カロリー制限では何年たっても空腹感が収まらない?

減量のためにいまだにカロリー制限を指導しているのが現状です。しかし、カロリー制限をしている間は痩せたとしても、食事を戻せば、当然体重も戻ります。当たり前のことなのに「リバウンドした!」という言葉が出てきます。食事の内容、質が体重決定に最も影響するということを考えれば極々当然のことなのです。

また、カロリー制限は、人間が体を維持するために飢餓にならないようにする本能やホルモン調節のメカニズムを考えれば、長くは続けられないことも容易に想像できます。最初は苦しくても、我慢して続ければ体が慣れてきて、もしかしたらカロリー制限のまま維持できるのでは?と甘い期待を抱く気持ちはわかります。

しかし、やはりカロリー制限というのは非常に難しく、かなりの期間続けても空腹感との戦いになってしまう、という研究が発表されました。

この研究では、高度の肥満患者にカロリー制限をしています。そして2年間という長期に渡りフォローアップしています。介入の内容は、身体活動を増加することと、適度に制限されたバランスのとれた食事(推定エネルギー消費量から500kcal /日のカロリー制限で、炭水化物からエネルギーの50%、脂肪から30%、タンパク質から20%)でした。(原文ではこれがバランスのとれた食事と考えています…)

結果は、体重は減量プログラムを開始後3週間で平均で約4.5kg、2年後には平均で約11kg減少しました。しかし、1年後および2年後には全ての患者が減量後に空腹感が増大していたのです。

上の図はカロリー制限と食欲、空腹感などのグラフです。(図は原文より)

Aは空腹感、Bは満腹感、Cは食欲、Dは次の食事でどれだけ食べたいか?(Dはどのように表現したら適切なのかわかりません)です。Aの空腹感とCの食欲に関しては、空腹時も食後も、1年後も2年後もベースラインよりも増加している状態です。つまり、もともとの状態よりも我慢し続けなければならないということです。

上の図はホルモンのグラフです。Aがグレリン、BがPYY、CがGLP-1、DがCCKです。グレリンは「飢餓ホルモン」とも呼ばれていて、エネルギー摂取量が減ると分泌され、食欲増進作用があります。PYYは逆に食欲の抑制に働くホルモンです。グレリンとPYYはベースラインと比較すると2年たっても増加したままです。図は示していませんが、インスリン分泌は低下しています。

つまり、グレリンは増加したままで、食欲増進に働き、それによって空腹感や食欲が増加し続けています。2年たってもずっとそれが続いているのです。これでは我慢ができなくなる人が多いのも容易に理解できます。

「Impact of weight loss achieved through a multidisciplinary intervention on appetite in patients with severe obesity」

「重度の肥満患者における食欲に対する多分野の介入によって達成された体重減少の影響」(原文はここ

一方、糖質制限やケトジェニックダイエットではどうでしょうか?我々糖質制限をしている人の多くは、糖質をしっかり摂っていた頃と比べて、食欲や空腹感が少なくなっていることを感じています。

ケトン体の入ったケトンエステルドリンクを摂取した場合の食欲やホルモンの状態を調べた研究があります。

上の図はケトンエステルドリンクを飲んだ後の、ケトン体で最も割合の高いβヒドロキシ酪酸の濃度です。1時間後には3000μmol/L以上に増加しています。(図は原文より)

このときの空腹感やホルモンなどの状態は下の図です。

Aが空腹感、Bが食欲、Cが満腹感です。ケトン体のドリンクを飲んだ方が空腹感と食欲が低下し、満腹感が増加しています。

しかし、D~Fのグラフはベースラインからの変化を表しているのですが、横軸がβヒドロキシ酪酸の濃度で、その増加に伴い、空腹感と食欲は低下し、満腹感は増加していることが示されています。ただ、ケトジェニックダイエットだとケトン体の濃度は非常に高くなりますが、糖質制限ではそこまでケトン体は上昇しません。糖質制限レベルのケトン体だと、このグラフで見ると逆に空腹感と食欲は増加し、満腹感は低下しています。これは我々の実体験とは異なる結果です。

IとLのグラフはグレリンのもので、ケトン体のドリンク群の方が有意にグレリンの分泌は低下しています。

この研究は長期的なデータを示していないので、何とも上の研究とは比較できませんが、恐らくは長期的にも、ケトン体はグレリンの分泌を抑制し、食欲や空腹感を抑えてくれるのだと思います。そして、糖質制限に関しても、ごく短期的には食欲や空腹感は増加するのかもしれませんが、現在私が感じているように、長期的には食欲や空腹感は低下すると考えています。

いずれにしても、カロリー制限は人間に備わった本能やメカニズムを無視した食事法であることは確かだと思います。

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