汚染した傷は閉じるな!人間の治癒力はすごい!(閲覧注意!)

学会に参加して、期せずして示唆に富んだ内容を聴き、そして見ることができました。

内容は戦場の内容です。戦場で傷ついた人たち、それも地雷や砲弾などでケガをした人たちの麻酔や手術の話でした。そこで見たり聴いたりした話は本当に悲惨なもので、のほほんと毎日過ごしている日本人の日常とは全く別の世界でした。あまり詳しい話は書けませんが、戦場では様々な兵器によりケガをする人が何人もいて、しかも医療設備は日本のように整ってはいません。そんな中、非常に汚染した傷をどうするか?という内容でした。汚染したというのは、完全に足がもげてしまったり、大きく傷が開いて、筋肉や骨が見えている状態で、しかもきれいな環境で過ごしているわけではないので、非常にいわゆる「バイ菌」だらけなんです。それをきれいに洗っても、限界があり、当然目に見えない「バイ菌」がいっぱいいる状態です。

もう使えない筋肉や骨などは切り落として(専門的にはデブリードマンと言いますが)、あとはそのまま包帯をします。皮膚は閉じない、筋肉も骨も見えたままです。しかも、包帯もガーゼもそのまま5日ぐらい交換はしないそうです。もちろんその間消毒もなし。皮膚を閉じたほうが感染を起こす可能性がかなり高くなるようです。そして、5日ぐらいすると落ち着き、その後閉じるようです。しかし、医師はどうしても最初から閉じたがる人が多いと言います。そして、閉じたために再手術したり、死亡したりすると。汚染した傷を閉じるなということは、過去の戦争の度に、言われてきたそうで、一般の手術にも十分適応されるべきだとも言われてきたそうですが、やっぱり、閉じようとしてしまうようです。

お腹も開いたまま、つまり腸が見えたままにするそうです。麻酔科医として、お腹が開いた状態で痛くないのか?と考えてしまいますが、実はお腹が開いた状態は痛がらないそうです。その先生は「閉じるから痛いんだ!」と言っていました。腸に穴が開いて、腹膜炎になったりした場合はお腹を閉じない方が良いのかもしれません。しかし、本人も家族もびっくりしますよね。それがスタンダードになる日は来ないかもしれません。

夏井先生が、傷は消毒するな!というのに非常に通じる話でした。医療が人間の治癒力の邪魔をしてしまってはダメだということです。

人間の進化を考えたら、昔なんて消毒はもちろん、無菌の水なんてものは存在しませんでした。その中で、敵に襲われたりして深い傷を負うこともあったでしょう。その時には、野草などを薬にしたかもしれませんし、川の水で洗ったかもしれません。しかし、それでも治っていったのでしょう。もちろん死んでいく場合もあると思います。でも、自然に治癒する力を備えていくように進化したのだと思います。

何か手を施すことが医療の基本になってしまい、何もしないことは無能のように思われるのかもしれませんし、患者さんも満足しません。しかし、逆に医療の介入が問題を増やすこともあるのだと思います。

実は今回の学会のこの講演は、まったく期待せずに聴いたものでした。しかし、会場の誰もが釘付けのような雰囲気でした。

医学の学会は科にもよるのかもしれませんが、研究のための研究が発表されたり、学会のガイドラインなどに準拠する内容のものも多く、面白くなかったり、たいして役に立たないものも多いのは事実です。昨年の学会での記事で製薬会社の圧力のことも書きましたが、様々な問題もあるのは事実です。以前は全く学会になんて参加しても仕方ないと思っていました。しかし、現在の病院では同じ科の人はおらず、私一人です。そうすると「井の中の蛙」のように自分のやっていることは正しいとしか思わなくなる可能性があります。この年になると誰も自分のことを批判したり、たしなめてはくれません。そんな時、外に出ると違った空気が味わえる場合があります。今の医療の方向性と自分の考えている医療が違ったとしても、どこがどう違って、どうして相違点があるのか、「敵を知る」というのは言い過ぎかもしれませんが、どこに問題があるのかはわかることもあります。学会という場ですが、学会のガイドラインを逸脱して自分はこのようにやっているという、本当の臨床の言葉を聴けることもあります。また、今回のように期せずして非常に興味深い内容であったり、その場にいなければ、お金を払っても聴けないような話を聴けることもあります。そして、更なるインスピレーションが湧くこともあります。要は自分がどう受け止めるかです。非常にいい時間を過ごせましたし、勉強になりました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする