今回の「糖質過剰」症候群の出版の締め切りに間に合わなかったのですが、糖質過剰症候群の一つの病態として重要なものと考えている疾患があります。それは線維筋痛症です。
線維筋痛症は全身的慢性疼痛疾患であり、全身に激しい痛みが起こる病気です。原因は未だ特定されていません。随伴症状は実に多彩です。随伴症状として、疲労感、睡眠障害、うつ、自律神経失調、頭痛、過敏性腸炎、ドライアイ、記憶障害などあり、非常に個人差があります。慢性関節リウマチとの関連も疑われています。しかし、その随伴症状のどれをとっても糖質過剰症候群を臭わせるものばかりです。
今回の研究ではインスリン抵抗性の治療が線維筋痛症の痛みを改善するというものです。(図は原文より)
上の図は糖尿病でない人と線維筋痛症の人とのHbA1cの比較です。横軸は年齢で、縦軸はHbA1cです。緑が線維筋痛症、青と赤が糖尿病でないコントロール群です。そうすると明らかに線維筋痛症では同じ年齢の人と比較して、HbA1cが高いことがわかります。HbA1cは異常値を示しているかどうかというよりは、同じ年齢の人と比較し高いかどうかを見る必要があります。つまりコントロール群では40代の人ではHbA1cは5前半です。しかし、線維筋痛症では平均すると5.7を超えているようです。
上の図は痛みのスコアを表しています。痛みのマックスは10です。左の赤いグラフは治療前の初期段階、真ん中の青いグラフは標準治療、右の緑のグラフな標準治療にメトホルミン500mgを追加しています。標準治療は、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(アミトリプチリン、デュロキセチンまたはミルナシプラン)および/または膜安定化剤(ガバペンチンまたはプレガバリン)のいずれかで構成されました。メトホルミンはインスリン抵抗性を改善する薬です。
そうすると、治療前と比較して標準治療でもやや痛みは低下していますが、メトホルミン群ではほぼ痛みがゼロ近くになっています。メトホルミン群の50%は実際に痛みがゼロになっているのです。劇的です。
上の図はそれぞれの患者の痛みのスコアを示しています。I-NRPSは治療前、ST-NRPSは標準治療、M-NRPSはメトホルミン使用、一番右のLMT-Mはメトホルミン使用期間(月数)です。メトホルミン群では痛みスコアでは最高でも2しかありません。
糖尿病と対照群を比較すると有意に糖尿病群の方が線維筋痛症が多いという研究があります。(その研究はここ)対照群が2%に対して糖尿病群では17%です。さらに糖尿病群の中で線維筋痛症がある人とない人でHbA1cを比較すると線維筋痛症がある人では9.2%、ない人では6.4%と大きな違いを認めました。
以前から線維筋痛症は糖質過剰症候群だと思っていたのですが、なかなか良い論文が見つかりませんでした。今回非常に面白いエビデンスが出たので、記事にしました。
線維筋痛症は恐らく末梢神経障害の一種ではないかと思っています。末梢の小さな細い神経線維が糖化やAGEs化で機能異常、機能障害に陥っていると思われるのです。
線維筋痛症に糖質制限は必須と考えます。
「Is insulin resistance the cause of fibromyalgia? A preliminary report」
「インスリン抵抗性は線維筋痛症の原因ですか?速報」(原文はここ)
ヘモグロビンA1Cが高い人は糖質過剰なんですか?
糖質とらなくても高い人はいますよね。
山田さん、コメントありがとうございます。
糖質を摂らないのにHbA1cが高いというのは、例えばどんな状態の人でしょうか?
何年か前、米を食べてなかった頃の私です。白米が好きでないので。釜池さんの本を読んで、米食わなくてもいいんだと思って食べなくなった。麺好きでも粉もん好きでもないし甘党でもないので、肉と魚と少しの野菜を食べてた。それでもフルマラソンやウルトラを走れてたので不具合はなかったんですけどね。検診では随時血糖値は100越えてた。
今は故あって多少は食べるようになって80くらいです。米食べたほうが平均としては血糖値は下がる、というのが私の実感です。
山田さん、コメントありがとうございます。
血糖値は様々な要因で上昇します。ストレスや不眠、運動、インスリンの分泌能低下があればタンパク質摂取でも上昇する可能性があります。
HbA1cは平均値であり、高血糖と低血糖が両方あれば低くなります。お米を食べている場合、80のときもあれば180のときもあるかもしれません。
随時血糖値が100より少し高いだけであれば、問題ありません。それよりも食後高血糖を避ける方が重要ではないかと思います。
答えになったでしょうか?
食後は110くらいでしたよ、先日の採血では。朝食はおにぎり2こ。
それはともかく、ヘモグロビンA1Cが高いと糖質過剰だと先生は考えておられる、と思ってよろしいですか。
その答えを知りたいのですけど。
山田さん、HbA1cは糖化したものなので、糖質過剰摂取しなければ異常値が出ることはないのではないでしょうか?
摂取した糖以外でもそうなるのでは。糖新生とか。
山田さん、糖新生だけでHbA1cが異常値になるというのは私は知りません。
これ以上の知識はありません。
2019年12月24日のヤフーニュースに線維筋痛症を発症したという女性アナウンサーの記事が載りました。清水先生の該当記事を思い出しましたので、ここに注意喚起したいと思います。
ところで、わたくしごとですが、もうすぐ2歳になる僕の孫が断乳と同時に食欲が旺盛になり、ふんどし担ぎの相撲取りのごとく、おそろしい量のパンをパクついて、制限するのに難儀しております。
僕自身は糖質過剰摂取の害悪については十分心得ているつもりですが、親(つまり僕の子)に対して、注意の仕方がなかなか難しい。
それでも、孫が4歳になって聞き分けが出てきたら、僕がシャシャリでていって、タンパク質のワンパク児に育てていきたいと思っています(笑)
やまもと一平太さん、コメントありがとうございます。
お孫さんは、パンに脳が反応してドパミンを出してしまったのでしょうね。
親を差し置いて糖質制限をするのは、なかなか難しそうですね。