ケトン体は多発性嚢胞腎を救うかもしれない

多発性嚢胞腎は両側の腎臓に嚢胞が無数に生じる、遺伝性疾患です。嚢胞が徐々に大きくなり、進行性に腎機能が低下します。難病指定されていて、根本的治療法は無いとされています。多くの人は30~40代まで無症状です。

多発性嚢胞腎はツーヒット説(がんなどの発症では、父親と母親から受け継いた染色体がそれぞれ2本ずつ存在し、がん抑制遺伝子の対立遺伝子の両方が変異あるいは欠失などにより機能を失う必要があるという説)があると考えられています。多発性嚢胞腎は両親から受け継ぐ2本の遺伝子のうち、通常は2本とも異常ではなく1本は正常なため、優性遺伝した変異のみでは発症しません。正常な遺伝子に変異が起こり、遺伝子の機能が喪失して嚢胞ができてくると考えられています。なので、遺伝性の疾患にもかかわらず、発症が遅く、個人差も大きいと考えられています。(ここここなど参照)

しかし、今回の研究のようなものを読むと、さらにそこにはもう一つの大きな原因が絡んでいる可能性が高いと思われます。もちろんそれは糖質過剰摂取です。

今回の研究は、まだ動物実験段階です。しかし、人間で試してみる価値はあると思います。(図は原文より)

以前の研究では、マウスで食物摂取を減らすと、多発性嚢胞腎の進行が遅くなることを発見されています。しかし、これがエネルギー摂取量の減少による変化なのか、何らかの栄養素や成分の影響なのかははっきりしていませんでした。

そこで、ケトン体を増加させてケトーシスをもたらすケトン食やインターミッテントファスティング(断続的な断食)を試してみました。そうすると、多発性嚢胞腎が失速または逆転したのです。そして、血流中のケトン体の存在が腎臓の嚢胞の成長を阻害することを発見したのです。

さらに特別な食事制限なしにケトン体を与えても有益な効果が認められました。飲料水中にケトン体を含有する5週間の治療後、マウスの多発性嚢胞腎は正常な腎臓とほとんど区別がつかなかない状態まで逆転したのです。

多発性嚢胞腎ではがんと同様にブドウ糖の代謝においてワールブルグ効果という好気的解糖によりエネルギーであるATPを得ています。だから糖質摂取は多発性嚢胞腎を発症させたり進行させたりすると考えられます。

もちろん、人間とマウスは食べるものが違いすぎます。そのままマウスの実験を人間に当てはめるわけにはいかないでしょう。しかし、試してみる価値は十分にあります。食事だけで遺伝的な病気が逆転するかもしれないのですから。

ケトン体のサプリは現在のところ日本では手に入らないと思いますし、そこに含まれている成分が腎臓にどのような影響があるかわかりません。だから、糖質制限やケトン食、インターミッテントファスティングによりケトーシスをもたらす方が安全でしょう。

「Ketosis Ameliorates Renal Cyst Growth in Polycystic Kidney Disease」

「ケトーシスは、多発性嚢胞腎の腎嚢胞の成長を改善する」(原文はここ

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コメント

  1. よっしー より:

    この病気をお持ちの方が「糖質制限は腎臓に悪そうだからやらない」とおっしゃっていたことがあります。糖尿病もある方です。

    やるかどうかはご本人の判断とは言え、なんだか心配です。この記事をお読みになって考えてくださると良いのですが。

    • Dr.Shimizu より:

      よっしーさん、コメントありがとうございます。

      どうしても、糖質制限は高タンパク食であり、高タンパク食=腎臓に悪い、という考えが定着しています。
      高度に腎機能低下しているのであればともかく、早い段階で糖質制限を取り入れれば非常に有益だと思います。
      しかし、やはり本人がやろうとしなければダメですからね。

  2. 情報提供 より:

    検診では良く肝嚢胞が見つかりますが、これも糖質過剰摂取と関連があると考えてよいのでしょうか?

    • Dr.Shimizu より:

      情報提供さん、コメントありがとうございます。

      単発で見つかる嚢胞は糖質過剰摂取とは恐らく関係がないと思います。
      一方、今回の多発性嚢胞腎のように増殖するものは、がんと同じでブドウ糖をエサにしてエネルギーを得ている可能性が高く、
      糖質過剰摂取によるものと考えています。