Medical Tribuneに興味深い話が出ていたので、抜粋しました。
逆流性食道炎の薬であるプロトンポンプ阻害薬を飲んでいる人は認知症のリスクが1.4倍になるというデータです。
しかし、これはプロトンポンプ阻害薬という薬が悪いのか、それとも逆流性食道炎を起こす元々の食習慣が悪いのか
どっちかはわかりませんが、プロトンポンプ阻害薬を長期間飲んでいると、ビタミンB12が不足して認知症様の症状が出ることは以前から指摘されていました。
また、糖質制限をすると逆流性食道炎が著明に改善するいうことがあります。
私は後者の方によって認知症のリスクが上がると考えます。
つまり、逆流性食道炎を起こす方は元々糖質摂取が過多であり、頻繁に食後高血糖を起こし続けたために認知症のリスクが高まったと考えます。
いずれにしても、対症療法だけで長期間過ごすことは問題があるということです。それはどんな病気でも同じです。
食習慣の見直しが大切です。
PPI使用で認知症リスクが上昇?
2016.02.18 Medical Tribune
プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は高齢者で増えているが,同薬が認知機能低下に関係する可能性を示した報告もある。ドイツ・German Center for Neurodegenerative DiseasesのBritta Haenisch氏らは,ベースライン時に認知症のない75歳以上の高齢PPI使用者7万人超の健康保険データを前向きに追跡し,対照集団のデータと比較した。その結果,PPI使用群では,非使用群に比べて認知症発症リスクが1.4倍有意に高かったとJAMA Neurolで報告した。
大規模保険データで前向き追跡
胃食道逆流症(GERD)や胃潰瘍に対するPPIの使用は,高齢者を中心に急増している。また,PPIは全薬剤で見ても最も多く使用されている部類に入り,ドイツでは過去10年間に処方数が4倍に増えた。その処方の40~60%は不適切なものだとする観察研究もある。
一方で,PPI使用は認知機能に影響を及ぼす可能性が示唆されており,その要因として,PPI使用とビタミンB12欠乏,脳内アミロイドβ(Aβ)蓄積との関連が指摘されている。
今回の研究では,ドイツ最大の公的健康保険制度(Allgemeine Ortskrankenkassen)の記録において,2004~11年の入院および外来患者の診断記録と薬剤処方データを前向きに追跡し,PPIの使用と認知症リスクとの関連を検討した。
主要評価項目は,国際疾病分類(ICD-10)のドイツ版による認知症発症とし,時間依存性共変量を用いたCox回帰分析により,年齢,性,併存疾患,多剤服用などの交絡因子を調整し,PPI使用と認知症の関連を検討した。
まず,75歳以上の21万8,493人のデータを抽出。ベースライン期間の2004年と最終追跡年の2011年はそれぞれ1年間を,その間の2005~10年までは18カ月間を集計単位とし,さらに,それらを四半期(3カ月)ごとに区切り,各集計単位のいずれの四半期にも1回以上のPPI処方があった者(定期使用者)と各集計単位に1度もPPI処方を受けなかった者(非使用者)を解析対象とし,21万8,493人からPPIの定期使用でない者や,2004年中に死亡したり認知症を発症した者などを除外して,最終的に7万3,679人が残った。
高齢者が常用する薬剤についての重要な問題提起
7万3,679人のうち,PPI定期使用は2,950人(女性77.9%,平均年齢83.8歳)で,非使用者は7万729人(女性73.6%,平均年齢83.0歳)であった。追跡期間中に認知症を発症したのは,全体で2万9,510人で,PPI定期使用群の認知症発症リスクは,非使用群と比べ有意に高かった(ハザード比1.44,95%CI 1.36~1.52,P<0.001)。
Haenisch氏らは「今回の研究は,過去の薬剤疫学データや動物実験の結果を支持するもので,PPI使用の回避で認知症発症を予防できる可能性がある」と指摘。一方で,今回の研究はPPI使用と認知症リスクの生物学的因果関係を証明するものではないことや,既知の認知症危険因子のうち調整できなかったものもあることに言及。「高齢者におけるPPI使用と認知症発症に関して,直接的な因果関係を確認するためには,ランダム化比較試験が必要である」と結論付けている。
米・University of PittsburghのLewis H. Kuller氏らは,同誌の付随論評で「今回の研究は,PPI使用と認知症リスクの関連について重要かつ興味深い問題を提起するものである。認知症リスクが非常に高い高齢者においてPPI長期処方が極めて多いことに鑑みると,これは非常に重要な問題である」と指摘している。