糖質制限食(低炭水化物食)と低脂肪食での、体重および心血管危険因子に対する影響を分析したランダム化比較試験のメタアナリシスがあります。さあ、どちらが勝つのでしょうか?(図は原文より)
上の図は糖質制限食と低脂肪食とで様々な因子の変化量の「差」を示しています。上から順に体重、中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、収縮期血圧、拡張期血圧、血糖値です。真ん中の太い線が基準で、HDLコレステロール以外は左に行くほど糖質制限の方が好ましい変化を示している、というように書いていますが、実際にはちょっと違います。
まずは体重。糖質制限の方が体重減少が大きく、総合すると低脂肪食よりも糖質制限の方が平均で2.17kg多く体重が減少しました。糖質制限の勝ち!
中性脂肪値低下量の差は0.26mmol(23mg/dL)で、糖質制限の方が多く低下しました。糖質制限の勝ち!
総コレステロールの変化量の差は、糖質制限食の方が0.26mmol(10mg/dL)増加しました。糖質制限の負け?ではありません。総コレステロール増加を心血管疾患のリスク因子であると考えると糖質制限の負けです…
HDLコレステロールの変化量の差は0.14mmol(5.4mg/dL)、糖質制限の方が増加しました。糖質制限の勝ち!
LDLコレステロールの変化量の差は0.16mmol(6.2mg/dL)、糖質制限の方が増加してしまいました。これも総コレステロールと同じで、LDLコレステロールをリスク因子と考えるかどうかです。
収縮期血圧は糖質制限の方が1.02mmHgだけ多く低下しましたが、有意な差はありません。拡張期血圧も糖質制限の方が1.01mmHgだけ多く低下しましたが、有意差はありません。
血糖値の低下の差も0.23mmol(4.1mg/dL) だけ糖質制限の方が多く低下しましたが、差はありません。
結局、総コレステロールとLDLコレステロールに関しては糖質制限で増加する可能性があり、それを有害性と考えるかどうかです。それ以外は低脂肪食と比較して有益なことばかりです。
以前の記事「LDLコレステロール値は役に立たない」などでも書いたように、LDLコレステロールは冠動脈疾患のリスクを表しているとは思えません。
それよりも、LDLコレステロールのLDLの質の方が重要だと考えます。以前の記事「糖質制限とLDLコレステロール上昇」「LDLコレステロールが高値だけでは何もわからない」などでも書いたように、LDLは中性脂肪/HDL比が低ければ大きなふわふわの良性のLDLです。中性脂肪/HDL比で1.33以下を目指しましょう。今回の研究でも、中性脂肪の低下とHDLコレステロールの増加は糖質制限の方が多いという結果でした。糖質制限ではこの1.33以下にすることは非常に容易です。
やはり、糖質制限食の勝ち!
「Effects of low-carbohydrate diets v. low-fat diets on body weight and cardiovascular risk factors: a meta-analysis of randomised controlled trials」
「体重および心血管危険因子に対する低炭水化物食対低脂肪食の影響:無作為化対照試験のメタアナリシス」(原文はここ)