身体能力のピークは何歳?

昨年の講演会でも話しましたが、私のフルマラソンやウルトラマラソンの記録は、10年前とほとんど変化していません。しかし、やっぱり徐々にパフォーマンスは落ちていると思います。それを補う努力も少しはしています。ただ、やっぱり長年糖質制限を行っているので、同年齢で何もせず、糖質過剰摂取をしている人と比較すると、恐らく身体能力の低下速度はゆっくりだと思っています。

適切な運動介入によるサルコペニアの対策は、根本的なプロセスが始まる前に開始すればより効果的である可能性があると思われますが、生涯にわたって運動を続けるエリートアスリートでさえ、加齢とともに身体機能が低下します。60歳近くなってもプロにこだわっている選手は、ある意味尊敬しますが、パフォーマンスはプロとは程遠くなっているようにも見えて、痛々しいです。

エリートアスリートを対象とした観察では、継続的なトレーニングにもかかわらず、身体パフォーマンスのピークは35歳頃に達することが示されており、筋機能不全の根底にある組織プロセスは、臨床的に重要となる数十年前から始まっている可能性があることを示唆しています。

今回の研究では、スウェーデンの一般人口において、1958年生まれの427人(女性48%)が16歳から63歳まで身体能力の客観的評価を繰り返し受けました。(図は原文より)

上の図は各年齢におけるBMIと体重、ライフスタイルなどの違いを示しています。16歳時から比較すると、年齢とともにBMIと体重はかなり増加しています。男性では50代からは横ばいですが、女性は60代になっても増加しています。標準体重に当てはまる割合は、16歳では90%を超えていたのに、50代では男性で40%代、女性で30%程度でした。余暇時間の身体活動は50%~70%と比較的変化は少ないですが、本当にこんなに身体活動を行っている人が多いのかちょっと疑問ではあります。どの年代でも70%程度の人が、自分の健康状態は良いと思っています。喫煙率は年齢とともに低下しています。

図のaは絶対有酸素能力(L/分)は、成人期を通じて男性の方が女性よりも高かったですが、まあ当然でしょう。パフォーマンスの相対的増加、ピークパフォーマンス年齢、および約45歳以降の相対的低下率は、男女で同様でした。パフォーマンスのピーク年齢は女性35歳、男性36歳でした。

パフォーマンスの低下率は、40歳では年間0.01~0.02L/分、約0.5%でしたが、63歳では年間0.04~0.05 L/分、約2%に加速しました。パフォーマンスのピーク年齢から63歳までの絶対有酸素能力の累積低下は、女性で30%、男性で33%でした。年齢グループのパフォーマンスの分散は、ベースラインから63歳までに5倍に増加し、絶対的な有酸素能力における個人間の差は年齢とともに増加したことを示しています。

相対的有酸素能力(mL/kg/分)は、若年層では男性の方が女性よりも高かったのですが、高齢層では差はありませんでした。パフォーマンスピークまでは、女性の相対的有酸素能力が男性よりも増加しました。相対的有酸素能力は、男性が26歳、女性が31歳で、男性の方がより早くピークに達しました。パフォーマンスピークの後、相対的有酸素能力は徐々に低下し、約40歳からは、相対的な低下は男女ともに同様でした。相対的有酸素能力の低下は、40歳で年間約 0.4mL/kg/分、約 1.1%でしたが、63歳では年間約 0.6 mL/kg/分、約2.2%に増加しました。ピーク時からの相対有酸素能力の累積低下は、女性で37%、男性で40%でした。相対有酸素能力の分散は、高齢層では若年層よりも25倍高く、相対有酸素能力における個人差は加齢とともに拡大していることを示唆していました。

図のcは筋持久力についてです。ベンチプレステストで、女性は男性よりも40%低い重量を持ち上げているにもかかわらず、男性は生涯を通じて女性よりも高い成績を残しました。パフォーマンスピークまでは、男性の方が女性よりも成績が向上しました。パフォーマンスのピーク年齢は女性34歳、男性36歳で、ピーク後の成績の低下率は、男女で同様でした。筋持久力の低下は、40歳で年間約0.3回、0.6%でしたが、63歳では年間約0.7回、約2.3%に増加しました。ピーク年齢から63歳までのパフォーマンスの累積低下は、女性で32年、男性で35%であした。年齢が高いほど分散は若年者より3倍高く、筋持久力の個人差は年齢とともに拡大することを示しています。

