ノーベル賞を受賞した本庶佑京都大特別教授が今回の発明に対する特許の対価の上乗せを求めていますが、どうやらうまくいっていないようです。
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小野薬品が本庶氏との対価上乗せ交渉を断念
5/22(水) 産経新聞より
小野薬品工業は22日、2018(平成30)年のノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許契約の見直しを求めている問題で、対価の上乗せ交渉を断念したことを明らかにした。小野薬品は、対価上乗せの代わりに「将来の基礎研究の促進や若手研究者育成のために京都大学への寄付」を提案しているとした。
小野薬品と本庶氏は、平成18年に特許契約を締結。同社は「本庶氏と当社が合意のもと締結した」と主張。ただ、本庶氏側から契約見直しの要請があり、23年から交渉を続けていたが合意に至らなかった。
対価上乗せ交渉の打ち切りと京大への寄付という代替案は、昨年11月に提案したという。対価上乗せ交渉の打ち切りについて同社は「7年間協議したが、本庶氏の考える金額との乖離はあまりにも大きい」と説明した。
新たな提案で合意できれば、同社が本庶氏側への支払いなどに備えて26年から積み立てている引当金約172億円(31年3月末時点)の一部から支払う考えだ。現時点で本庶氏側からの回答はないという。
また、同社は「今後も契約に基づく対価を支払う」とのコメントを発表し、18年に合意した契約に基づく特許料を今後も支払う考えも示した。
本庶氏は4月に開いた記者会見で、同社からこれまで支払われた約26億円の対価に関し、納得できない点があるとして受け取っておらず、全額法務局に供託していることを明らかにした。また「若手研究者の育成のためにも、オプジーボの売り上げで得られる(特許料の)対価引き上げを求め、小野薬品と協議したい」と主張。1000億円規模の拠出を求めていた。
一方、本庶氏は22日、小野薬品の発表に対し、弁護士を通じコメントを発表した。
そのなかで「小野薬品から京大になされた寄付の提案金額は、同社が従前からしていた特許料率の引き上げ提案に照らすと、明らかに引き下げ」と指摘。「こうした経緯を明らかにしていない今回の同社の発表は意図的かつ不正確で、同社が従前の提案を復活させないのであれば、訴訟提起を検討する」とした。
本庶先生は何と1,000億円規模の引き上げ求めているようです。これまでには26億円が支払われています。このようなノーベル賞レベルの発見に対する対価はどのように考えるのが妥当なのかは見当がつきません。
確かに基礎研究というのはお金がかかるでしょう。しかし、そこで発明、発見したことが人類のためになって初めて「素晴らしい発見」なわけです。そうであるならば、若手研究者育成だけではなく、このオプジーボを使う人のことを考え、薬価引き下げに動いた方が、今回の発見が生きるのではないでしょうか?
当初オプジーボは年間3,000万円以上の価格でしたが、現在は1,000万円ほどに低下してきています。しかし、その分適応は広がり、日本の医療保険の財政が破綻しかねません。
確かに素晴らしい発見をしたのですが、その対価は様々なこととの兼ね合いがあると思います。そして、最近は白血病などの治療薬の「キムリア」という薬が3,349万円という超高額で保険適応になっています。
日本の医療保険はみんなで助け合いの精神で、これまで維持されてきました。しかし、このような超高額薬がどんどん出てくると、その薬を使う人と使わない人の差が非常に大きくなってしまいます。3,000万円以上する薬でも、本人の負担は数十万円です。それ以外はみなさんから集めたお金が使われます。
「困ったときはお互い様」という気持ちがあっても、このような超高額薬は、それを使わない人にとっては、言葉は悪いですがある意味「迷惑」な存在です。このままでは財政が破綻してしまうからです。そうでなくてもどんどん医療費は膨らむばかりです。
日本の医療保険制度は、このような超高額な薬を想定していない時代に作られた仕組みです。現状には合っていません。だから新たな仕組みを考えなければならないかもしれません。
このような超高額の薬の場合は別枠にする必要があると思います。
また、さらに現在の薬の中で保険適応から外せるものはどんどん外すべきでしょう。例えば湿布。こんなのを大量に使っているのは日本くらいでしょう。うがい薬やビタミン剤も保険から外すべきです。インフルエンザの検査ももう少し工夫して、鼻水を使って検査できるようにして、薬局で販売し、自宅でできるようにする。そして、薬が欲しい人は陽性が出たらクリニックに行き薬を処方してもらう、というようにするのはどうでしょう。
また、だらだらと処方されている胃薬などは2週間以上は負担を増やしたり、保険外にするなど様々な工夫が必要です。そうしないと本当に破綻してしまいます。
更に、妊婦に対する加算が問題になっていましたが、それよりも肥満加算やタバコ加算をすべきです。
本庶先生が特許料の上乗せを求めているのには他の要因もあるのかもしれません。自分の受け取る特許料が大きく減りそうなのです。(元の記事はここ)
本庶さんの主張認めず 米地裁「オプジーボ発明は3人」
5/23(木) 朝日新聞デジタルより
ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授が持つ、がんの免疫治療薬に関わる特許について、米ボストンの連邦地方裁判所は、米などの2人の研究者も発明者に加えるよう求める判決を出した。判決が確定すれば、小野薬品や本庶さんに入る特許収入が減る可能性がある。
判決は17日付。発明者と認められたのは、ダナファーバーがん研究所のゴードン・フリーマン氏ら。免疫治療薬オプジーボの開発につながる本庶さんの6件の特許に2015年に同研究所が2人を発明者として加えるよう訴えていた。本庶さん側は、2人の貢献は発明者に加えるほど際立ったものではないと主張していた。
判決は、3人が創薬につながる、免疫のブレーキ役をする「PD―1」「PD―L1」という分子の働きについて、1999年から2000年にかけて頻繁に会議して共同で論文を発表したり、実験データの共有をしたりしていたと指摘。「本庶氏の特許の発明の概念は、3人の科学者の協力の結果である」と結論づけた。
フリーマンさんは「我々の重要な貢献を裁判所に認めてもらえてうれしい」とコメントした。本庶さんの代理人は「判決内容を精査し、対応について今後検討していく」としている。
つまり、今回の発見は本庶先生一人のものではなく、他の2人も関わっていて、その2人にも特許料を受け取る権利があるとされたのです。
せっかくのノーベル賞ですが、何となく後味の悪い形になりそうな気配です。