LDLコレステロール値は役に立たない

LDLコレステロールを気にしている人はいまだに多いように思います。医師の方がその古い考えをなかなか変えないので仕方がないのでしょう。しかし、LDLコレステロールは私たちに何も教えてはくれません。低いから安心していられるわけではありません。高いから不安になる必要もありません。

136,905件もの冠動脈疾患での入院を分析した研究があります。

入院時の平均値は

収縮期血圧 (mm Hg) 124.0 ± 20.9
総コレステロール (mg/dL) 174.4 ± 47.7
LDLコレステロール(mg/dL) 104.9 ± 39.8
HDLコレステロール (mg/dL) 39.7 ± 13.2
中性脂肪 (mg/dL) 161 ± 128

でした。驚くことに血圧は正常範囲です。LDLコレステロールは正常範囲で、HDLコレステロールと中性脂肪は若干基準値を外れています。

脂質の分布は以下のようです。(図は原文より改変)

 

上の図は冠動脈疾患での入院時のLDLコレステロール値の分布です。青い線で囲んでいるのがいわゆる基準値です。(ちなみに私の値はグラフの一番端っこです。もちろん私は冠動脈疾患ではありません。)

実はこの分布、下の図に示すように、以前の記事「糖質制限とLDLコレステロール上昇6 みなさんの血液データから」で取り上げた、日本人の一般的なLDLコレステロール値の分布とほとんど変わりありません。

 

つまり、LDLコレステロール値が基準値であっても冠動脈疾患になる人が非常に多くいて、LDLコレステロール値は何の予想にもならないのです。しかも、黄色で囲んだ非常に低いLDLコレステロール値であっても、かなりの患者数です。だから、数値だけを見てLDLコレステロール値なんか低くしても何のメリットないのです。

一般人口の分布と、冠動脈疾患の患者の分布がほぼ同じということは、ただ単にLDLコレステロール値とは関係なく、どのような値であっても一定の割合で病気になるということです。LDLコレステロール値が高ければ危険で、低ければ安全ということは全くないのです。全く役に立ちません。

 

 

一方、上の図はHDLコレステロールの分布です。「驚きの結果!糖質制限におけるHDLコレステロールと中性脂肪 みなさんの血液データから その2」で示した下の図の一般人口のHDLコレステロール値と比較すると、かなり分布のピークが低値側に寄っています。基準値以下の黄色で囲んだ人がかなり多いことがわかります。(ちなみに私の値はまたグラフの端っこです)

糖質制限をするとほとんどの人がHDLコレステロール値が増加します。やはりHDLコレステロール値は60以上にはなりたいものです。現在の基準値は40以上ですが、低すぎると感じています。

 

 

上の図は中性脂肪値の分布です。基準値範囲の人でも非常に多くいることがわかります。(ちなみにまたもや私の値はまたグラフの端っこです)下の図の一般人口の中性脂肪値はかなりばらけています。私は150未満では基準値が高すぎるのでは?と思っています。80未満程度が妥当なのではないでしょうか?

患者の平均値でそのまま中性脂肪/HDL比を計算すると 161/39.7=4.1です。これでは小さな危険なsdLDLが優位になり、冠動脈疾患になるのも仕方がないでしょう。理想は1.3以下です。そうすればsdLDLはほとんどないと思われます。

LDLは数値ではなく、質です。医師側が数値を気にするのはスタチンで治療を考えているからです。数値を低くすることしかすることがないからです。しかし、今回の研究の様にLDLコレステロールは何も予想してはくれません。LDLコレステロール値を見てもそのLDLが大きな有益なLDLなのか、小さな危険なsdLDLかはわかりません。LDLコレステロール値は全く何の役にも立ちません。

逆にコレステロールが高い方が長生きであることを忘れないでください。

 

「Lipid levels in patients hospitalized with coronary artery disease: an analysis of 136,905 hospitalizations in Get With The Guidelines」

「冠動脈疾患入院患者の脂質レベル:Get With The Guidelinesの136,905件の入院を分析」(原文はここ

14 thoughts on “LDLコレステロール値は役に立たない

  1. これだとHDLが基準値未満とか中性脂肪が高いとリスク増という傾向がありそうですが、LDLに関しては何らの整合性も見られないですよね。
    なのになんでLDLだけが特に目の敵にされたんでしょう。スタチン(の売り込み)恐るべしということでしょうか。

  2. 最近になって私の健康診断結果にnon-HDLコレステロールの値が記載されました。LDLよりましかもしれませんが、non-HDL=LDL+30-HDLのようならば、結局はスタチンの売り込み材料なのでしょうか。
    私は中性脂肪/HDL比を知りスタチンを止めてよかったです。スタチンを5年飲んで倦怠感、運動後の激しい筋肉痛、赤褐色の尿、高血糖など経験し、おまけにスーパー糖質制限+スタチンという最悪なことも知らずにやりました。糖質は使えず、細胞のミトコンドリアは働けず私の体は大変だったでしょう。反省しているとともに、無知・無学の恐ろしさを実感しました。

    1. ゆでたまごさん、コメントありがとうございます。

      non-HDLはHDL以外すべて含んでいるため、何が本当に悪いか余計にわかりません。しかし、もっとも多いのはLDLであることを考えると、
      LDLと大して変わりないと思います。いずれにしてもスタチンを投与する根拠になってしまいます。

      ちょうどタイミングよく、明日リリース予定の記事と関連するので、明日の記事を読んでください。

  3. 51歳男、170cm55kgのLDL140台、A1c5.0、喫煙なしです
    頸動脈エコー検査で、左頸動脈の血管壁が1.6mmと診断されました。

    真島クリニックHPを見ると、油ものはとにかく禁止とありますが
    本当にそうなのでしょうか?

