過敏性腸症候群などの機能性腸疾患は多因子性だと考えられていますが、糖質過剰症候群の一つだと考えています。このような機能性腸疾患は子供でも珍しくありません。
機能性腸疾患に対し、低FODMAP食を用いると非常に有効だという研究があります。
FODMAPというのは、
F(fermentable:発酵性)、O(oligosaccharides:オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フルクタン)豆類、小麦、玉ねぎなど、D(disaccharides:二糖類(乳糖))牛乳、ヨーグルトなど、M(monosaccharides:単糖類(果糖))果物、蜂蜜など、A(and)、P(polyols:ポリオール(ソルビトール、キシリトール))マッシュルーム、人工甘味料など
の略で、この頭文字を取ってFODMAPです。糖質制限との違いは低FODMAP食は米、10割のそば、オート麦、グルテンフリーの食品、ビーフン、などを低FODMAPとしているところです。しかし、これらの糖質はあえてとる必要はありませんので、糖質制限をしていれば自ずと低FODMAP食に近くなります。
今回の研究では、低FODMAP食を行っていた機能性腸疾患の4〜17歳を分析しています。その結果、胃腸症状の改善は、膨満感のある子供の92%、下痢のある子供の87%、腹痛のある子供の77%で認められたのです。全体として79%で症状の改善を認めました。(表は原文より改変)
症状 | 症状の合計(%) | 変化なしまたは悪化 | わずかに改善 | やや改善 | 大幅に改善 | 改善の合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
腹痛 | 78 | 23 | 9 | 9 | 59 | 77 |
膨満感 | 41 | 8 | 8 | 17 | 67 | 92 |
下痢 | 52 | 13 | 13 | 7 | 67 | 87 |
便秘 | 45 | 15 | 23 | 7 | 54 | 85 |
吐き気/逆流 | 17 | 20 | 40 | 20 | 20 | 80 |
エネルギーレベル | 34 | 29 | 30 | 10 | 40 | 80 |
複合スコア | 100 | 45 | 48 | 31 | 160 | 79 |
炭水化物を再導入すると複数の人で複数の炭水化物に対する症状の再燃が起こりました。最も一般的な症状を引き起こす炭水化物はフルクタンでした。
フルクタンはフルクトース(果糖)が重合した多糖類です。キクイモや玉ねぎ、小麦などに含まれいます。
フルクタンが67%、続いて乳糖(ラクトース)が56%、ポリオール7%、果糖(フルクトース)7%、ガラクトオリゴ糖7%でした。24%の子供たちは、リンゴ(フルクトースとソルビトール)が症状を引き起こしたことを明確に特定しました。私もリンゴを多く食べると腹部の異常な膨満感が出ることがあります。
子供でも大人でも、腸内細菌などの違いにより、様々な糖質、炭水化物に対する不耐症が起こることがあるでしょう。以前の記事「マラソンなどで胃腸障害を起こすランナーに適した食事」で書いたように、マラソンで胃腸の調子が悪くなる人にも糖質などが関連している可能性が十分にあります。
いずれにしても、糖質過剰摂取が胃腸症状を起こしているのでしょう。糖質制限をすればかなり様々な症状が改善すると考えられます。
「Low FODMAP diet in children and adolescents with functional bowel disorder: A clinical case note review」
「機能性腸疾患の小児および青年における低FODMAP食:臨床症例ノートレビュー」(原文はここ)