日本糖尿病学会が「仙台宣言2019」を発表!

日本糖尿病学会は、2019年、仙台で開催されていた第62回日本糖尿病学会年次学術総会において5月24日、日本糖尿病学会と国際糖尿病連合西太平洋地区会議、アジア糖尿病学会の3団体は連名で、大規模災害時の糖尿病管理に関して日常からの備えの重要性を社会に積極的に啓発していくことをうたった「仙台宣言2019」を発表しました。(記事はここ

(「仙台宣言2019」のプレスリリースはここ

要旨は、

糖尿病患者は”災害弱者”と捉え、災害発生時の健康被害を最小化するために、普段から準備をしておこう、というものです。つまり、自然災害に際して、糖尿病の管理は極めて難しく、災害時に生命に危機をおよぶ可能性が高く、糖尿病患者さんはもちろん、糖尿病診療に従事する医療従事者は、震災に対して普段から十分に準備をしておく必要がある、ということです。

何かわかったようなわからないような…?普段からの準備とは何でしょうか?

最も重要なのは自然災害時の救援物資の中での食料が、パンやおにぎり、カップ麺など糖質の塊ばかりが支給されてしまうことです。糖尿病学会がわざわざ宣言を出すのであれば、救援物資や災害時のために備蓄しておく食糧について、保存の効くサバの水煮缶やサラダチキン(サラダチキンは常温は難しいのかもしれませんが)など、可能な限り糖質以外のものにするように宣言するべきでしょう。避難先で糖質過剰状態にさせられ、さらにストレスが非常に増加した状態に置かれるので、血糖値が上昇してしまいます。食料はタンパク質メインにすべきです。救援物資が糖質ばかりなのは非常に問題なので、せっかく災害と絡めて宣言を出すのであれば、肉や魚類で保存の効くものをお願いしたい、となぜ言わない?

しかし、日本糖尿病学会は「普段からの準備」として、次のように言っています。

「災害発生時における糖尿病患者の健康被害を最小化するためには、普段からどのような取り組みが必要か。記者会見において日本糖尿病学会理事長の門脇孝氏は、薬剤の備蓄という観点から提言。糖尿病患者に薬剤を処方する際、医師は次回受診時を見据えて少し多めの量を処方するのが通例と思われるが、災害対策としては、1カ月分程度は余分に処方し、患者はそれを冷蔵庫に保管しておくことなどが考えられるとした。また、災害発生時には診療録が利用できなくなる可能性もあるため、診療録がなくても医師が適切に治療できるよう、患者はお薬手帳、糖尿病連携手帳などを災害時にも保持することが重要だと指摘した。」

薬を1か月程度余分に処方だって。とほほ…。お薬手帳の保持だって。あらら…。

災害はいつ起きるかわからず、自宅に居るときであれば、1か月余分な処方や手帳を持って逃げることももしかしたら可能かもしれません。しかし、緊急の場合や外出時全く役に立ちません。常に肌身離さず薬1か月分とお薬手帳を持てということ?このような宣言に意味があるのでしょうか?

また、もうみなさんご存じだとは思いますが、先日の江部先生のブログの記事に「しらねのぞるばの暴言ブログ」の記事を取り上げていますが、今回の日本糖尿病学会の年次学術集会では糖尿病治療ガイド 2019年改訂版の発行は先延ばしになったようです。手の平を返すこともできず、迷走しているようです。

今回の学会の中で、従来のカロリー制限食で設定していたカロリー設定は過少であったことは認めたようです。1600kcalは少なすぎるので、改訂案の具体例として、2200kcalくらいを認めるとのことです。いまだ、カロリーから離れられないようです。しかし、1600kcalを2200kcalに増やしたらどうなるでしょうか?1600kcalの60%を糖質で摂ると、糖質量は240gです。2200kcalの60%を糖質で摂ると、糖質量は330gです。90gも糖質が多くなってしまうので、多くの患者さんはさらに糖尿病が悪化するでしょう。このような単純なカロリー制限を緩めただけの改訂になったとしたら最悪な改悪になってしまいます。

血糖値を下げるには糖質を減らすしかないのに、改訂で摂取エネルギーの中の糖質の割合を変えなければ、糖質が増加するだけなのです。

これを聞いた日本糖尿病学会の会員の先生、専門医の先生は何も思わなかったのでしょうか?誰も指摘しなかったのでしょうか?

「仙台宣言2019」とカッコ良いことを宣言するのであれば、是非「これまでのカロリー制限は間違いでした。申し訳ありませんでした。これからは生理学的事実に基づき、糖質を制限することを治療、栄養療法の基本と致します。」と宣言してもらいたかったですね。

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