脂質と糖質同時摂取で糖質の吸収が緩やかになる?血糖値とインスリン その2

前回の記事「その1」では、脂質と糖質の同時摂取で血糖値の上昇は健康な人では抑えられるものの、インスリン分泌は糖質だけのときと変わらず、糖尿病があるとさらにインスリン分泌が高まってしまうことを書きました。脂質としてバターを50gという大量に摂取しているので、現実とは合わない可能性もあります。

今回は別の研究ですが、2型糖尿病の方を対象としています。7人の男性糖尿病の人が、朝食用の食事として50gのポテトを単独で、または50gのポテトと同時に5、15、30、または50gのバターを摂取しました。前回の記事の研究よりもバターの量が様々であり、現実的な量のものもあります。比較のために、参加者は2回に分けて50gのグルコースも摂取しています。その結果は以下のようです。(図は原文より)

上の図は血糖値の変化です。左がその推移、右が5時間の曲線下面積です。ちょっと見づらいですが、Aのグラフの凡例は一番上が水のみ、次がポテトのみ、その次から順にポテト+バター5g、ポテト+バター15g、ポテト+バター30g、ポテト+バター50g、50gグルコース1回目、50gグルコース2回目です。Bのグラフも水は除いて左から同じ順番になっています。

そうすると、グルコースが最も血糖値が高く、曲線下面積も大きくなりましたが、それ以外はほとんど違いはありません。血糖値のピークがバター30gと50gの2つだけが120分になっています。これは前回の研究と同じです。恐らく、大量の脂質を同時摂取すれば、糖質の吸収が緩やかになり、ピークが少しずれるようです。しかし、90分値を測定しているともしかしたらそんなに変わらない可能性はあります。いずれにしてもピークは60分か120分の違いはあるにせよ、ポテトだけと比較しても、ポテトバターでも血糖値スパイクは起きていますし、ピーク値も曲線下面積も何ら変化は認められません。つまり、糖質と脂質を同時摂取のメリットはありません。

それにしても、グルコース摂取とポテトの摂取でピークの時間が同じであることは非常に面白いですね。グルコースは30分くらいでピークになりそうですが、もしかしたら糖尿病と関連があるのでしょうか?健康な人の前回の研究ではポテトでも30分がピークでしたから。

上の図はインスリン値の変化です。これも前回と同様に、ポテトのみよりもポテトバターの方が曲線下面積が大きくなっています。しかも、たった5gのバターを同時摂取したときにすでにポテトのみよりもインスリン分泌が多くなるのです、15g以上のバターはそれ以上摂取してもインスリンの分泌は変わっていません。つまり、15gまでは脂質を摂れば摂るほどインスリン分泌が増加してしまうのです。

上の図はグルカゴンの変化です。グルカゴンといえば、インスリンと反対の作用を示し、血糖値を上げる方に作用します。通常、グルカゴンはインスリン分泌がされていないとき、またはタンパク質を摂取した時に分泌されます。(「タンパク質摂取と、インスリンとグルカゴンの分泌」参照)

タンパク質摂取でインスリンが分泌されるのですが、そのとき同時にグルカゴンも分泌されるため、タンパク質摂取では通常血糖値が変動しません。

50gグルコースのグラフを見てみれば、グルカゴン分泌は30分値でやや増加しているものの、その後は確かに低下しています。そしてポテトのみを見ると、なんと30分値がグルカゴンスパイクを示しています。1時間値でもまだ通常よりも分泌が増加している状態です。なぜ?

そして、ポテトバターを見るとさらにグルカゴンの分泌は増加します。120分で要約ベースラインに戻りますが、50gバターではその後も分泌低下まではしていません。50gより少ないバターの場合ではグルカゴン分泌はベースラインよりは少ない状態で推移しています。何で?今回はタンパク質ではなく、脂質の摂取です。

何やら、まだまだ私の知識は浅いようです。脂質摂取でグルカゴン分泌というのは知りませんでした。このグルカゴン分泌の増加が、もしかしたら糖質脂質同時摂取のときのインスリン分泌増加につながっている可能性はあります。

前回の健康な人のグラフを思い出すと、下の図のように、血糖値に見合わないほどのインスリンが分泌されています。これはもしかしたら、グルカゴン分泌のせいかもしれません。

しかし、今回の研究では面白いことに、グルコースでは30分で少しグルカゴンが増加したものの、その後大きく分泌が低下していますが、ポテトでは30分、60分はグルカゴンが増加し、特に30分値は非常に多くのグルカゴンが出ています。もしかしたら、同じ糖質であっても、でんぷんとブドウ糖ではグルカゴンの反応が違う可能性があります。でんぷんは分解されればブドウ糖のはずですが、その分解に関係しているのでしょうか?なぞは深まるばかりです。どなたか知っていたら教えてください。もしかしたら、バターに少量含まれるタンパク質がグルカゴンのスイッチを押したのかもしれません。わかりません。

上の図は中性脂肪の変化です。空腹時の中性脂肪の平均が184mg/dlだそうです。300分値では50gバターで50mg/dLほど増加しているので、230くらいになっています。50gグルコースやポテトのみ5gバターではそれほどTG(中性脂肪)スパイクは認めませんが、15g以上のバターでは大きく中性脂肪が増加しています。食後の中性脂肪の増加は仕方がないと思っているかもしれませんが、以前の記事「食後の中性脂肪スパイクとsdLDLの関連」「食後の中性脂肪が増加するとLDLが小さくなる」で書いたように、食後のTGスパイクは小さな危険なLDLをもたらします。また「絶食時ではない中性脂肪値上昇も危険性がある」で書いたように、空腹時でなくても中性脂肪の増加は様々なリスクを高くします。

糖尿病であれば、糖質と脂質同時摂取のメリットは全くなく、大きなデメリットがあります。しかし、糖尿病と診断されていなくても、ほとんどの人は脂質の摂取で自分のインスリンの変化がどのように起きているのかは知りません。健康な若者であっても糖質脂質同時摂取でインスリン分泌は増加するので、ましてや40代や50代以降では食後高血糖を起こしている人も多く、糖尿病に近い血糖値変動、インスリン分泌を示す可能性があります。

糖質に脂質同時摂取は「危険」です。(ものによりますが)クロワッサン1個には約10gの脂質、18gの糖質を含みます。クロワッサンを2つも3つも食べたらどうなるでしょう?食パン1枚には約2.5gの脂質、約30gの糖質を含みます。食パンにバターを塗って脂質量を増やせば、本当に血糖値が抑えられ、安全な食事ができると思いますか?

オリーブオイルたっぷりのペペロンチーノには、約15gの脂質と約75gの糖質が含まれています。果たしてオリーブオイルたっぷりだから健康的でしょうか?

私は怖くて食べません。インスリンがドバドバかもしれません。ご自身で判断してください。

「Effect of Added Fat on Plasma Glucose and Insulin Response to Ingested Potato in Individuals With NIDDM」

「2型糖尿病患者のポテト摂取に対する血糖値およびインスリン反応に及ぼす脂肪添加の影響 」(原文はここ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする