ウイルスと予防

新型コロナウイルスによる肺炎が広がり、連日感染の予防についてテレビでは連呼されています。大方の予防法は「手洗い、うがい、マスク、バランスの良い栄養」などでしょうか?

予防はインフルエンザと同じと専門家は言っていますので、インフルエンザの予防法で考えてみたいと思います。

厚労省のインフルエンザQ&Aを見て見ましょう。

【インフルエンザの予防・治療について】
Q.9: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?
インフルエンザを予防する有効な方法としては、以下が挙げられます。

1) 流行前のワクチン接種
 インフルエンザワクチンは、感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止に有効と報告されており、日本でもワクチン接種をする方が増加する傾向にあります。

2) 外出後の手洗い等
 流水・石鹸による手洗いは手指など体についたインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、インフルエンザに限らず接触や飛沫感染などを感染経路とする感染症の対策の基本です。インフルエンザウイルスにはアルコール製剤による手指衛生も効果があります。

3) 適度な湿度の保持
 空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。

4) 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
 体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけましょう。

5) 人混みや繁華街への外出を控える
 インフルエンザが流行してきたら、特に御高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、体調の悪い方、睡眠不足の方は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず外出して人混みに入る可能性がある場合には、ある程度、飛沫感染等を防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することは一つの防御策と考えられます

1のワクチンについては今回は置いといて、2の手洗いについてです。手についたウイルスや細菌は手をごしごしと洗えば、物理的に除去されるでしょうから有効ではあると思います。しかし、アルコール消毒は本当に有効かどうかはわかりません。最近、インフルエンザウイルスはだ液により保護されてしまうため、アルコール消毒ではほとんど死ななくなってしまうことが報告されています。(その論文はここ

この実験によれば、たった5μlの粘液でさえ、気温25度、湿度40%の室内環境で完全に乾燥するまで約30分もかかっているため、その間アルコール消毒は効果が非常に低下する可能性を指摘しています。ただ、これは実験であり、通常アルコールを使用する場合、その液を擦り込むようにしますが、それを行っていないので本当かどうか疑問ではあります。

だからちゃんとアルコール液をすりすりすれば、まだまだ有効性はあるでしょう。流水でごしごしの方が効果があると思いますので、流水が無い場合にはアルコールも良いのだと思います。しかし、楽観視もできません。細菌の中ではすでにアルコール耐性を身に着けているものもあるようです。多剤耐性菌Enterococcus faeciumはすでにアルコールに対する耐性がますます強くなっているようです。(その論文はここ)ウイルスの変異は早いので、もしかしたらアルコールに耐性を持つようになるかもしれません。やはり流水でしょう。

3の湿度に関しては、湿度があれば大丈夫ではありません。ハワイでさえインフルエンザは流行したこともあるようですから。湿度が低いよりはましなだけでしょう。

4の十分な休養とバランスのとれた栄養摂取というのが非常に曖昧な予防法ですね。「十分な」というのもどれくらい?1週間何もせずにゆっくり過ごせば免疫力は上がるのでしょうか?働いているうえで十分な休養が取れることもあればとれないこともあります。いい加減な推奨ですね。もっといい加減なのは「バランスのとれた栄養摂取」ですね。いつも言っているように良いバランスってどんなバランスでしょうか?医師も栄養士も恐らく誰も的確に答えられないでしょう。良いバランスなんて科学的に証明されていませんから。

それよりも高血糖の方が問題です。糖尿病患者は、血糖コントロールが不良であればあるほど、糖尿病罹患期間が長く合併症が進行している例では感染症を併発しやすくなります。血糖値レベルの一過性の変化であっても好中球機能に影響がみられます。高血糖は好中球の遊走や貪食、殺菌作用を減弱させることを示している研究がいろいろと報告されています。つまり、訳のわからないバランスと言って、糖質をしっかりと摂る食事はやめて、糖質制限をして高血糖にならないようにした方がよっぽど免疫力を高く保てると思います。

いわゆる新型インフルエンザの流行のとき、カナダからの報告ではH1N1ウイルス感染後の糖尿病により入院リスクが3倍になり、集中治療室への入院リスクが4倍になりました。(その論文はここ

5の外出を控えるということですが、なかなか難しいものです。買い物さえできなくなります。その文章の最後の部分「やむを得ず外出して人混みに入る可能性がある場合には、ある程度、飛沫感染等を防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することは一つの防御策と考えられます。」とありますが、これもある程度でしょう。マスク、マスクと言って騒いでいますが、マスクの有効性は非常に限定的だと思われます。なんせウイルスというのは非常に小さいですからね。そして、多くの人はサージカルマスクというのを付けていますが、マスクの端はそこら中隙間だらけです。マスクをつけたまましゃべっていると段々とずれてきて、鼻が出てしまったり。マスクの有効性が考えられるとしたら、マスクにより鼻や口の周りを触らなくなることでしょうか。しかし、マスクを外してカバンやポケットにしまってまたそれを付けていたらあまり意味がないでしょう。

WHOもマスクは無効だと言っています。(関連記事はここ)CDCも推奨していません。(ここ参照)マスクは感染している人が付けるものです。

では、N95マスクという0.3μm以上の微粒子を95%以上遮断できるマスクであれば予防できるのでしょうか?

