「その1」で書いたように、HDLコレステロールが低いと、がんのリスクが増加します。今回は別の研究を見てみましょう。
今回の研究では、コペンハーゲン一般人口研究のHDLコレステロールとApoA1の測定値の情報を持つ107,341人、コペンハーゲン市心臓研究の9,387人を対象としています。最長25年間の追跡調査において、コペンハーゲン一般人口研究では8,748件、コペンハーゲン市心臓研究では2,164件のがんが観察されました。日本ではApoA1値はほとんどの人は測定していないでしょうから、HDLコレステロール値についてのみ見てみましょう。(図は原文より)
上の図は、HDLコレステロールとあらゆるがん発症リスクとの関連です。HDLコレステロールが77 mg/dL以上の人と比較すると、HDLコレステロールが58~77 mg/dLの人では、あらゆるがんのリスクは1.13倍、39~58 mg/dLの人では1.18倍、HDLコレステロールが39 mg/dL未満1.29倍です。
上の図の左側だけ見てください。上から、血液がん、乳がん、呼吸器がんのリスクとHDLコレステロールとの関連を表しています。HDLコレステロールが77 mg/dL以上の人と比較すると、HDLコレステロールが58~77 mg/dLの人では、血液がんのリスクは1.16倍(有意ではない)、39~58 mg/dLの人では1.55倍、HDLコレステロールが39 mg/dL未満2.61倍です。
HDLコレステロールが77 mg/dL以上の人と比較すると、HDLコレステロールが58~77 mg/dLの人では、乳がんのリスクは1.20倍、39~58 mg/dLの人では1.36倍、HDLコレステロールが39 mg/dL未満1.15倍(有意ではない)です。
HDLコレステロールが77 mg/dL以上の人と比較すると、HDLコレステロールが58~77 mg/dLの人では、呼吸器がんのリスクは1.06倍(有意ではない)、39~58 mg/dLの人では1.26倍、HDLコレステロールが39 mg/dL未満1.35倍です。
上の図はHDLコレステロールが19mg/dL低下するごとのそれぞれのがんのリスクを示しています。ホジキンリンパ腫2.32倍、多発性骨髄腫1.73倍、骨髄増殖性腫瘍1.66倍、非ホジキンリンパ腫1.31倍、乳がん1.12倍、あらゆるがん1.09倍でした。
LDLコレステロール値が高いとあれほど脅す医師たちですが、HDLコレステロール値が低くて脅す医師はほとんど皆無に近いのではないかと思います。それは医師がHDLコレステロールを改善して増加させる方法を知らないし、薬も持っていないからでしょう。知らないこと、できないことはスルーします。
HDLコレステロールは糖質制限で爆上がりします。できればHDLコレステロール80mg/dLを目指したいですね。
「Low high-density lipoprotein and increased risk of several cancers: 2 population-based cohort studies including 116,728 individuals」
「高密度リポタンパク質の低値はいくつかのがんのリスク増加につながる:116,728人を対象とした2つの集団ベースのコホート研究」(原文はここ)