    できる対策はありますでしょうか?
    薬はまだ飲んでませんが、スタチンではなく、EPA製剤の処方をお願いしたいと
    思っているのですが動脈硬化にも改善効果はあるでしょうか?

    以上よろしくお願いします

    1. かわさん、コメントありがとうございます。

      IMT1.6mmはちょっと心配ですね。糖質制限はしてますか?HDLや中性脂肪値はどれくらいでしょうか?

      真島クリニックのことは詳しくは知りませんが、「油物はとにかく禁止」であれば、何を食べるのでしょうか?
      糖質とタンパク質だけでしょうか?
      エビデンスばかりにとらわれるのは良くありませんが、一人しか唱えていない仮説もよく検討が必要でしょう。

      脂質がダメではなく、糖質+脂質が良くないので、糖質制限をちゃんとすれば脂質はどんどん摂取した方が良いと思います。
      脂質禁止でEPA飲んでしまうと脳出血が心配な気がしてしまいますが…
      EPAでIMTは改善すると思いますが、どの程度かはわかりません。
      糖質制限でIMT改善というのは江部先生のブログで時折読者が報告しています。理論的には改善すると思います。

      1. 丁寧な回答をしていただきありがとうございます。
        HDLは62、中性脂肪は71です。
        よろしくお願いします。

          1. 実は、直近の病院で頸動脈エコーを受けると、
            血管壁は0.8mm未満でした(前の病院では一部1.6mm)
            病院によって、検査値が違うことってあるのでしょうか?

            さらに、直近の病院では、プラークの石灰化もあるが、
            これは今までの履歴を示すもので、血液検査の結果を踏まえると
            「塩分」と「小麦粉」が問題と言われました

            こんなことってあるのでしょうか?

          2. かわさん

            1.6と0.8では大違いです。前回の病院の検査が間違っていると思われますが、見ていないので何とも言えません。
            それにしても血液検査と石灰化の所見から、塩分と小麦粉と言われたのは失礼ですが笑えますね。
            どの血液の値を見て塩分と小麦粉と言ったのでしょうか?
            小麦粉は糖質なので石灰化の原因として、間違いではないですが、ピンポイントすぎです。お米は違うのでしょうか?
            全く理解できません。これは医師のコメントですか?

  4. 初めまして。
    ザンザスと申します。
    糖質制限を始めて3ケ月です。
    スーパー糖質制限をしながら普段山登りの為の筋トレと週末にトレランをしてます。
    会社の健康診断で急激にコレステロールが高くなり、糖質制限をしているのでコレステロールが高い旨を伝えているにもかかわらず、産業医から「あなたは高脂血症だから病院を受診して治療が必要です!」と言われました。
    因みに数値は下記の通りです。

    年齢:40
    身長:175㎝
    体重:61kg (1ケ月で5kg減)
    総コレステロール:366
    HD Lコレステロール:104
    nonH D Lコレステロール:264
    L D Lコレステロール:276
    中性脂肪:49
    血糖(空腹時):98
    H bA1c:5.2

    清水先生のサイトは糖質制限グループの方から教えて頂きました。
    高脂血症で治療が必要とまで言われたので、糖質制限を緩めるか悩んでおりましたが、先生の記事を読み安心いたしました。
    病院を受診すれば、病人にされ薬漬けにされるのでしょうね。絶対に行きません。

    私もトレランや筋トレをしているので、特に L D Lコレステロールが高いのだと思います。脂質を抑えれば良いと思って減らしてましたが、逆効果になるのでしょうか?
    どのくらいが必要量かが、まだ分からない状況です。

    1. ザンザスさん、コメントありがとうございます。

      1か月で5kg素晴らしいですね。BMIも20くらいなのでちょうどいいのではないでしょうか?
      nonHDLコレステロールよりもLDLコレステロールが高いわけがないのですが、LDLコレステロール値は計算値ですかね?計算すると252ですが…?
      糖質制限とLDLコレステロール上昇4 中性脂肪値が非常に低い場合のLDLコレステロール値の計算式」で書いた、中性脂肪値が低いときの計算式を使うと200ですね。
      LDLは実測値かもしれません。実測値は精度が今一つとも言われています。

      中性脂肪/HDL比は0.47と素晴らしい値なので、LDLはほとんど大きなふわふわした良性のLDLです。危険な小さなLDLは非常に少ないと考えられます。

      脂質の必要量は私もまだわかりません。しかし、LDLを下げるためだけに脂質摂取量を増やす必要はないと思います。
      体重が安定していればそこが丁度良いところかもしれません。トレランをしているのであれば150gぐらい脂質を摂っても問題ないと思いますが、
      個人差があるので一概にはわかりません。

  5. ご回答ありがとうございます。
    先に記載しましたL D L数値は健診結果に記載されていた数値です。おそらく実測値ということなんですね。
    先生の計算式では低く出るなと思ってました。
    L D Lが高いと駄目なのだと勘違いしておりましたが、良質なL D Lなら高くても大丈夫、むしろ高い方が良いことが分かりました。
    体調はとても快調なので、このままの生活を続けて数値がどう変わっていくのか楽しみながら観ていきます。
    誠にありがとうございました。
    これからも掲載記事を読んで勉強させて頂きます。

    1. ザンザスさん

      血液データから推測できるLDLは良質です。私自身の考えでは高い方が良い、または高くても問題ないと思います。
      ただ、LDLコレステロール値がどれほど多くても良いかどうかはまだエビデンスがありません。
      ご自身でご判断ください。

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