ほんのわずかな空腹時血糖の増加でさえ、脳はアルツハイマー様のパターンの反応になる

血糖値の上昇と脳の機能低下は関連していると考えられています。糖尿病や耐糖能障害はアルツハイマー病の発症のリスクの増加と関連しています。

18F-FDGというものを使ってPETの検査を行うと、脳のグルコース利用の代謝率を推定することが可能です。18F-FDGの取込みの低下は、脳のグルコースの利用が低下し、脳の機能の低下を表していると考えます。つまり、神経の細胞数または活性の喪失を反映しています。

アルツハイマー病では、顕著に脳の楔前部と後部帯状回という部分の18F-FDGの取込みの低下のパターンを認めます。

血漿グルコースが上昇した認知機能の正常な人では、アルツハイマー病と同様なパターン、つまり、とりわけ楔前部での18F-FDGの取込みの低下を示します。さらに、最近の研究では、高血糖状態の間のアルツハイマー病様パターンは可逆的であり、アミロイド-β沈着またはアポリポタンパク質Eε4遺伝子型とは独立していることを示していました。つまり、血糖値が上がっている間、脳は一時的にアルツハイマーのようなグルコースの利用低下を示すのですが、血糖値が低下すれば、また正常なグルコースの代謝が回復するということです。

2型糖尿病初期や糖尿病予備軍で認知機能が正常な人であっても、インスリン抵抗性が高まると楔前部での18F-FDGの取込みの低下を示します。

今回の研究では、空腹時の血糖値が100~110mg/dLというの軽度の上昇であっても、脳はアルツハイマー病のようなパターンを示すとしています。こんなわずかな上昇であっても、脳のグルコースの代謝が低下するのであれば、糖質過剰摂取をしている人は多くの時間、血糖値の上昇を認めるはずなので、非常に長い時間、脳のグルコースの代謝が低下していることになります。それが積もり積もって、アルツハイマー病を発症するのかもしれません。

別の研究でも、認知機能が正常である124名で、空腹時血糖値が76〜126mg/dLの範囲の人の脳のグルコース代謝の低下を調べてみると、アルツハイマー病に関連した脳の領域で、より高い空腹時血糖値との間の関連性が認められました。(下の図は原文より)

 

できる限り、血糖値を上げない食生活を送るべきだはないでしょうか?実は20代であっても、インスリン抵抗性があると脳のグルコースの利用が低下しているという研究もあります。それはまた次の記事で。

 

「Relationship between Alzheimer disease-like pattern of 18F-FDG and fasting plasma glucose levels in cognitively normal volunteers」

「認知的に正常なボランティアにおける18F-FDGのアルツハイマー病様パターンと空腹時血糖値との関係」(原文はここ

要約

増加した血漿グルコースのレベルは18F-FDG取込みの脳の、特に楔前部の分布パターンを変化させ、18F-FDGの取込みを減らすることができる。認知機能が正常な人を対象における18F-FDGの分布パターンは、アルツハイマー病様パターンとして示される。この研究の目的は、楔前部における18F-FDG摂取を減少させ得る空腹時血漿グルコースレベルを決定することであった。

方法:認知機能が正常なボランティア51人(平均年齢±SD、69.7±5.9歳)が18F-FDG PETスキャンを受け、PETスキャニング時の空腹時血漿グルコースのレベルに応じて2群に分けられた:コントロール(31人、80mg/dL≦空腹時血糖値<110mg/dL)、空腹時血糖異常(IFG)(n = 20、100mg/dL≦空腹時PG<110mg/dL)。18F-FDG取込みを、2つの群間で比較した。

結果:全脳のvoxelwise分析は、コントロール群と比較して楔前部における18F-FDG取り込みがIFG群で有意に低かったことを示した。VOI分析では、IFG群の楔前部/視覚野比および楔前部/後部帯状回比がコントロール群より有意に低かった。

結論:本研究は、アルツハイマー病様パターンのように、特に楔前部において、空腹時血漿グルコースレベルの上昇が18F-FDG取込みを減少させることを確認した。さらに、この研究は、アルツハイマー病様パターンが、空腹時血漿グルコースレベルの軽度上昇(100〜110mg/dL)の人でさえ現れ得るという最初の証拠を提供した。

 

「Higher serum glucose levels are associated with cerebral hypometabolism in Alzheimer regions」

「より高い血清グルコースレベルは、アルツハイマー領域における脳代謝低下と関連している」(原文はここ

2 thoughts on “ほんのわずかな空腹時血糖の増加でさえ、脳はアルツハイマー様のパターンの反応になる

  1. 私らこ は、空腹時血糖値は正常を続けていた49才時に、アルツハイマー型認知症中期に達して、「財布の小銭が数えられない」まで進行していました。
    糖質摂取がいかに脳に悪いか! は自己体験で深く認識していましたが、医学的根拠が明快に存在しているのですね。

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