冠動脈疾患のリスクはインスリン抵抗性が最も重要

中性脂肪が高かったり、HDLコレステロールが低かったりすることは、心血管疾患のリスクを増加させると考えられています。中性脂肪/HDLコレステロール比の上昇はLDLを小さな危険なsdLDLに変化させる可能性を高くします。(「糖質制限とLDLコレステロール上昇」「糖質制限とLDLコレステロール上昇3 脂質をもっと食べるべき?」など参照)

今回の研究では、糖尿病がない人を対象として、高中性脂肪と低HDLコレステロールとインスリン抵抗性について分析しています。(図は原文より)

上の図は左のグラフがHDLコレステロール値とインスリン抵抗性の割合との関連、右の図が中性脂肪値とインスリン抵抗性の割合との関連を示しています。縦軸がインスリン抵抗性のパーセンテージ、横軸がHDLまたは中性脂肪の値で4つのグループに分けたものです。グレーが男性、白が女性です。

そうすると、HDLコレステロールが低くなるほど、また中性脂肪が高くなるほどインスリン抵抗性は増加します。女性よりも男性の方がインスリン抵抗性の割合が高くなっています。男性でHDLコレステロール値が37未満、中性脂肪値が182以上では約50%がインスリン抵抗性を持っていると考えられます。

上の2つの図は冠動脈疾患の累積発症率です。上の2Aの図はHDLコレステロールとインスリン抵抗性の有無との関連、下の2Bの図は中性脂肪とインスリン抵抗性の有無との関連です。それぞれのグラフのオレンジ色の線は低HDLコレステロールまたは高中性脂肪でインスリン抵抗性がある人、黒の線は高HDLコレステロールまたは低中性脂肪でインスリン抵抗性がある人、赤い線は低HDLコレステロールまたは高中性脂肪でインスリン抵抗性がない人、青い線は高HDLコレステロールまたは低中性脂肪でインスリン抵抗性がない人です。縦軸は発症率で、横軸は年数です。

そうすると、圧倒的に低HDLコレステロールまたは高中性脂肪でインスリン抵抗性がある人の発症率が高いことがわかります。そしてその次に発症率が高いのは高HDLコレステロールまたは低中性脂肪でインスリン抵抗性がある人なのです。つまり、HDLコレステロールや中性脂肪の値よりも、インスリン抵抗性があるか無いかの方が重要な因子であることがわかります。

HDLコレステロールが中央値以上でインスリン抵抗性がない人と比較して、HDLコレステロールが中央値以下でインスリン抵抗性がある人の冠動脈疾患のリスクは2.83倍にもなり、中性脂肪値が中央値以下でインスリン抵抗性がない人と比較して中性脂肪値が中央値以上でインスリン抵抗性がある人の冠動脈疾患のリスクは2.5倍にもなりました。インスリン抵抗性がない場合のHDLコレステロール値の低下、中性脂肪値の増加はリスクと関連していませんでした。

つまり、最も重要視しなければならない因子はインスリン抵抗性であり、インスリン抵抗性が高い状態は最も冠動脈疾患の危険性が高いと考えられます。そして、それとHDLコレステロールおよび中性脂肪を合わせて考えるもあるでしょう。

LDLコレステロール値にばかり注目して、インスリン抵抗性に注意していないことも多いかもしれません。それとも、そもそもインスリン値を測定していない場合も多いかもしれませんね。

インスリン値の測定は糖尿病だけに必要ではありません。ただ、糖質制限をしていれば、インスリン抵抗性は低下し、HDLコレステロール値は上昇し、中性脂肪値は低下するので、最もリスクが低くなると考えられます。

心血管疾患は糖質過剰症候群ですから。

「Insulin resistance and the relationship of a dyslipidemia to coronary heart disease: the Framingham Heart Study」

「インスリン抵抗性と脂質異常症と冠状動脈性心臓病の関係。フレーミングハム心臓研究」(原文はここ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です