糖質制限を始めたときの糖質摂取量と様々な症状

多くの人が糖質を過剰摂取し糖質依存症になっているので、糖質制限を始めると様々な症状を示すことがあります。そのことを指摘し、「糖質制限は危ない」という人もいるでしょう。

今回の研究では、糖質制限を始めたときの摂取する糖質量の違いにより、どのような違いがあるかを分析しています。対象は77人の健康な25歳から49歳の男性25人と女性52人で平均BMIは27(20~39)でした。

総エネルギー摂取量はベースラインを維持したまま、タンパク質摂取量を1日あたり1.4g/kg、炭水化物は総エネルギー摂取量の5%(超低炭水化物ケトン食:VLCKD)、15%(低炭水化物食:LCD)、25%(中程度低炭水化物食:MCD)と3つのグループに分けられました。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図はβ-ヒドロキシ酪酸(BOHB)、つまりケトン体です。0.5mmol/L(日本の単位では500μmol/L)以上をケトーシスと考えると、最も糖質量の少ないVLCKDでは4日目にケトーシスになっています。LCDとMCDでは5日目にケトーシスとなっていますが、最も糖質量の多いMCDはその後も0.5以上になったり0.5以下になったりしています。研究中の期間の平均のBOHBが0.5以上であったのは、MCDグループのわずか9%でしたが、LCDでは23%、VLCKDグループでは46%でした。逆に言うと、わずか5%しか糖質を摂っていないにも関わらず、ケトン体が0.5以上にならない人も結構な割合でいるのです。私もあまりケトン体は高くならない方です。個人差ですね。

全体的な変化ベースラインからの平均変化ベースラインからの平均変化
MCDLCDVLCKD
BOHB(mmol / L)0.440.270.410.62
症状スコアの合計0.810.180.651.49
頭痛0.110.120.080.14
便秘0.170.120.090.28
下痢0.080.020.090.11
胃または腸の痛み0.040.090.000.04
腸の膨満感-0.19-0.30-0.14-0.16
口臭の変化/「マニキュアの息」0.290.030.360.43
筋肉のけいれん0.090.100.010.14
筋力低下0.330.300.140.54
皮膚発疹-0.02-0.020.00-0.04
集中するのが難しい-0.02-0.040.03-0.04
軽いふらつき0.210.160.160.31
糖質またはでんぷん質の食品への渇望-0.28-0.41-0.18-0.26
全体的な気分印象
(今日はどうですか?)
-0.18-0.30-0.02-0.22

上の表は糖質制限(ケトン食)による症状のベースラインからの変化です。スコアは、症状がまったくないを0点 、軽度1点、中程度2点、重度3点、耐えられない4点とし、合計で最高が48点です。平均するとどれも大きな変化はないようです。頭痛の重症度、便秘、下痢、口臭(「口臭の変化」/「マニキュアの息」)、筋肉のけいれんおよび筋力の低下が、わずかに増加しました(統計的に有意)。

余談ですが、ケトン臭(口臭)は「マニキュアの息」と言われているのですね?初めて知りました。

上の図は症状スコアの合計の変化率です。MCDでは3日目に50%ほど増加していますが、その後は落ち着き、ほぼベースライン前後です。LCDでは10日目に大きく増加していますが、その後は急速にベースラインに近づいています。18日目にはLCDもVLCKDもベースラインに戻っています。

上の図は気分障害のスコアのベースラインからの変化率です。気分障害は1~5点で本人の気分を表してもらっています。そうすると、LCDでは一時的に気分障害が悪化していますが、6日ごろよりほぼベースライン前後です。LCDでは21日中10日で平均気分スコアが若干悪化しました。MCDとVLCKDは右肩下がりで、どんどん気分が改善しているようです。ただしグループ間の有意差はありませんでした。

以前の記事「糖質制限で倦怠感やエネルギー切れを感じる場合」で書いたように、多くの症状は、ナトリウム不足や水分不足によるものだと考えています。もちろん、いわゆるカロリー制限になっている場合も多くの症状をもたらすでしょう。

