肉が大腸がんのリスクを増加させるなら、ベジタリアンは?

以前の記事「赤肉には発がん性があるのか? その1」などで書いたように、WHOの発表では赤肉や加工肉は発がん性があり、加工肉の1日の摂取量が50g増加するごとに大腸がんのリスクは18%増加し、赤肉の1日の摂取量が100g増えるごとに大腸がんのリスクが17%増加するそうです。私はそのことを信じていないことは記事に書きました。

もし、肉が大腸がんのリスクを上げるとすれば、肉を食べないベジタリアンはさぞかし大腸がんが少ないのでは?と思うのは当然でしょう。

ヨーロッパでベジタリアンのがん発生率を調べた研究があります。(図は原文より改変)

上の図は様々な条件での種々のがんのリスクを示しています。左から大腸直腸がん、女性の乳がん 、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、すべてのがんです。大腸直腸がんのところを注目すると、下から2番目はベジタリアンとベジタリアンでない人を比較しており、ベジタリアンはベジタリアンではない人よりもリスクが何と49%も高いことを示しています。一番下では肉食と魚食とベジタリアン(ビーガンを含む)を比較しています。肉食の人と比べてベジタリアンはなんと39%リスクが高いのです。赤肉ががんのリスクを上げると考えるならば、当然ベジタリアンの方がリスクが低くなるはずですが、結果は逆になってしまいました。

食事に関する研究の限界はいつも書いている通り、データを取るときに、本人に質問票で答えてもらうことです。全員が何をどれだけ食べたか、しっかりと記憶していて、正直に答えているとは思えません。しかし、今回はベジタリアンかベジタリアンではないのか、は比較的明確にわかるはずなので、それなりに信頼性が高くなると思います。

ちなみに有意差は示されませんが魚食の人は肉食よりも36%リスクが低い傾向があります。(この研究で魚食は魚だけを食べる人なのか、肉より魚を多く食べる人なのか、詳しいところははっきりしません)

魚食の人は右から2番目の肺がんが極めて低いリスクになっており、肉食の人より77%低いリスクです。もちろん一番上の喫煙の欄にあるように、肺がんは喫煙と非常に大きく関連しています。もうこれは関連ではなく因果関係です。ヘビースモーカーは喫煙しない人と比較すると何と87倍以上のリスクです。

全てのがんの発生を見ると、ベジタリアンの方が肉食よりもリスクは11%低く、魚食は肉食よりも17%低い結果でした。

もちろん、この結果を見て、赤肉の発がん性が否定されたとまでは言えませんが、少なくとも赤肉を食べないよりは、食べた方が大腸がんに対しては良いことがわかります。

大腸がんのを含め、様々ながんは様々な因子が影響していると思います。しかし、赤肉が影響しているかどうかは、私は否定しますが、エビデンス上でもわからないというのが実際のところでしょう。

 

「Cancer incidence in vegetarians: results from the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC-Oxford)」

「菜食主義者のがん発生率:欧州のがんと栄養の前向き調査の結果(EPIC-Oxford)」(原文はここ

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