脳のグルコース取込み

脳へのグルコースの輸送を行っているのは、主にグルコーストランスポータータンパク質Glut1とGlut3というものです。これらの輸送体が脳へのグルコース移動の95%以上を仲介すしています。グルコーストランスポータータンパク質には他にGlut4やGlut5などがありますが、Glut4は脂肪細胞や筋肉細胞に多く認められ、インスリンの影響を受けて、インスリンが分泌されると、細胞の表面に出現するものです。しかし、Glut1とGlut3はインスリンとは関係なくグルコースを脳に取込みます。そうでなければ脳のエネルギーは安定しません。

ケトン体は、別の輸送タンパク質、モノカルボキシレートトランスポーター(MCT)によって細胞に輸送されます。

そして、このGlut1とGlut3の濃度は脳のグルコースの要求量が増えれば、比例して増加しますし、グルコースの要求量が減れば、減少します。

それ以外では、グルコースの濃度、つまり血糖値によっても変動するのです。高血糖ではGlut1は中程度減少を示すようです。Glut3は変化しないようです。

このGlut1の減少は、血糖値の上昇によって脳のグルコースの取込みが減少することを示唆しています。

脳の糖代謝はGlut1とGlut3がほとんどなので、インスリンとは独立していると思われています。しかし、インスリンに反応するGlut4は、特に海馬などの記憶および認知に関与する脳領域で発現しています。さらに、インスリン受容体はいくつかの脳領域に存在し、ニューロン活動に結びついています。脳インスリンシグナル伝達は、アルツハイマー病において欠陥がある可能性があるのです。

以前の記事「ほんのわずかな空腹時血糖の増加でさえ、脳はアルツハイマー様のパターンの反応になる」でも書いたように、空腹時の血糖値が100~110mg/dLというの軽度の上昇であっても、脳はアルツハイマー病のようなパターンを示します。つまり、脳のグルコースの取込みは血糖値に非常によく反応するということです。そして、血糖値が上昇することは決して脳にとって好ましい状況ではないということでもあります。

一時的なインスリン分泌はGlut4を発現させ、脳の特定の領域にはプラスの働きになると考えられますが、慢性的な高インスリン血症があると、インスリン抵抗性となり、インスリンの働きが非常に悪くなります。

高血糖になり、インスリン抵抗性が増加すると、脳はGlut1が減少し、脳のグルコース取り込みが減少し、インスリン反応性のGlut4が働かなくなるので海馬などの記憶や認知にかかわる領域のグルコースの取込みが減少し、高血糖と高インスリン血症があるので、頼みの綱のケトン体も生成できない状態になってしまいます。せっかく標準装備された脳のケトン体利用が機能しないのです。

恐らくはこのような高血糖の持続、高インスリン血症の持続ということは、進化の過程ではありえない状況だったと考えられ、そのような状況に全く適応できていないのです。何万年か後になればもしかしたら適応できる可能性はありますが、我々が生きている時代では無理でしょう。

少しでも、血糖値を穏やかに保つような食事、糖質制限があなたの脳を守ってくれます。

「Brain glucose transporters: relationship to local energy demand」

「脳グルコース輸送体:局所エネルギー需要との関係。」(原文はここ

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