項目は、心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中の初回発現までの時間です。
確かに、主要評価項目は、エンパグリフロジン群10.5%で、プラセボ群12.1%と比較して有意に低い割合で発現し、リスクは0.86倍でした。ただ、問題ありありです。(図は原文より)
上の図はHbA1cの推移を見ています。プラセボ群ではHbA1cが高いまま放置されています。つまり、この試験の結果が、SGLT-2阻害薬によって起きたのか、ただ単にHbA1c低下によって起きたのかはわかりません。示された有効性は、エンパグリフロジン以外の全ての糖尿病薬でも起きる血糖降下作用によるものであって、エンパグリフロジンが他の薬と比較してすごい効果があるとは思えません。
さらに、この試験のエンパグリフロジンは10mgと25mgが使われていますが、両方の量を合わせたものが統計的に有意に効果があったとしていますが、10mgと25mgを分けたときどうなっているかを見てみましょう。(図は原文より)
上の図は本文にはありません。都合が悪い情報はなるべく隠されているようです。補足資料に入っています。さて、一番上の主要評価項目は、確かにプラセボ群に比べて、イベントが少ないようには見えますが、10mgと25mgとそれぞれを比較すると、統計的には有意差を出せませんでした。血糖コントロールが悪いまま放置されたプラセボ群に統計的な勝利を飾れなかったのです。利益相反バリバリの研究なのに、この有様です。
確かに心血管死や全原因死亡を見てみると、10mgも25mgもプラセボ群よりも少ないのですが、先ほども書いたように、これは薬の効果なのか、血糖コントロールの効果なのかはわかりません。さらに、細かいところを見ていくと、致死的または非致死的心筋梗塞は、プラセボ群と比較しても有意差は出せず、しかも25mgと薬の用量が多い方が、その割合も多くなってしまって、プラセボとほとんど差がありません。本当に心保護作用があるのでしょうか?
さらにさらに、心臓ではなく脳卒中を見てみると、統計的には有意ではないですが、致死的または非致死的脳卒中は10mgも25mgもプラセボ群よりも絶対的な割合は多くなってしまっています。
SGLT-2阻害薬にたとえ、心保護作用があったとしても、そのトレードオフとして脳卒中が高くなることは許容できるのでしょうか?
製薬会社は、メトホルミンでは儲けられないので、SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を誇大広告で宣伝して、儲けようと必死ですね。でも、医療業界で一般的に言われているほどの効果は期待できないでしょう。糖質制限の方が絶大な効果を生みます。
「Comparative effectiveness of biguanides versus SGLT2 inhibitors on cardiovascular and cerebrovascular events, diabetic nephropathy, retinopathy, neuropathy, and treatment expenditures in patients with type 2 diabetes」
「2型糖尿病患者における心血管イベント、脳血管イベント、糖尿病性腎症、網膜症、神経障害、および治療費に対するビグアナイド薬とSGLT2阻害薬の有効性の比較」(原文はここ)
「Evaluation of the Lifetime Benefits of Metformin and SGLT2 Inhibitors in Type 2 Diabetes Mellitus Patients with Cardiovascular Disease: A Systematic Review and Two-Stage Meta-Analysis」
「心血管疾患を有する2型糖尿病患者におけるメトホルミンおよびSGLT2阻害薬の生涯ベネフィットの評価:系統的レビューおよび2段階メタアナリシス」(原文はここ)
「Rationale, design, and baseline characteristics of a randomized, placebo-controlled cardiovascular outcome trial of empagliflozin (EMPA-REG OUTCOME™)」
「エンパグリフロジン、心血管疾患アウトカム、および2型糖尿病における死亡率」(原文はここ)






SGLT2は腎保護効果あってすごくよく効く薬!と言われますが、実際データ見るとそこまででもなくて、データを見ない患者(一部医療者も)は過剰な期待をしているような気はしています。
IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。
企業のマーケティングはすごいお金をかけていますから、
簡単に洗脳されてしまうかもしれませんね
糖質過剰に伴うメタボや不調、
それを「治す」と称しての処方、
処方による副作用、
それを紛らわすための糖質過剰摂取や
追加処方、後ろ盾として「専門家」や
食品業界の根拠不明な健康アピール
(それでもTVコマーシャルでは一瞬極小文字で
「効果を保証するものではなく
個人の感想です」とコンプライアンス対策)
生活習慣病まっしぐら。
こういう悪循環に巻き込まれたくは
ないものです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
医療業界にも顧客が必要ですから、仕方がないのでしょう