夏に汗をかいたら水分だけではなく塩分も摂りましょうなんて言いますが、スポーツもしない状態での通常の汗では、そんなに塩分が失われるとは思えません。ビジネスです。しかし、この夏場にランニングする場合やスポーツをする場合は別です。実際の市民マラソンランナーの汗に含まれるナトリウムの濃度はどれくらいなのでしょうか?
上の図で横軸は汗の電解質濃度を示しています。黒いバーがナトリウムです。実際にはこれほど大きな幅で分布しています。ランナーの20%は非常に高い汗のナトリウム濃度を示しています。1リットルの汗の中に何と3.5gの塩分(1.38gのナトリウム)を含んでいるのです。夏場であれば1時間に1リットル以上の汗をかくことも珍しくありません。そうすると1時間に4g程度の塩が体から無くなっていることになります。それを集めて乾かせばまた塩が取れます。気持ち悪くて料理には使えませんが。
男女差も若干あるようです。
上の図で上のグラフaは男女を分けています。横軸がナトリウムの濃度で、●が女性ですが、男性よりもナトリウムの濃度が低めの人が多いように見えます。走るペースとは非常に弱い相関があるようですが、それ以外には体重や年齢など様々な因子とは関連が認められませんでした。汗のナトリウムの濃度のこの大きな差は、汗腺のナトリウムの再吸収の能力に関連しているのかもしれません。ホルモンが関連している可能性もあるのかもしれません。しかし、いずれにしても自分ではわかりません。
マラソンのような長時間の運動では非常に多くの汗をかきます。しかし、その中に含まれるナトリウムの量は人により大きな差があります。非常に多くのナトリウムが失われた場合には、スポーツドリンクのような薄い電解質のドリンクでは水と何ら変わらない効果しかありません。つまり、飲みすぎれば低ナトリウム血症を引き起こします。過剰な飲水は命の危険すらあります。普段の練習時の前後で体重を測るクセを付けて、どれぐらい汗をかいた感覚があり、どれぐらい飲んだらいいのかを確認しておきましょう。体重変化がゼロまたは増加しているというのは水分の摂りすぎです。
先日のサロマ湖のウルトラマラソンでは多くの人が、塩をビニールなどに入れて直接持っていました。岩塩の人もいれば、白い塩の人もいました。時折塩で胃がやられる方もいますが、水分と同時に摂取すれば通常は問題ないと思います。私はぬちまーすを溶かした水を2本用意していました。塩(ぬちまーす)だけも別に持っています。
汚い話かもしれませんが、私は自分の口の周りの汗を舐めて、塩分が失われているかどうかを判定しています。全くエビデンスはありません。しかし、通常な何も味がしませんが、非常に汗をたくさんかき、その時間が長くなってくると塩辛くなってきます。そうした場合には塩を使うようにしています。そのような塩の使い方が正しいかどうかはまだわかりません。
「Interindividual variability in sweat electrolyte concentration in marathoners」
「マラソンの汗の電解質濃度の個人差」(原文はここ)