睡眠時無呼吸は脳を障害する?またはその逆かもしれない

睡眠時無呼吸症候群は様々な病気のリスクとなりますが、脳にも影響があります。睡眠時無呼吸が脳の障害を引き起こしたか、脳の障害が睡眠時無呼吸を引き起こすかははっきりしません。脳が低酸素に毎晩さらされることによるのか、脳の機能が低下して寝ているときに呼吸が低下するのか、またはその両方かもしれません。

以前の記事「20代の若者でもインスリン抵抗性で脳のグルコースの代謝が低下する」で書いたように、インスリン抵抗性があると20代であっても脳のグルコース代謝が低下してしまいます。睡眠時無呼吸の人はおおむね肥満です。私も以前はときどき無呼吸になっていたようです。脳のグルコース代謝が低下して、呼吸に影響する可能性も十分あると思います。また、肥満そのものも空気の通り道を狭くするので、通り道がふさがってしまう危険性は高くなります。

ただ、痩せていても無呼吸が起こる場合があることを考えると、脳の機能低下が先にあるのかもしれません。

今回の研究では、実際に睡眠時無呼吸の男女で脳の厚さが低下していることを示しています。脳が薄くなる、つまり萎縮してしまっているのです。それは神経細胞が減少している、死んでいる証拠でもあります。そして、女性では男性と違う脳の領域で脳が減少しており、それによって精神的な症状を多く認められるのでは、と考えています。睡眠時無呼吸を有する女性は男性より、うつ病、不眠症および不安など精神心理学的障害を経験する確率が高いと言われています。

下の図は脳が薄くなっている部分を示しています。(図は原文より)

 

さらに次の図は女性のみに認められる脳が薄くなった領域です。

 

いずれにしても、睡眠時無呼吸を放っておくことは賢明ではありません。まずは肥満があればそれを解消することをお勧めします。そして、糖質制限で脳のエネルギーを取り戻しましょう。

 

 

「Obstructive sleep apnea and cortical thickness in females and males」

「女性および男性における閉塞性睡眠時無呼吸および脳の皮質厚」(原文はここ)

要約

閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は成人の約10%に影響を与え、脳の灰白質および白質を変化させる。この疾患の心理学的および生理学的症状は性別に関係しており、恐らく女性では男性よりも白質の大きな障害に関連する。我々の目的は、性別により乖離する皮質灰白質に対するOSAの影響を同定することであった。

結果
女性のOSAでは、他の全ての群と比較して、前頭葉の両側に皮質厚が減少した複数の領域を認めた。一般的なOSA群と対照群との間には、中心前回、中心後回、上側頭回、そして島に及ぶ有意な厚さの減少が現れた。OSA群対対照群で厚さが増加した領域は無く、または女性OSAのポジティブな相互作用効果の増加した領域も認められなかった。

結論
皮質の厚さの減少は、OSAにおける断続的な低酸素暴露の繰り返しによる神経細胞やそれを支持するグリア細胞の死滅を含む長期障害による組織萎縮を示す可能性が高いが、疾患合併症もまた脳の厚さの減少に寄与するかもしれない。女性OSA患者の認知領域におけるより大きな皮質の障害は、その群における増強された症状の根底にあるかもしれない。男性と女性のOSA患者におけるOSAに関連する脳の厚さの減少は、自律神経調節不全および上気道感覚運動機能の障害に寄与するかもしれない。

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