マラソンの消費カロリーがいくつだから、どれくらいの食べ物を食べたり、途中でどれくらいエネルギーを摂らなければならないとか、ダイエットのためにこの食事のカロリーがいくつだからカロリーを制限して、こうすればカロリーオフになるとか、いろいろとカロリーという言葉が使われますが、正直言ってカロリーを考えることは無駄だと思います。ダイエット検定にも出題されるカロリーコントロールの不確定要素というのがあります。
- 同じカロリーでも、各栄養素によって性質・役割が違う。
- 同じ食材でも生産環境、大きさ、密度などにより、含まれるカロリーが違う。
- 摂取されたエネルギーがすべて体内で吸収されるわけではない。
- 体内で吸収される量は人によって違う。
- 同じ人でも、その日の体調や季節等によって吸収量は違う。
- 人それぞれの基礎代謝量が違う。
- 同じ身体活動をしても、人それぞれの体格や体質によってエネルギー消費量は変わる。
- 同じ人物の同じ身体活動でも、その日の気温などの環境によりエネルギー消費量は変わる。
- 食べ方(食べる順番や時間)や生活習慣等で、エネルギーを貯蔵する過程に変化が出る。
- 同じカロリーでも、GI値が違う。
上に書いたことはちょっとした違いではなく、大きな違いになるので、正直カロリー計算なんてものは不可能なのです。例えば、1番で書かれている「各栄養素によって性質・役割が違う」というのがまさにカロリー計算のおかしな部分の中心となるところです。つまり、タンパク質は通常はエネルギーというより身体の構成成分です。脂質は構成成分とエネルギー源の両方ですし、糖質はエネルギー源ですが、余剰の糖質は中性脂肪に変化します。
人体の構成成分は水分66%、タンパク質16%、脂質13.5%、糖質0.5%、ミネラル4%です。さらに細かい臓器別の組成は下の表です。
人体の組成 | タンパク質 | 脂肪 | 水分 |
% | % | % | |
皮膚 | 22 | 13 | 64 |
骨格 | 19 | 17 | 32 |
筋 | 17 | 3 | 80 |
脳・脊髄 | 12 | 13 | 73 |
肝臓 | 16 | 10 | 71 |
心臓 | 16 | 9 | 74 |
肺 | 13 | 2 | 84 |
腎臓 | 15 | 4 | 79 |
脾臓 | 18 | 1 | 79 |
すい臓 | 13 | 13 | 73 |
腸 | 13 | 6 | 79 |
脂肪組織 | 7 | 42 | 50 |
血液・リンパ | 6 | 0.2 | 93 |
表には糖質が出てきません。糖質は人体を構成している成分ではないのです。タンパク質の成分のアミノ酸には必須アミノ酸という体内で作ることができず、食物で摂らなければならないアミノ酸がありますし、脂肪にも必須脂肪酸というのがあります。しかし、必須糖質はありません。体内で作ることができます。そんな、体内で自分で作ることができて、しかも人体の構成成分としては0.5%しかない栄養素を全体のカロリーの60%摂る必要があるのでしょうか?
糖質は確かにエネルギー源ですが、体は血糖値維持のためにインスリンを出して筋肉内、肝臓、そして中性脂肪に変えてせっせと体内に取り込んでいきます。その後血糖値が正常になると糖質はエネルギー源として(0ではありませんが)直接は働きません。脂肪を分解してエネルギーにします。
脂肪なら体にいっぱい蓄積しています。そうであれば、こんなにたくさんの糖質をエネルギーとして摂る必要があるのでしょうか?
また、タンパク質は日々300g程度入れ替わっています。そのうち食事からは100g程度と言われています。だから、カロリーの何%がタンパク質というのではなく、タンパク質は1日何グラム摂ってください言えばいいのではないでしょうか?カロリー=エネルギーという考えは全く間違っています。
そもそも、3大栄養素の摂取割合、炭水化物50~65%、タンパク質13~20%、脂質20~30%というのがありますが、割合が問題なんですか?
量が重要なんではないでしょうか?カロリー制限をしてこの割合を守ってしまえば、明らかにタンパク質や脂質不足になります。
また、推定エネルギー必要量が男性2650kcal/日、女性2000kcal/日(身体活動レベルが普通の人、年齢によって違いますが)、って多すぎません?1日1食で健康に生活している人がいっぱいいて、その人たちが1食で2000kcal/日以上食べているでしょうか?別にその方たちがみんなやせ細っているわけではありません。筋肉質の方もいっぱいいます。サブスリーのマラソンランナーでも1日1食の方もいます。以前も書きましたが摂取エネルギーが少なくなれば、人間はそれに適応し、少ないエネルギーで多くの活動ができるようになるんだと思います。
また、マラソンで言えばカロリーコントロールの不確定要素の3、4、5番、つまり吸収の問題があります。レース中は胃や腸の働き、つまり消化吸収は非常に落ちています。なので、レース中に摂ったものがどれだけ吸収されるか全くわかりません。
カロリーコントロールの不確定要素の7、8番についても同じで、人それぞれエネルギー消費量が違いますし、気温などによっても全く消費量は変わるでしょう。
このような状況でカロリー摂取量がいくつで、消費量がいくつだから、という議論は正直無駄です。まあ、以前のマラソンの投稿で摂取カロリーと消費カロリーの計算をしていましたが、机上の空論であることは間違いありません。目安にすらならないかもしれません。
それでも以前の投稿で摂取カロリーと消費カロリーについて書いたのは、消費カロリーは非常に多いけれども、摂取カロリーはそれに比べて非常に少なくても大丈夫だということを意図していました。つまり、たとえウルトラマラソンでもレース前やレース中に頑張って食べる必要はないということを言いたかったわけです。
また、ダイエットで体重を減らせるかどうかは、摂取カロリーよりも消費カロリーの方が多いから痩せるのではなく、食事によって蓄積する脂肪量よりも分解してエネルギーとして消費される脂肪が多いから痩せるんです。これを単純なカロリー計算によって考えることは全く無駄なんです。消費カロリーなんて一般の人が測定することもできませんし。
糖質制限なら自然と蓄積する中性脂肪は減少しますし、消費する脂肪は増加しますから楽に体重が減少するわけです。