図のdは筋力です。筋力の尺度として跳躍高(ジャンプの高さ)を調べました。ベースラインから 63 歳まで、男性のジャンプの高さは女性よりも高くなりました。ピーク年齢は男性27歳、女性19歳でした。パフォーマンスのピークまでは、男性のパフォーマンスの向上が女性よりも大きくなりました。ピークを過ぎると、跳躍パフォーマンスは徐々に低下し、約45歳からは男女ともに相対的な低下が同程度になりました。40歳の時点で、ジャンプの高さの年間低下は最大0.5cm、男性 1.2%、女性 1.6%でした。63歳の時点でも、年間低下は最大 0.5 cmで、年間2.2% の低下でした。ピーク年齢から 63 歳までのジャンプの高さの累積低下は、女性では44年間で48%、男性では36年間で41%でした。ジャンプの高さの分散は、年齢が高いほど若年者よりも約5倍高くなっており、ジャンプの高さにおける個人差は年齢とともに拡大していることを示唆しています。

上の図は、16歳時点での身体活動が活発かどうか、または大学卒業資格の有無が身体能力に与える影響を示しています。男女とも16歳時点で活発な方が、成人期の有酸素能力(相対的および絶対的)、筋持久力、筋力が高くなりました。教育に関しては、大学卒業者の方が、絶対的な有酸素能力と筋持久力が高くなっていました。

上の図は、生涯における身体活動と非活動の変化が身体能力に与える影響を示しています。身体的に不活発なライフスタイルから活発なライフスタイルに切り替えると、これらすべてのテストで身体能力が、有酸素能力で6~7%、ベンチプレスで11%、ジャンプ高で4%増加しました。

いずれにしても、パフォーマンスのピークは20歳付近から40歳未満で起きています。その後、悲しいほど急激に身体能力が低下しています。それを少しでも遅らせるには、活動的になることが一番でしょう。

多くの場合、40歳未満で身体能力の低下が見られ、特に全く不活発な生活習慣を持つ人においては、後に臨床的に重大な身体機能障害につながる可能性があると考えられます。

パフォーマンスピークから63歳までの累積的な損失と年間の能力低下は、マスターアスリートで報告された値よりも大きく、63歳の時点で、女性と男性は有酸素能力と筋持久力において最大能力の約65%しか維持していません。同年齢のアスリートでは、持久力活動において最大能力の80%以上を維持していました。同様に、筋力については、女性は63歳の時点で最大筋力の半分しか維持しておらず、男性は60%しか維持していませんが、これはマスターアスリートが75歳を超えるまで到達しない低下です。つまり、トレーニングを続けていれば、一般的な人と比較して、10歳以上若いパフォーマンスを維持できるようなのです。

加齢は完全に抗うことはできませんが、遅くすることは可能です。40歳未満という早期に身体能力低下が開始となるので、できる限り30代になったら老化予防を始めた方が良いことになります。

私は40歳前半までは何もしていませんでした。食事も糖質過剰摂取で太っていました。しかし、健康診断で中性脂肪値が非常に高い値をとり、その日から糖質制限を始め、痩せてランニングを始めました。少し自分のパフォーマンス低下に気づくのが遅れましたが、現在の方が30代よりも元気です。身体能力は比べようがありませんが、持久力は30代よりも今の方が断然高いでしょう。

何歳になっても改善はできますが、できる限り早い方が良いでしょう。

「Rise and Fall of Physical Capacity in a General Population: A 47-Year Longitudinal Study」

「一般人口における身体能力の増減:47年間の縦断的研究」(原文はここ

2 thoughts on “身体能力のピークは何歳?

  1. サッカーのカズさんはW杯一度でも
    出れていたら、現役に拘り続けたのか?同学年としては、当時の岡田監督の決断は今でも疑問です。

    弓削田真理子さんの65歳サブスリー達成
    も凄いですか、異次元です。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      私は岡田監督の決定は正しかったと思っていますが。
      監督は何かと批判されるもので、大変な仕事ですね。

      弓削田真理子さんは100km女子65-69歳の世界記録(8時間24分2秒)も持っていますからね。
      普通の人間ではありません。

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