新型コロナウイルス感染では高血糖があると数倍死亡率が高い その3 トシリズマブの効果

新型コロナウイルス感染においては、「新型コロナウイルスでは高血糖があると数倍死亡率が高い その1」「その2」で書いたように、高血糖は非常に危険な状態をもたらすかもしれません。

今回の研究(プレプリント)は、新型コロナウイルスの治療薬候補の薬の効果にも高血糖が関係していることを示しています。

トシリズマブは関節リウマチの治療に承認されていて、IL-6受容体(IL-6R)を標的としてサイトカイン放出を低下させることにより、中等度から重度の新型コロナの肺炎を治療しようとする薬です。中国の研究では、重篤な新型コロナウイルスの患者21人にこのトシリズマブを使用して、20人が投与から2週間以内に退院したそうです。トシリズマブはサイトカインストームを抑制し、死亡率を減らす有効な治療薬であることが示唆されたと結論しています。(ここ参照)

今回の研究では2020年3月1日以降、475人の新型コロナ陽性患者を調査し、そのうち、肺炎の78人の患者のトシリズマブによる治療によって重篤化(人工呼吸器の使用および/または死亡の両方)がどうかを評価しました。入院時および/または入院中の血糖値140mg/dl以上が高血糖群です。高血糖群が31人(39.7%)、正常血糖群が47人(60.3%)で、高血糖群の20人(64%)と正常血糖群の11人(23.4%)が糖尿病患者でした。高血糖群の21人(61.8%)、正常血糖群の34人(72.3%)が男性でした。

高血糖群の19人(61.3%)、正常血糖群の26人(55.3%)は高血圧であり、高血糖群の6人(19.4%)、正常血糖群の15人(31.9%)が喫煙者でした。

入院時の血糖値は、高血糖群187mg/dl、正常血糖群で103mg/dlでした。入院中の平均血糖値は、高血糖群157mg/dl、正常血糖群122mg/dlでした。(図は原文より)

上の図のAはトシリズマブ投与前(入院時)と投与後1週間後、2週間後のインターロイキンIL-6のレベルです。図の左側が正常血糖群、右が高血糖群です。高血糖群で投与前(入院時)より高いIL-6レベル(約5倍)が確認され、トシリズマブ投与後も持続しています。

右のBの図は生存率です。青い線が正常血糖群、緑が高血糖群です。高血糖群のトシリズマブ投与は正常血糖群のように重篤な転帰のリスクを軽減しませんでした。正確な数値は論文にありませんが、図を見ると18日間で正常血糖群の生存率は約70%、高血糖群では約10%でした。リスク比(HR)は0.168でした。つまり、高血糖群の方が正常血糖群よりも約6倍死亡リスクが高いことになります。

したがって、高血糖群におけるトシリズマブの効果の低下は、血漿IL-6レベルの上昇が原因であると結論付けることができます。糖尿病患者と非糖尿病患者の両方において、高血糖があるとトシリズマブの効果が得られないことになります。

つまり、治療効果を得るためにも高血糖は避けるべきだということになります。もちろん、他の薬を用いた場合の研究はまだありませんから、わかりませんが、「その1」「その2」の結果を合わせて考えると、いずれの場合にも新型コロナウイルスの感染では高血糖は非常にリスクが高いと考えられます。

高血糖ではIL-6およびTNF-αなどの炎症性サイトカインが増加しています。糖質制限だけでもサイトカインストームのリスクを下げられるかもしれませんね。少なくとも新型コロナでの入院中の糖質過剰摂取食、糖質過剰点滴は禁忌と言うべきでしょう。

糖質過剰症候群

「Negative impact of hyperglycemia on Tocilizumab therapy in COVID-19 patients」

「新型コロナウイルス患者のトシリズマブ療法に対する高血糖の悪影響」(原文はここ