全国的に5月なのに暑い日が続いています。こうなると途端にテレビなどで「熱中症に注意してください」と騒ぎ始めます。そして「こまめな水分補給を!」と訴えます。

熱中症は高温多湿な環境に、身体が適応できないことで起きます。人間は体温を下げるために、末梢の血管を拡張させ、皮膚に多くの血液を流し、熱を体の外に放散します。同時に、汗をかき、その汗が蒸発するときに体の表面から熱を奪うことで、上がった体温を下げようと働くと言われています。

しかし、そもそも気温が高くなれば熱を放散することさえ難しいのです。恐らく皮膚の温度はそこまで高くないので、非常に暑い日では、逆に体温は皮膚から逃げず、外気の熱が皮膚、体に入ってくると考えられます。

そうすると汗が頼りになると考えますが、そもそも汗が効率よく蒸発して気化熱で体温を奪ってくれることを期待しています。汗が蒸発していくには空気の流れが必要でしょう。風がなければ汗がそのまま皮膚に残り、熱は奪われません。汗が流れ落ちてもそれは体温を奪いません。

実際には汗は恐らく衣服に吸収されるでしょう。その服の汗が蒸発すれば、熱は奪われると考えられるので、衣服の素材が重要でしょう。非常に吸収と速乾性に優れた素材の服を着るべきです。つまり、作業服などで汗の吸収が悪かったり、速乾性に優れないと、ただ汗をかくだけで体温は下がりません。

また、湿度が高い場合にも汗が蒸発してくれないので、多湿な環境では体温を奪ってくれないのです。

つまり、熱中症の予防で最も大切なのは高温多湿の環境を避けることです。5月の時点ではまだ体が汗をかくことに慣れておらず、十分な汗をかくことができない人もいます。普段から運動もしない人は急に暑くなっても汗があまり出ません。

熱中症予防に水分補給というのは完全に間違いとは言えませんが、過度な期待ができません。水分補給さえしていれば熱中症を防げるわけではありません。水分補給で熱中症が予防できるというエビデンスは見たことがありません。逆に大した予防策とは言えないものです。

しかし、世の中では「水分補給!」が連呼され、「水だけの水分補給は危険!」「汗に塩分も出るので、塩分補給を!」と洗脳されます。そしてそこから導き出されるのは、「熱中症予防には水分と塩分を含んだスポーツドリンクを!」となるのです。熱中症予防などをGoogleなどで検索すると上位に必ずスポーツドリンクの企業が現れ、スポーツドリンクの有効性を書いています。企業戦略におどろされてはなりません。(「我々はいつから健康のために「水分補給」をしなければならなくなったのか?」参照)

医療従事者でさえ、気温が上がるとスポーツドリンクを飲むことを推奨する人がいます。

気温が上がっても、室内の環境は調整できます。室温の温度や湿度を下げれば、水分補給は必要ありません。高齢者が室内にいるのに、夏になるとスポーツドリンクを飲まされているなんて、笑えない話もあるようです。当然、運動をしていない状態でスポーツドリンクを飲めば、高血糖になってしまいます。

外出するからとペットボトルを持たないと不安な人も増加しているような気がします。運動をしていない状態で、涼しい乾きの良い服を着ていて、1時間くらいで脱水になったり、体の塩分が不足するようなことは考えられません。水ならまだしもスポーツドリンクの登場する場面はありません。(「運動時にスポーツドリンクを飲み過ぎて死なないために」参照)

仕事で暑い中、服装も作業着などが必要な場合、確かに水分補給は必要かもしれません。しかし、塩分は梅干しや塩などで別に摂った方が良いです。糖質のたっぷり入ったスポーツドリンクは避けるべきです。

しかし、先ほども書きましたが、何よりも重要なのは高温多湿の環境に長時間いることを避けることです。

夏の高校野球は虐待です。暑さ指数(WBGT)というものが28℃を超えると熱中症患者が著しく増加すると言われています。

運動に関する指針(日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)より)