446人の看護師による研究で、225人がサージカルマスクを使用し、221人がN95マスクを使用しました。インフルエンザ感染は、サージカルマスクグループの50人の看護師(23.6%)とN95マスクのグループの48人(22.9%)で発生しました。つまり、サージカルマスクもN95マスクも差がなかったのです。この研究ではコロナウイルスについても調べていますが、サージカルマスクグループの9人の看護師(4.3%)とN95マスクのグループの12人(5.7%)で発生しました。これも差がありませんでした。コロナウイルス感染率が低いですが、これはコロナウイルスに有効だということではなく、インフルエンザが流行している時期に研究を行っているので、たまたまインフルエンザの方が多かっただけです。

それにしても、どちらのマスクも23%前後の感染率です。つけていない場合の感染率が示されていないので何とも言えませんが、恐らく大きくは差はないと思います。(ただ、2019年の論文ではどちらも差はありませんが感染率は10%以下でした。何の違いかはよく分かりません。流行の程度の差もあるのでしょう。その論文はここ)病院内でマスクをつけていても家族などから感染があるでしょう。1日中付ければもっと感染率は低くなるかもしれませんが、どんなマスクでも普通の使用では感染を予防するのは難しいと思われます。使い捨てマスクを何度も交換して、非常に慎重に交換を行い、1日中ずっとつけていれば良いとは思いますが、マスクが手に入らない状況では難しいですね。

布のマスクなんて全く効果はないでしょう。気休めです。ただ、気休めでもマスクをしたい気持ちは理解できます。私は今までもインフルエンザの流行の時期に人混みに出かけてもマスクをしていませんでした。受験を控える子供がいればマスクをさせるでしょう。100回に1回でも感染が防げれば良いという程度の思いです。

あれ?ところで「うがい」は?うがいの「う」の字も出てきません。インフルエンザウイルスは数分で体に侵入すると言われているので、うがいするのであれば数分毎にしないと意味がないことになりますが、現実的には無理です。私は余程埃っぽいところに行かない限り、外出後もうがいをしません。うがいの根拠がないので、予防法にも出てきません。テレビに出てくる専門家の話も良く聞いていると、予防法に「うがい」を言うことはほとんどありません。アナウンサーが必死に何度も「うがい」ということはよく聞きます。

ただ、水のうがいが効果があるという研究も存在します。(その論文はここ)ただ、これは風邪の症状の有無を見ているので、インフルエンザ感染予防に有効かどうかは全くわかりません。私の考えは、うがいもしたければすればいいし、マスクもしたければすればいいという程度です。

とりあえずこのような異常な状況が一日も早く良くなってほしいですね。

「Surgical mask vs N95 respirator for preventing influenza among health care workers: a randomized trial」

「医療従事者のインフルエンザを予防するためのサージカルマスクとN95レスピレーター:無作為化試験」(原文はここ

コメント

  1. ジェームズ中野 より:

    私が尊敬する先生の1人に東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生がいらっしゃいます。
    この先生のご著書で、「手を洗いすぎてはいけない」ー超清潔志向が人類を滅ぼすー

    をぜひお読み頂ければと思います。

    アルコール消毒過多で肌表面の善玉菌を激しく除去してしまう。この子たちがいてるから外敵が体の中へ入ってこないようにガードしてくれている。などなど…。

    ためになりわかりやすくい御著書でした。
    ちなみに藤田紘一郎先生、糖質制限されてます。

    • Dr.Shimizu より:

      ジェームズ中野さん、コメントありがとうございます。

      藤田先生のこの本は読んでいませんが、私もアルコール消毒は必要ないと思っています。
      今回の記事では、インフルエンザウイルスがアルコール消毒が無効になるかもしれないという論文の中身に疑問があったので、
      ちょっと書いてみました。
      アルコールの効果はあるけれど別に必要ないと思っています。

  2. ミホ より:

    シミズ先生、こんにちは。

    夏井先生の本を読んでから石鹸での手洗いとアルコール消毒はやめました。流水のみです。

    が、インフルエンザにもならないし、風邪もほぼひいていません。

    マスクもしていませんね。だって隙間だらけですもの。

    世間一般的な感染対策一切してません…

    • Dr.Shimizu より:

      ミホさん、コメントありがとうございます。

      流水で十分だと思います。
      子供たちもアルコール消毒なんて頻繁に使っていたら大変なことになるのではないかと思っています。