脂肪肝を侮っている人は非常に多いと思います。ただの肥満の徴候のように思っているのかもしれません。非アルコール性脂肪肝は最も頻繁に認められる、糖質過剰症候群の病態の一つです。現在日本人の25%以上に認められるとも考えられています。
非アルコール性脂肪肝の10~30%はより悪い状態の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進行します。そうすると、その先には肝硬変や肝臓がんが待ち受けています。
今回の研究は非常に大規模です。ヨーロッパの1,800万人の患者のデータを分析しています。これを見ると、脂肪肝とその後の肝炎がどれほど怖いものなのかがわかります。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は肝硬変になるリスクを表しています。NAFLDは非アルコール性脂肪肝、NASHは非アルコール性脂肪肝炎です。NAFLDまたはNASHがあると肝硬変になるリスクはなんと、4.73倍です。NAFLDだけを単独で見てみると、肝硬変のリスクは5.83倍、NASH単独ではなんとなんと、22.67倍です。
上の図は肝臓がんのリスクです。NAFLDまたはNASHがあると肝臓がんになるリスクはなんと、3.51倍です。NAFLDだけを単独で見てみると、肝硬変のリスクは3.15倍、NASH単独ではなんとなんと、8.02倍です。 恐ろしい~!
さらに恐ろしいことにNAFLDがあると肝硬変と診断されるまでに中央値で2~2.9年という短期間であり、NASHがあると肝硬変と診断されるまでに0.5~3年という短さです。
HR(95%CI) | |
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現在の喫煙 | 1.50(1.41; 1.60) |
年齢(歳) | 1.04(1.03; 1.04) |
糖尿病の既往 | 2.92(2.76; 3.08) |
高血圧の既往 | 1.07(1.01; 1.13) |
BMI | 1.04(1.03; 1.04) |
上の表NAFLDやNASHがある場合に肝硬変や肝臓がんになるリスクと関連している因子を表しています。喫煙は1.5倍になりますが、何と言っても糖尿病の既往があると2.92倍にもなります。糖質過剰症候群の恐ろしさです。
以前の記事「脂肪肝はただの肥満の症状ではない」でも書いたように、脂肪肝は侮れません。そして、「糖質制限は非アルコール性脂肪肝を劇的に改善する」「江部康二先生「内臓脂肪がストンと落ちる食事術」が発売になりました」などで書いたように、糖質制限で脂肪肝は劇的に改善します。
脂肪肝がわかったら躊躇なく糖質制限でしょう。
「Risks and clinical predictors of cirrhosis and hepatocellular carcinoma diagnoses in adults with diagnosed NAFLD: real-world study of 18 million patients in four European cohorts」
「非アルコール性脂肪肝と診断された成人における肝硬変および肝細胞がん診断のリスクと臨床的予測因子:4つのヨーロッパのコホートにおける1,800万人の患者の実世界研究」(原文はここ)