私は「ちんちくりん」で身長が低い方です。若い頃はもう10cm身長が高ければ、「自分の人生ももっと良かったのに」とつまらないことを考えていたこともありました。今になってみれば、この身長でもそれなりに楽しい人生です。
しかし、身長というのは成長因子が関係し、病気が関係します。成長ホルモンだけでなく、インスリンやIGF(インスリン様成長因子)も大いに関連するでしょう。それらがどれくらい分泌されて、どのように体の細胞、組織に作用するのか、感受性がどうなのかによって身長も変わるのでしょう。
様々な研究では身長と2型糖尿病との関連を示しています。身長が低いほど糖尿病のリスクが高くなるというものです。(図は原文より)
上の図は左が男性、右が女性で、それぞれ横軸は左から身長、座高、脚の長さ、脚の長さと身長の比を示しています。そして縦軸はリスク比を示しています。身長は10cm増加に対するリスク比、座高と脚の長さについては5cm増加に対するリスク比です。
年齢、潜在的なライフスタイル交絡因子、教育、および腹囲の調整後、身長の増加は糖尿病リスクの低下と関連がありました。リスクの比は男性0.59、女性0.67でした。つまり身長が10cm高くなると糖尿病になるリスクが男性では40%ほど、女性では33%ほど低下するのです。
さらに、身長と糖尿病リスクとの逆相関のかなりの割合が肝臓脂肪量の低下に起因していることも結果は示しています。具体的には、女性では、脂肪肝指数(FLI)の調整により、身長と糖尿病リスクとの関連が大幅に弱まりました。(脂肪肝指数については「脂肪肝はただの肥満の症状ではない」参照)どうやら、身長の高い人では肝臓脂肪量が低いという研究結果もあるようです。ということは、身長の低い人はより果糖摂取量を減らす必要があるのかもしれません。
欧米人よりも日本人は糖尿病になりやすいと考えられています。それは、このような身長が欧米人よりも低いことも関連するのでしょう。つまり、インスリンやIGFの分泌量や感受性がもともと人種的に違うのだと思います。
しかし、大人になった今、身長をどうすることもできません。糖尿病のリスクを下げるために背伸びしても無駄です。コントロールできない要素をどうするか悩んでも無駄です。しかし、食事はコントロールできます。だから、身長が低い人はより若い時から、より注意して食事をする必要があるのかもしれません。もちろん糖質制限です。
「Associations of short stature and components of height with incidence of type 2 diabetes: mediating effects of cardiometabolic risk factors」
「低身長および身長の構成要素と2型糖尿病の発生率との関連:心血管代謝危険因子の媒介効果」(原文はここ)
清水先生
「身長が低いほど糖尿病になりやすい」というのは、少し違和感を感じました。
と言うのは、「身長が高いほどガンになりやすい」ということを聞いたことがあり、私なりに納得できていたからです。
銀座東京クリニックの福田一典院長も、以前のブログで「高身長は発がんリスクを高める」という記事を書かれています。やはりインスリンとIGFが関連しているとおっしゃっています。
糖尿病の人がガンになりやすいのは、多くのエビデンスもあるようですので、そうなると、この身長と糖尿病とガンの関係はどう解釈したらよいのでしょうか?
素人には矛盾があるように見えてしまいます。
あきにゃんさん、コメントありがとうございます。
仰ると通りだと思います。そのことについていずれ記事にしたいと思っています。