食品添加物によるインスリン抵抗性

糖質という言葉が広がりを見せて、糖質は摂りすぎは良くない、という認識はある程度広まってきていると思います。しかしもちろん、糖質制限までは行う人は少ないでしょう。多くの人は糖質依存ですから。

糖質を減らす場合に、いわゆる「ロカボ」商品を買う人もいるでしょう。「ロカボ」商品も他の低糖質商品も、まったく低糖質になっていないものもありますが、以前と比較すると糖質は少なくなっています。

ただ問題なのは、これらの商品のほとんどが超加工品であることです。加工食品は「○○を△%カット」とか書かれていますが、何かの成分を減らした分、別の何かを増やして味を調えたりします。通常、低糖質商品では糖質の代わりに人工甘味料が使用されています。糖質よりははるかに毒性は低いかもしれませんが、私は人工甘味料もおすすめはしていません。活性がありますし、代謝への影響もあると思います。そして超加工食品には大量の添加物が入っています。

糖質を減らしたいと思って、超加工品の低糖質商品を多く使用してしまうと、引き算よりも足し算が多くなります。糖質は減るけど、その他余計な添加物がたくさん摂取されてしまっています。添加物は急性毒性が無かったとしても、代謝に影響を与え、間接的には(場合によっては直接)病気につながることもあるでしょう。

食品添加物の中で食品保存料のプロピオン酸は一応安全とされています。プロピオン酸が日本の食品にどれほど使われているのかはよく知りません。裏側の成分表示にも保存料としか書かれていませんし。ただ、プロピオン酸って、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の一つです。健康に良いと言われています。保存料として含まれている量と腸内細菌が作る量がかなり違うのか、吸収速度の違いなのか?それとも腸内細菌が作るプロピオン酸と保存料のプロピオン酸では何か違いがあるのか?よくわかりません。

今回の研究では、健康な男女28人を対象に、プロピオン酸が代謝に与える影響を調べています。平均年齢は30歳、平均BMIは26.7です。

ブドウ糖注入開始の2時間後(T=120分)から15分かけて、500mgプロピオン酸カルシウムカプセル4個(プロピオン酸796 mg)または269mg炭酸カルシウムカプセル4個のいずれかの初回投与を受けました。各投与の最初のカプセルは、吐き気の発生を減らすために無糖ゼリーと一緒に与えられました。プロピオン酸投与量は、通常、プロピオン酸含有食品(チーズサンドイッチなど)に含まれている量を同等です。(図は原文より)

上の図は血糖値、インスリン、グルカゴン、血中のカテコールアミンのノルエピネフリン、エピネフリン、内因性グルコース産生の測定値の推移です。

プロピオン酸摂取はプラセボと比較してグルカゴンを有意に増加させ、T=180およびT=210で有意な増加が認められました。またT=150において、ノルエピネフリンも有意に増加させました。プラセボと比較して、血糖値、インスリン、エピネフリン、内因性グルコース産に有意な影響を及ぼしませんでした。

もう一つの方法の実験は、ブドウ糖注入開始から4時間後、およびプロピオン酸/プラセボの初回投与から2時間後に、T=240分で2時間の高インスリンクランプを開始しました。インスリンを100 mU/m 2 /分で5分間、続いて50 mU/m 2 /分で5分間注入し、続いて25 mU/m 2 /分で注入しました。血糖値目標を達成するために、0.455%ブドウ糖を含む20%デキストロース輸液が可変速度で注入されました。高インスリンクランプ開始から1時間後(T=300分)に、炭酸カルシウムまたはプロピオン酸カルシウムの2回目の投与を行いました。

上の図の左が正常血糖、右が低血糖の状態です。正常血糖条件下では、プラセボと比較して、プロピオン酸はグルカゴ、ノルエピネフリン、エピネフリンを有意に増加させましたが、内因性グルコース産生には有意な影響はありませんでした。

低血糖条件下では、プロピオン酸はプラセボと比較して、ノルエピネフリン、エピネフリンを有意に増加させました。グルカゴンは正常血糖条件と比較して低血糖誘発後に約50%有意に上昇しましたが、プロピオン酸摂取後のグルカゴンのさらなる上昇はプラセボと統計的に差がありませんでした。さらに、低血糖状態下では、プロピオン酸摂取はプラセボと比較して内因性グルコース産生を増加させました。

つまり、プロピオン酸摂取はインスリン拮抗反応の活性化、交感神経の活性化、すなわちグルカゴン、ノルアドレナリン、エピネフリンの増加をもたらしてしまいます。

別の研究でも、プロピオン酸はグルカゴンとFABP4(脂肪酸結合タンパク質4)の産生を増加させ、インスリン作用を阻害する結果が出ています。(ここ参照)FABP4は糖新生ホルモンであり、インスリン抵抗性とも関連しています。(ここ参照)

こんな食品添加物まみれの食事を毎日のように摂っていれば、長期的には代謝障害、様々な疾患を促進してしまう可能性は十分にあるでしょう。

でも、せっかく健康のために糖質制限をしても、代わりに有害物質を摂取していては、何をやっているのかわかりません。

できる限り、本物の食材を自分で調理して摂取しましょう。

「Acute effects of the food preservative propionic acid on glucose metabolism in humans」

「食品保存料プロピオン酸のヒトにおけるグルコース代謝に対する急性影響」(原文はここ

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