必須脂肪酸はオメガ3とオメガ6がありますが、オメガ3は健康的で、オメガ6は摂りすぎは病気のリスクを高めると考えられています。特に心血管疾患を防ぐために、オメガ3は有効であると信じられていますし、私も信じています。オメガ3サプリメントはアメリカ心臓協会も推奨しているほどです。オメガ3のサプリメントを摂取している人もいると思いますが、コクランの新しい研究では、全くオメガ3のサプリメントは心血管疾患に効果がないと報告しています。
112,059人を対象とした79件のランダム化試験の結果をまとめたものです。それによると、全原因死亡、心血管疾患どれをとっても全く効果なしという結果でした。
オメガ3脂肪酸の評価をした研究ですが、そのほとんどがサプリメントを使った研究であり、魚そのものの消費の研究はわずかしかなく、魚を多く食べれば心臓に良いかどうかは不明です。
私自身の考えは、魚の利点はオメガ3だけではないことや、いつも言っているようにひとつの成分だけを抽出したサプリメントは効果がないか、少なく、他の栄養素と一緒になっている食材から摂ることで初めて効果が得られると思います。しかも、恐らくほとんどの研究では、食事内容を変更しない状態で、オメガ3サプリメントだけを加えています。通常の食事を考えればオメガ6がてんこ盛りです。そこにサプリメントでオメガ3を少し加えても焼け石に水状態なのではないでしょうか?
普段の食事に魚を加えると、その代りに何か食べるのを減らすはずです。そうすることで魚の利点はより出てくるのではないかと思います。しかし、あまりにもオメガ6が多い食事をしていればやはり焼け石に水かもしれません。
つまり、通常の現在の食事にオメガ3サプリメントだけを加えてもお金の無駄だということです。先に行うのは食事の変更であり、オメガ6をできる限り減らすことを積極的にしたうえで、オメガ3サプリメントを加えれば違いがあるかもしれません。いずれにしても、サプリメントよりも魚を推奨しますが。
このコクランの研究が発表されたのと同じ時期に、魚やオメガ3脂肪酸が有効だという研究も発表されています。
421,309人というコクランよりは非常に大規模な研究です。16年間追跡していますが、いつもの通り食事に関する研究なので、対象となる人に質問をしたものを使っての調査となり、本人が本当のことを言っているかどうかはわかりません。
しかし、結果を見てみると、魚やオメガ3の摂取量により5つに分け、最も多く食べた群は最も少ない群よりも、男性では総死亡率が9%、心血管疾患死亡率が10%、がん死亡率が6%、呼吸器疾患死亡率が20%、慢性肝疾患死亡率が37%減少しました。女性では総死亡率が8%、心血管疾患死亡率が10%、アルツハイマー病死亡率が38%減少しました。
面白い結果では、フライにした魚の消費は男性の死亡率に関係していないばかりか、女性では全原因死亡、心血管疾患および呼吸器疾患と正の相関を示したのです。つまり、魚は良いけれど、オメガ6たっぷりであり、酸化した油で揚げた魚を摂っても、魚の効果は打ち消されてしまうかそれよりも害の方が多くなってしまう可能性があるということです。
オメガ3脂肪酸を最もたくさん摂った群は最も少ない群と比較して、男性および女性の心血管疾患死亡率をそれぞれ15%、18%低下させました。
やはり、私はオメガ3を信じます。そして、どうせ摂取するなら、新鮮な魚から摂りましょう。フライにした魚は美味しいですが、ほどほどに。
「Omega-3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease」
「心血管疾患の一次および二次予防のためのオメガ3脂肪酸」(原文はここ)
「Association of fish and long‐chain omega‐3 fatty acids intakes with total and cause‐specific mortality: prospective analysis of 421 309 individuals」
「魚および長鎖オメガ3脂肪酸の総量および原因特異的死亡率との関連性:421,309人の前向き分析」(原文はここ)