気温
(参考)
暑さ指数
(WBGT)
熱中症予防運動指針
35℃以上31℃以上運動は原則中止特別の場合以外は運動を中止する。
特に子どもの場合には中止すべき。
31~35℃28~31℃厳重警戒
(激しい運動は中止)
熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。
暑さに弱い人※は運動を軽減または中止。
28~31℃25~28℃警戒
(積極的に休憩)
熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。
激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。
24~28℃21~25℃注意
(積極的に水分補給)
熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
24℃未満21℃未満ほぼ安全
(適宜水分補給)
通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。
市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

甲子園は夏のWBGTが連日28℃を超えており、日中は31℃を超えることも珍しくありません。やってはいけない環境でスポーツをさせているのです。

熱中症予防を叫ぶ前に、夏の高校野球の中止を叫ぶべきです。炎天下の中何時間も運動を続けさせられている子供たちを見て、感動したり、喜んでいる大人たちの神経は大丈夫なのでしょうか?

2 thoughts on “熱中症予防に水分補給?”
  1. 64歳の私は糖質制限をして4年ほどになりますが、糖質制限を始めて1年後に室内熱中症にかかりました。
    前日は不眠状態でした。朝からショッピングに出かけ夕方に家に帰ってまいりました。いつも水分補給はしっかりとしております。当日の夕方、全開にしておりました北側の窓に扇風機を置きその前にソファーでくつろぎながらアルコールを飲んでおりました。うたた寝をしたのですがその時の扇風機の風はほぼ熱風でした。それが原因のようにも思います。とにかく室内サウナ状態だったわけです。
    次の日の夕方から体の具合が悪くなり、体温計で体温を計測すると39度3分の熱がありました。これはダメかもしれないと思い、一人暮らしの私は救急車を呼んで病院に運んでもらいました。三日間入院しましたが、その後の体調不良は2ヶ月近く続きました。
    糖質制限をしてからの平熱が約0.5度から1度ほど上がっております。制限以前は平熱が35度7分位でしたが、制限をしてからは朝が36度4分夕方は36度8分ぐらいにまで上昇しております。
    これはつまり免疫力抵抗力が上昇していることだと言うふうに理解をしております。
    ところが熱中症に関していいますと、そもそもの体温が高いと言う事は熱中症に対してはややリスクが大きいのかなとも思っております。
    清水先生いかがお考えでしょうか?
    平生より水分摂取はしっかりとるように心がけております。しかし熱中症は水分摂取で防止できるわけではありません。またスポーツドリンクを摂取して熱中症を防げるわけではありません。
    これは私の体験からも言えると思います。体の中に熱が入ってしまうともう防ぎようがありません。いわゆる焼け石に水と言うやつですね。
    マスコミが言うこまめな水分補給、こんなものは何の役にも立たないと思っています。
    とにかく暑さを防ぐ、エアコンをつけて環境を涼しくする、考えられる対応としてこれぐらいでしょうか?
    生卵を茹でてゆで卵が出来上がる。ではゆで卵をもう一度冷水で冷やし生卵にする事は可能でしょうか?。こんなことはできない。熱中症の恐ろしさはそういうことですね。

    1. ジェームズ中野さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限をしてから平熱が上がったということですが、その前がどちらかというと低すぎると思います。
      代謝が良くなり、熱産生が上手くできるようになり、平熱が上がったのかもしれませんね。
      熱中症のリスクに関しては平熱との関連はよくわかりませんが、関連していないと思っています。

      水分補給は恐らくエビデンスがないと思います。必要ないとは思いませんが、喉が渇いたときに飲めば十分です。
      スポーツドリンクも、塩分と糖分を一緒に摂った方が吸収が速いと言いますが、緊迫した脱水でもないのであれば、10分吸収が遅くても何ら問題にはなりません。
      水やお茶で十分ですし、糖質を摂る意味が分かりません。

      仰る通り、涼しい環境が最も重要です。

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