糖質制限を始めて2~3週間もあれば、ほとんどの初期症状はなくなることが多いと考えられます。さらに気分もどんどん良くなる可能性も高くなります。糖質制限を始めたばかりの様々な症状は糖質依存から脱却する際の禁断症状とも考えられます。体が適応するまでの間のしばらくの我慢でしょう。

 

「The effect of differing levels of carbohydrate restriction on the achievement of nutritional ketosis, mood, and symptoms of carbohydrate withdrawal in healthy adults: A randomised clinical trial」

「健康な成人における栄養ケトーシス、気分、および炭水化物離脱症状の達成に対する異なるレベルの炭水化物制限の影響:無作為化臨床試験」(原文はここ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    保険会社AFLACのCMでは「糖尿病に優しい」と焼鯖トーストサンドが、持病持ちの落語家に出され、
    野菜が少しでも混ざってれば、たこ焼きでも
    焼きそばでも「栄養満点!」と、
    (紹介する方は本気で)紹介される。

    糖質まみれ、過剰摂取による病気まみれの
    日本では「変わり者」でないと健康的な生活が不可能なようです。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      ヘルシーという言葉や栄養豊富、栄養満点などの言葉は定義がないので、企業は好き勝手に乱発しています。
      消費者が賢くなれば、騙されません。

  2. みみ より:

    いつも大変勉強になる記事を楽しみにしております。糖質制限と頭痛について質問させていただきます。
    長年の頭痛持ちで、頭痛外来に通院しております。そこで頭痛ダイアリーをつけていますが、頭痛が起きるタイミングがだいたい月経前後ということがわかりましたが。しかし分かったからと言ってどうすることもできずに、痛みが出れば偏頭痛の頓服薬を飲む…を長年繰り返しています。
    その頻度も多くて、1ヶ月に10回は薬を飲んでいる始末です。

    糖質制限を始めて1年余り、今回初めていつものタイミングで頭痛が起きませんでした。
    1ヶ月の頭痛の頻度もいつもの半分以下でした。
    たまたまかも知れないし、清水先生のご著書にて糖質制限と頭痛の関係を拝見しましたが
    、糖質制限を開始して1年以上も経過してからこの様な効果?が現れることもあるのでしょうか?
    そしてなぜか月経前の異常なほどの眠気もなくなりました???
    快適ではありますが、なんだか半信半疑です。

    • Dr.Shimizu より:

      みみさん、コメントありがとうございます。

      月経と頭痛の関連はよく言われていますね。エストロゲンの急激な減少時に起きることが多いようです。
      私の知っている限りでは糖質制限を始めて比較的早期に頭痛が改善している人が多いですが、このように1年後のパターンもあるのですね。
      今後の経過を見てみないとわかりませんが、今後も頭痛改善が続くなら良いですね。

  3. 西村 典彦 より:

    ケトン体の濃度はインスリン分泌量に逆相関するようで、糖質だけでなく、タンパク質を多くとると血中濃度は上がらなくなります。
    筋トレで糖質が必要という方がいますが、プロテインの摂取によりケトン体が増えないのではないかと思っています。

    • Dr.Shimizu より:

      西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      ケトン食レベルだと、タンパク質を1.7g/kg程度摂っても非常にケトン体が高くなっているという記事は読んだことがあります。
      もう少し糖質摂取量が多いと、急激にタンパク質によるインスリン分泌が増加するのではないかと思います。

      • 西村 典彦 より:

        「ケトン食レベルだと、タンパク質を1.7g/kg程度摂っても非常にケトン体が高くなっている」
        脂質の摂取量が多いからではないでしょうか。
        そこそこの糖質を摂取していてもMCTオイルの摂取等で有意にケトン値が高値になりますから脂質摂取量に相関、インスリン分泌量に逆相関と言う事かもしれないですね。

  4. みみ より:

    清水先生、コメントありがとうございました。頭痛外来の先生が、この時期落ち着いてくる患者さんが多いといっていましたが、それだったらガッカリです…
    糖質制限の効果と思いたいですね。
    また経過を見ていきたいと思います。